下谷神社は、かつて下谷稲荷社、下谷稲荷明神社と呼ばれた都内最古の稲荷神社だ。東京メトロ「稲荷町駅」に名前を残す旧町名の稲荷町にある。例大祭で近隣町内を渡御する本社神輿は、台輪が幅4尺1寸の千貫神輿、威厳のある大きさである。
その歴史は古く、730年、伏見稲荷大社を勧請したとも伝えられる。また、939年の天慶の乱、平将門の追討祈願のため、藤原秀郷が社殿を新造したとも言われる。
明治期になり、1872年に下谷神社と改称し、地域の郷社と定められた。しかし、関東大震災で社殿は焼失。1928年に今の場所に移転し、1934年に現在の社殿が完成した。また、1798年に初代山生亭花楽が、境内で寄席興行を行なった。江戸における最初の寄席興行である。
さて、夏詣での初夏、東京も猛暑に襲われることが多くなった。そのため、神社では、参拝者の方々に少しでも涼を感じてもらうために、ドライミストを稼働させている。手水同様に、水は清めの効果もある。今様の在り方ではあるが、身体を清め、なおかつ、暑気払いする素敵な設えだ。
コロナ禍のさなかは、中止していた例大祭も2024年に復活した。千貫神輿が町内を練り歩き、氏子たちで華やいでいたとニュースは伝えていた。地域密着の古社、これからも発展を続けて欲しい。
(2023.07.05.撮影)
(これまでの特集記事は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=8
取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長