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令和トラベル、国内ホテル事業に参入 訪日需要を視野にグローバルOTAへ|令和トラベル 受田宏基 執行役員CBO

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かしこい、おトク、旅行アプリ『NEWT(ニュート)』を運営する令和トラベルは、国内ホテル事業への参入を発表した。サービス開始から3周年を迎え、約80エリアに展開する海外事業で成長を遂げてきた同社だが、新たに国内市場に本格的に乗り出す。狙いは利用者との接点拡大と、将来的なインバウンド集客の基盤づくりに加え、“グローバルOTA”への進化だ。多様な宿泊施設の取り扱いや、地域と連携した体験型コンテンツを通じた差別化で、国内外をシームレスにつなぐOTAを目指している同社だが、今回は国内ホテル事業の狙いや今後の展望などを、令和トラベル執行役員CBO(Chief Business Officer)の受田宏基氏に聞いた。(取材日:2025年9月30日)

 国内参入のきっかけと狙い

――国内ホテル事業を始めるきっかけや狙いについてお聞かせください。

令和トラベルは今年で4年目を迎え、サービス開始から3周年となりました。祖業は海外へのツアーパッケージ販売で、日本人のお客様による海外旅行を支援してきました。現在では、全世界約80エリアをカバーし、ツアーの本数も15万本を越え、主要な観光先はほとんどそろっています。

一般的に海外旅行の頻度は1、2年に1回と限られています。より多くのタッチポイントを持ちたいと考え、国内ホテル事業の立ち上げに踏み切りました。

現在は、会員の ほとんどが国内在住者であり、国内旅行のニーズが強いことも背景にあります。「海外だけでなく国内の宿泊も利用したい」という声は多く、ニーズに応えたいという強い思いもありました。

もう一つ、大きな狙いは“グローバルOTA”を目指すことです。日本のインバウンド市場は非常に活況で、そこへの挑戦のためにも国内のホテルや旅館との連携を深め、まずは国内での基盤を整えていきたいと考えています。

 コロナ後の国内需要変化

――コロナ禍後の国内ホテル需要をどう捉えていますか。

マクロデータからも2019年の水準を2024年度は越えてきています。ただし、都内の価格高騰もあり、国内旅行市場を支えているのは地方や温泉地などへの旅行需要が伸びている状況です。国内旅行費用が高騰したことで、むしろ「海外の方がコストパフォーマンスが良い」と考える層も出てきており、海外事業を伸ばす要因にもなっています。

 幅広い宿泊施設の取り扱い

――取り扱うホテルの規模や特徴について教えてください。

他のOTAのように、高級からカジュアルまで幅広い層に対応できる形を目指しています。私が以前在籍していたOTAでは高級宿に特化していましたが、そのような形ではなく総合的なラインナップを整えていく方針です。

高級旅館やリゾートホテルも扱いますが、ビジネスホテルや都市型ホテルも同様に重要です。多様な宿泊ニーズをカバーする総合型OTAへと進化させていきます。

 他社OTAとの差別化

――他のOTAと比べた際の違いについてはいかがでしょうか。

宿泊料金を同一にそろえる取り決め(Rate Parity)がある以上、価格面での差はほとんどありません。そのため、差別化のポイントは“ポイントの循環性”にあります。NEWTカスタマーにおける海外旅行の平均単価が約20万円と高額で、現在、旅行金額の5%のポイント還元を行っています。そのポイントを国内ホテルで利用でき、逆に国内で貯めたポイントを海外旅行に充てることも可能です。

例えば、夏に家族で海外旅行に行き、秋に国内温泉旅行を予約する際にポイントを使う。逆に出張や週末旅行で貯めたポイントを次の海外旅行に活用する。こうした循環ができるのは、海外旅行を基盤にしてきた当社ならではの強みとなります。

令和トラベルの受田宏基 執行役員CBO

 インバウンド戦略とターゲット層

――国内では20代以下の若年層が主要顧客かと思いますが、インバウンドはどの層を狙っていますか。

2025年6月に韓国で拠点を立ち上げました。まずはソウルでホテルとの契約を進め、日本からのアウトバウンド強化を図っています。エリアとしては日本からのアウトバウンドとインバウンドのバランスを見ながらインバウンドを拡大していくエリアを定めていきたいと考えています。そのためまだ未定ではありますが、韓国に加え、台湾、香港、シンガポールといった東・東南アジアの市場を重点的に狙っています。

 ホテル選定の基準

――ホテル選びの基準についてはどう考えていますか。

お客様のタイプによって異なります。韓国など都市型観光では、ホテルは拠点の役割が中心となり、カジュアルなシティホテルが求められます。一方で、ハワイやセブ、バリ島のようにホテルステイを楽しみたい方などさまざまなタイプがいらっしゃいます。国内もそれに合わせて都市部はカジュアルラインから沖縄、北海道、箱根や湯河原といったリゾート、温泉地などでは、宿泊施設そのものを楽しむリゾート型の需要が強いです。こうした多様なニーズに応える形でラインナップを拡充しています。

 地域連携と着地型体験「NEWT Wonder」

――地域観光との連携や着地型体験についてはいかがですか。

差別化の一つとして「NEWT Wonder』という取り組みを行っています。単なる宿泊予約にとどまらず、地域や施設と連携し、一気通貫で体験型コンテンツをつくる仕組みです。

海外では中国・雲南省でワイン体験を行ったほか、国内では鹿児島・屋久島の自然や富山のグルメをテーマにしたプランなどを展開しています。こうした取り組みで、OTAにおけるただの集客サイトではなく、旅行における“体験価値”を一緒に作っていきたいと考えています。

 課題と今後の工夫

――国内ホテル事業で直面している課題はありますか。

業界全体の課題ですが、都心や繁忙期のホテル料金(ADR)の高騰により、国内のお客様の集客が難しい局面があります。また、われわれ自身が新規参入で実績がまだお見せできないところもあり、施設側からの数字以外での掲載意義をどう感じていただくかが難しいところではあります。

さらに、集客面では価格比較される傾向が強い中で、ベストレート以外の付加価値をどう提供するかが問われています。そこで、NEWT Wonderなど独自の体験コンテンツを組み合わせ、単なる予約サイトではなく特別な旅行体験を提供することを一つの価値としていきます。

 令和トラベルの存在感

――国内ホテル事業を通じて、業界でどのような存在感を示したいですか。

単なる集客解決のためのOTAではなく、宿泊事業者の経営課題全体に寄り添える存在でありたいと思っています。例えば、旅館組合の方々に向けてDX勉強会を開催し、AIやチャットボットを活用した人手不足解消、デジタル化支援にも取り組んでいます。

宿泊施設にとって集客はあくまで一部。経営全体の課題に共に向き合えるパートナーとして、長期的に信頼されるOTAを目指しています。

 今後の展望とメッセージ

――最後に、業界関係者へのメッセージをお願いします。

われわれの規模で国内OTA市場に新規参入する企業は久々なはずです。そのため、挑戦者として新しい風を吹き込みたい。参入するからには、競合他社にしっかりと食い込んでいける存在を目指します。

また、グローバル展開では単に海外OTAへの在庫供給にとどまらず、“NEWT”というブランドを海外市場で浸透させ、自社ブランドを通じたインバウンド集客を実現していきたいです。日本発のOTAとして、グローバルに存在感を示す挑戦を続けていきます。

受田宏基(うけだ・ひろき)=㈱令和トラベル 執行役員CBO。2018年㈱Loco Partnersにジョイン。新規事業として民泊事業の立ち上げの責任者を担い年間600施設の掲載を実施し、会社の年間MVPを受賞。その後、東日本の新規営業チーム7名のリーダーを経験し、首都圏の大手外資系ホテルチェーンの担当などに従事。2020年4月には「TASTE LOCAL」を共同創業、グロースを担当。2021年より令和トラベルに執行役員としてジョイン。

聞き手 ツーリズムメディアサービス代表 長木利通

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