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10月にスタートした「教育訓練休暇給付金」、観光業界との親和性は?

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休暇に関する新たな給付金制度が、2025年10月にスタートしたことをご存知だろうか?

「休暇」と付くと観光業界に関連しそうなイメージだが、実はそこまで観光業界にプラスになるものではない。その名を「教育訓練休暇給付金」といい、会社に勤めている人がスキルアップやリスキリングのために仕事を休む場合、お金がもらえる制度である。

「それでは休暇を取る人がいても、旅行にも観光にも結びつかないじゃないか」と思うかもしれないが、逆に会社で働く従業員がこの制度を使って休暇を取り、教育訓練を受ける可能性があるため、観光業界の企業も無関係ではない。また、単に従業員が休暇を取ってしまうマイナス面だけでなく、意外と観光業界との相性がよいかもしれない。

今回は、スタートしたばかりの「教育訓練休暇給付金」について解説する。

教育訓練休暇給付金とは?

まずは「教育訓練休暇給付金」がどんなものなのかまとめたい。

この制度は、従業員が教育訓練を受けようとする際、教育訓練のために仕事を休んでいる期間中の生活費に困らないよう、国が手当を給付してくれるものだ。これによって、給料が出ないような長期休暇が必要な教育訓練でも、安心して受けられる。

教育訓練休暇期間中にもらえる金額は、失業給付の基本手当に相当する金額なので、細かい計算を省くと、ボーナスなどを含まない給料の45〜80%程度の金額となるだろう。

手当が給付されるのは、一定期間以上、雇用保険に加入していた人が、自分自身の意思で教育訓練を受け、そのために30日以上、仕事を休む場合だ。この期間内は例え副業であっても働いてはいけないし、会社から給料をもらってもいけない。休暇の日数が29日以下となるのもいけないが、休暇開始日から1年間以内であれば複数回に分けて休暇を取れる。

従業員が自分自身で取るものなので、会社が命令することはできない。また、従業員と会社が「合意」して初めて成立する。合意しなければ休暇も給付金もない。「教育訓練休暇給付金」をもらうと、雇用保険の加入期間がリセットされてしまい、そのあと短期間で離職すると失業給付をもらえなくなってしまうことにも注意が必要だ。

対象となる教育訓練も決まっている。学校教育法に基づく大学、大学院、短大、高専などの学校が提供する教育訓練や、職業安定局長が職業に関する教育訓練として定めている司法修習、語学留学、海外大学院での修士号取得など、失業時に受けられる教育訓練給付金の指定講座を開いている会社の教育訓練などだ。おそらく、教育訓練給付金の指定講座を開いている会社の講座が一般的だろう。

便利なようでも意外と今ひとつ?

従業員の立場で考えると、国からお金をもらいながら仕事を休んで教育訓練を受けられるのはありがたい話のように思うかもしれない。しかし、どこまで使い勝手がいいかは微妙だ。

まず、失業給付と一緒だが、給料全額がもらえるわけでなく、普段高い給料をもらっている労働者ほど、給付金でもらえる割合は少なくなる。また、失業時は、失業給付をもらいながら教育訓練給付金ももらえて、つまり、給料の一部が補償されながら、講座受講費用の一部も補助されるが、「教育訓練休暇給付金」では給料の一部が補償されるのみで、講座受講費用は自腹だ。「教育訓練休暇給付金」をもらってしまうと雇用保険の加入期間がリセットされ、一定期間、失業給付がもらえなくなるもの痛い。

さらに、会社が休暇を認めなければいけない育児休暇のような制度ではなく、休暇はあくまでも労働者と会社の「合意」で認められるもので、いわば会社が拒否できるのも従業員としては使い勝手が悪い。会社が繁忙期を避けて閑散期に休暇をくれても、講座のスケジュールと合うかわからない。

もし、教育訓練のための休暇制度を会社が用意していて、給料が出る形で休暇が取れるのであれば「教育訓練休暇給付金」よりもメリットが大きいし、まとまって有給を消化できるのであれば、そのほうがよい。

観光業界の会社が上手に制度を使うには

ここまで「教育訓練休暇給付金」の微妙な点を挙げたが、観光業界では他の業界よりも「教育訓練休暇給付金」の有効活用が比較的しやすいかもしれない。

まず、観光業界は他の業界よりも繁忙期と閑散期がはっきりしている場合が多い。そのため、閑散期であれば従業員に「教育訓練休暇給付金」を使ってもらいやすい。

人件費の負担を軽減する目的で活用するのはNGだと思われるが、それでも従業員が閑散期に「教育訓練休暇給付金」を活用したならば、結果的に会社は負担が減る。会社の業務命令で「教育訓練休暇給付金」を活用することはできないが、会社の案内がきっかけで従業員が「教育訓練休暇給付金」を活用することはOKだ。

観光業界との親和性が高そうな講座も多い。教育訓練給付金の講座運営会社が「教育訓練休暇給付金」の対象になるので見てみると、語学系やIT系の講座は多く、プラスになりそうだ。また、語学留学も対象になり、まとまった休暇日数が必要であるため、従業員が「教育訓練休暇給付金」を活用するメリットも大きくなる。

ちなみに、「教育訓練休暇給付金」そのものは会社に直接プラスになる要素がないが、「教育訓練休暇給付金」を使う従業員が出てくる場合に、会社にもお金が入る制度がある。それが「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)」の「長期教育訓練休暇制度」だ。

あらかじめ、長期教育訓練休暇の制度を作って就労規則に盛り込み、それを労働基準監督署に届け出ておく必要があるが、「教育訓練休暇給付金」の内容で休暇を取る場合にも該当する内容で、実際に休暇を取る従業員が出た場合に申請すると、会社にも20万円の助成がある(2025年11月現在の内容)。

いずれにせよ、変化の早い時代の中で、若手でもシニアでも、どんな立場の社員でも学びとは無縁ではいられなくなっている。制度も次々と新しいものが登場するので、どんな制度がどんな影響を与えるのかを考え、上手に活用していきたい。

寄稿者 中島康恵(なかじま・やすよし)㈱シニアジョブ代表取締役

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