【New!トップページ新着コメント欄追加】 学び・つながる観光産業メディア

観光地域づくり法人(DMO)と天王洲アイル#19 ~日常を彩るアートツーリズム~

コメント

一般社団法人天王洲・キャナルサイド活性化協会は、観光地域づくり法人(DMO)として、天王洲アイルの観光振興と地域活性化を推進しています。当協会設立以来、行政・企業・大学・地域住民を結びつける「コーディネーター」として、まちの活性化を目指して活動しております。前回は、「水辺とアートの街天王洲」というブランドのもとに進められてきた、まちづくりについてご紹介しました。今回は、アートを軸とした魅力的な観光地への転換について述べたいと思います。

まちのなかに点在するアート「巡り循る」/ 吉野もも(左)、「Oracle Bone Script Connection」/ Stachu Szumski

まちを活性化させる「アート」の力

東京湾岸の運河に囲まれた天王洲アイルは、アートを核とした新たな観光地としてプロモーションを進めています。かつて倉庫街であったこのエリアは、まちの随所にアートを配置することで、人々を引き付ける魅力的なまちへと変貌を遂げつつあります。

天王洲アイルのパブリックアートは、景観を美しく彩るだけでなく、人々の心と街を温かく結びつける「絆」のような存在です。アートは地域のブランドイメージを大きく高め、まち全体に新たな価値を付加しています。多様なアート作品を点在させることで、「アートの街」という独自のアイデンティティを確立しました。さらに、2019年から開催されている「天王洲アートフェスティバル」は、まちに点在するアート作品や施設を広く紹介し、アート鑑賞を目的とする来街者を増加させ、地域のにぎわいを生み出しています。

天王洲運河沿いのアート作品「 OUT OF BOUNDS」/ 山口 歴

アートが描くコミュニティ

アートは、人々の感性を豊かにし、日常に安らぎを与えます。通勤や散策の途中でふと目に留まるアート作品は、心の安らぎにつながり、まちへの愛着を深めてくれます。訪れる人だけでなく、そこで働く人や暮らす人々をもつなぐコミュニティを育んでいます。まちの皆さんが、アートイベントやワークショップに参加することで、「アートの担い手」となり、アート文化がしっかりと定着する基盤が築かれてきました。

運河に囲まれたアートの島、人々が織りなす天王洲アイルの観光は、見るだけでなく、五感で感じ、人とつながり、心を豊かにする「旅」の新しい形を目指しています。「水辺とアートの街」は、多くの人々に新たな体験と感動を提供することをビジョンとしています。

クラウド型街巡りガイドサービス「Smart Town Walker® 」(左)、ARフォト(中)、モビリティでめぐる「天王洲アートツアー」

アートを軸にした「新しい観光体験」の創造

天王洲アイルがさらに魅力的な観光地となるためには、パブリックアートを中心とした独自の体験を創り出すことが重要です。当協会では、パナソニックグループの協力を得て、観光DXの技術を活用したコンテンツ開発に実証的に取り組んでいます。

具体的には、アバターによる多言語ガイドによってアート作品を紹介したり、スマートフォンをかざすとAR(拡張現実)で作品が動き出す仕掛けを導入したりすることで、より深い鑑賞体験を提供しています。こうしたデジタルとアートの融合は、特に若い世代に向けた新しい観光スタイルです。

また、天王洲に点在するアート作品を楽しむための観光プログラムも展開しています。電動キックボードや電動車いすを活用した「天王洲モビリティアートツアー」、そして運河をクルーズしながら作品を鑑賞する「アートクルーズ」は、天王洲ならではのユニークな楽しみ方です。これらの非日常的な体験は、訪れる人々に忘れられない思い出をもたらします。

産学連携企画「東京港とアートクルーズ」/跡見学園女子大学観光コミュニティ学部篠原ゼミ(左)、「こども大学」/ 東京海洋大学

DMOが担う天王洲の未来

観光地域づくり法人(DMO)である当協会は、アートと水辺の複合的な観光地として観光を推進しています。「天王洲キャナルフェス」などの大規模イベントを企画・運営し、多くの人々が天王洲を訪れるきっかけをつくりました。水辺でアート、音楽、食を楽しむというユニークな体験は、天王洲アイルの新たな魅力を引き出しています。

また、住民・企業・舟運事業者・行政・大学・地域団体と連携することにより、アート、水辺、食文化など、天王洲アイルの持つ様々な魅力を複合的に楽しむことも実現しています。

今後も、新たなアートプロジェクトやデジタル技術を活用した体験型コンテンツの開発を通じて、天王洲アイルの魅力をさらに引き出し、「何度でも訪れたい場所」へと進化させ持続可能な発展へと導くことが使命となります。

天王洲アイルは、東京湾岸という立地に加え、水辺空間とアートが融合する希少なまちであり、今後ますます観光需要が高まることが期待されています。アートフェスティバルやパブリックアートを通じた国際的な発信力、舟運や各種モビリティを活かした回遊性の高い観光体験、そしてデジタル技術の導入などにより、訪日観光客や若い世代にも魅力的な都市型観光地として、今後さらに成長する可能性を秘めています。水辺とアートを軸にした新しい観光モデルの先駆けとして、今後もその発展に取り組んでまいります。

※アイキャッチは、「水辺とアートの街」 天王洲運河

寄稿者 三宅康之(みやけ・やすゆき) (一社)天王洲・キャナルサイド活性化協会 / 会長

/
/

会員登録をして記事にコメントをしてみましょう

おすすめ記事

/
/
/
/
/