14億ドルの投資により、世界最貧地域の一部の農家が旱魃、洪水、熱波に対する適応力とレジリエンスを高める、科学的根拠に基づくツールの利用を拡大
ベレン(ブラジル), 2025年11月15日 /PRNewswire/ -- Bill & Melinda Gates Foundation(以下、「Gates Foundation」)は本日、気候変動への適応を進め、温暖化が進行に対する小規模農家のレジリエンスを高め、貧困との闘いで積み重ねた成果を守る新たな取り組みを発表しました。
ブラジルのベレンで開催中の国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(United Nations Framework Convention on Climate Change、COP30)において、このほど4年間14億ドルの投資が発表されました。これは、サハラ以南のアフリカ諸国および南アジア全域の農家が、異常現象への適応を対する革新的な技術へのアクセスを拡大するものです。このような地域では食料安全保障と生計を農業に依存しているため、小規模農家とその農産物に依存する地域社会が、旱魃、洪水、気温上昇の影響に対して非常に脆弱な状態に陥っています。しかしながら、世界の気候変動対策資金のうち、こうした欠くことの出来ない食料制度への脅威の高まりに対処する資金は、1%未満に留まっています。
Gates FoundationのBill Gates会長は、「小規模農家は、想像しうる最も過酷な状況のなか地域社会を支えています。当財団は、このような農家が繁栄を享受するツールと資源を提供し、その創意工夫を支援しています。なぜなら、小規模農家のレジリエンスを高める投資は人類と地球にとって最も賢明であり、最も影響力のある取り組みの一つだからです」と述べました。
この取り組みは、Bill Gates氏が最近のCOP30メモによって示した「気候投資を最大限の人間への影響を優先する」というビジョンを支持しており、2045年までに数百万人の貧困からの脱却を目指す財団の目標を支持するものです。
世界的な資金不足への対応
低所得国の農家は世界の食料の3分の1を生産しているものの、気候変動がもたらす脅威に直面しています。気候変動に対する投資が拡大されなければ、このような脅威によって食料不安を引き起こされ、貧困対策で得た成果もかすんでしまいます。
World Bankの研究によれば、特に小さな島嶼国や開発途上国において気候変動に関する投資を重点的に行うことで、GDPを2050年までに最大15パーセントポイント押し上げることが可能とされています。環境・気候・持続可能性に関する国際的なシンクタンクWorld Resources Instituteの試算によれば、気候変動適応策への1ドルあたりの投資は、10年以内に10ドル以上の社会的・経済的便益をもたらすとされています。
Gates Foundationで最高経営責任者を務めるMark Suzman氏は、「気候変動適応対策は単なる開発課題ではなく、経済的かつ道義的な責任です。この新たな取り組みは、既に異常気象に耐えるための革新を実践しているアフリカおよび南アジアの農家への支援を基盤としています。しかしながら、この地域の農家だけで解決できる問題ではないため、政府と民間部門が連携し、気候緩和策と並行して気候変動に適応する方策を優先的に推進する必要があるのです」と述べています。
農家主導の革新の拡大
気候変動が与える影響が甚大化するなか、農家の気候適応を支援するための資金調達は追いついていません。UNが発行する世界の食料安全保障と栄養の現状報告2025年版によれば、今年、飢餓と栄養不良が増加した唯一の地域はアフリカでした。気候変動に関する政府間パネルIntergovernmental Panel on Climate Changeは、緊急の適応策が講じられない場合、アフリカの一部地域では2050年までに農業生産性が最大20%低下する可能性があるとの警告を発しています。
Gates Foundationが行う新たな投資は、気候変動の脅威が高まるなか、農家が主体性を持ち、科学的データに基づくイノベーションを拡大し、農村の暮らしと食料システムを強化するものです。
これにより、既に成果を上げている技術や手法が拡大します。具体例として、以下が挙げられます:
- デジタル諮問サービス:農家が情報に基づいた作付け判断とリスク管理を行えるよう、モバイルアプリやSMSなどのプラットフォームを通じて時機を得た個別対応型の情報提供を行います。これには2030年までにアフリカ・アジア・中南米における1億人の農家への普及を目指すAIM for Scaleイニシアチブへの支援も含まれます。
- 気候変動に強い作物や家畜:旱魃、高温、新たな害虫に耐性を持ち、収量と栄養価の向上につながる品種
- 土壌健全性イノベーション:劣化した土地の回復、生産性向上、排出量削減する手法であり、Novo Nordisk Foundationとの3,000万ドルの提携により、土壌科学研究を推進
全世界に影響をもたらす提携
この新たな提携は、2022年にエジプトで開催されたラウンドで発表された、同財団のCOP27公約を通じて拡大ないしは開始された提携がベースになっており、すでに数百万の農家を支援しています。例えば、次のようなものがあります。
- AIM for Scale:この世界規模の提携は2023年に立ち上げられ、2025年の雨季にインドにおける13州の約4,000万人の農家に対してAIを活用した気象予報をSMSで配信し、約百万ヘクタールにも及ぶ作物の保護に貢献しました。
- TomorrowNowとKALRO:アフリカの小規模農家を支援する非営利団体「TomorrowNow」は、ケニア政府が設立した農業・畜産研究機関Kenya Agricultural and Livestock Research Organization(KALRO)との協力により、500万人以上のケニア農民に対し、ごく限られた地域を対象とした気象警報を提供しています。これにより収穫量の向上と作物損失の削減をめざしており、現在タンザニア、マラウイ、ザンビアでの導入を進めています。
Gates Foundationは、地元の研究者、政府、民間部門の協力者と連携を通じて取り組みを拡大することで、農村経済と食糧システムを長期的な強化に取り組んでいます。
TomorrowNowの最高経営責任者を務めるWanjeri Mbugua氏は、「私どもは、小規模農家でも、適切なツールとリソースにアクセスできれば誰よりも迅速に適応できることを経験から知っています。適切な投資と強固な絆を構築することで、データに裏付けされた強力な解決策を農家に直接提案することが可能です。そうすることで、情報に基づいた意思決定を行い、自分の条件でレジリエンスを醸成できるようになるのです」と述べています。
COP30における協業
この投資には、アフリカの指導者およびCOP30の議長国ブラジルが主導する強靭化計画の中心に食糧・生計・健康を据えるという、世界共通の取り組みが反映されています。社会プログラムと持続可能な農業イノベーションを連携させたブラジル独自の経験は、包括的な適応が偏りのない成長を促進する方法を示しています。
なお、Gates Foundationは、ブラジルのMinistry of Agriculture and Livestock、ブラジルの公的農業研究機関「Embrapa」、食料安全保障と貧困削減を目指す国際的な非営利組織AGRA、AIM for Scale、農業・食料システムの研究開発を行う国際コンソーシアムCGIAR、中国政府が管轄する国家レベルの農業研究機関Chinese Academy of Agricultural Sciences(CAAS)、アフリカにおける農業研究Agricultural Research in Africa(FARA)、アラブ首長国連邦の協力により、COP30における農業イノベーション展示会(Agricultural Innovation Showcase)を共催します。今回のCOP30においては、上級参加者向けの公式行事や会議が11月10日に開催されます。この場と実際の展示の両方にて手頃な価格の気候スマートソリューションを重点的に紹介されますが、これは、農家向けに設計され、多くの場合農家自身によって開発されたものです。詳細はhttps://www.embrapa.br/en/cop30/agrizoneにてご覧ください。
Gates Foundationについて
Gates Foundationは、すべての命の価値は等しいという信念に基づき、すべての人々が健康で生産的な生活を送れるよう支援するために活動しています。発展途上国では、人々が自らの将来を決定し、潜在能力を最大限に発揮できるよう、パートナーと協力して効果的なソリューションを生み出しています。アメリカ合衆国における同財団の目的は、すべての人、特に資源が最も乏しい人々が、学校や人生で成功するために必要なチャンスを手にできるように支援することです。当財団はワシントン州シアトルに拠点を置き、Bill Gates氏と理事会の指揮のもと、CEOのMark Suzman氏が率いています。
メディア問い合わせ先: media@gatesfoundation.org