東京大学本郷キャンパスは、文京区の高台、本郷台地に位置する。明治維新に昌平坂学問所などを統合し、1877年4月に文部省所管の官立東京大学として創設された。1886年に帝国大学と改称、1897年に京都帝国大学が創設されたことにより、東京帝国大学となった。
そして、戦後1947年に東京大学と改称し、現在に至っている。
さて、この場所は、江戸時代に加賀藩の上屋敷であった。東大の中で最も有名なキャンパスであり、構内には赤門や医学部附属病院、夏目漱石の『三四郎』で描かれる池(育徳園心字池、通称「三四郎池」)がある。また、安田財閥の祖である安田善次郎が寄贈した安田講堂(正式名称:東京大学大講堂)もある。
本郷キャンパスの原型は、関東大震災後に作られた。震災前の校舎の大部分が関東大震災で倒壊・焼失。そのため、内田祥三(工学部教授、後の総長)を中心に復興計画が立案された。正門と安田講堂を結ぶイチョウ並木は、本郷キャンパスの象徴的景観である。既存の建物の外観は残したまま、内部だけを改装した建物も多い。また、近年は新しい建物も増えている。
学問の場が、観光コンテンツに
本郷通りからキャンパスに入る。正門の向こうには、安田講堂までのイチョウ並木が見える。自転車で入構とする人々を守衛さんが「降りてください」と制していた。イチョウの木々が黄色に変わる頃、学生よりも多くの訪問者が闊歩する。近隣の保育園の子供たちもやってきている。最高学府であると同時に地域住民の憩いの場でもある。また、昨今は東大に入学したいという訪日外国人が、観光のついでにイチョウの葉っぱを求めるようになったという。
独立行政法人となった国立大学、学問の場でもあると同時に、かつての大名屋敷を観光コンテンツとして、充実させていくことも、これからの課題なのかもしれない。行政の施設や大学構内の食堂などにもスポットが当たるようになった。これまで考えられなかったモノ・コトが観光素材となる。善き良き勉強の場だと感じる。





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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長