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Japan Velo、欧州基準の自転車ルート構築へ 羽田起点の観光誘致も

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欧州サイクリスト連盟(ECF)の基準に基づく「ルート評価インスペクター養成講座」が2025年11月22日、23日、茨城県土浦市で開催された。筆者は同講座を受講し、日本におけるサイクリング・ツーリズムの変革と、インバウンド誘致に向けた新たな可能性を確認した。本稿では、ジャパンベロ(Japan Velo)が目指すグローバル水準のネットワーク構築と、その展望をレポートする。

欧州に学ぶ「平和の移動手段」としてのサイクリング

今回の研修は、日本のサイクルルートを真にグローバル水準へと引き上げるための人材育成を目的としたものだ。

欧州では、サイクリングが国民生活に深く根付いた文化として成熟している。ECFが構築・認証する広大なネットワーク「ユーロベロ(EuroVelo)」の存在が、その事実を裏付けている。

自転車で地域を巡る魅力は、単なる移動の楽しさにとどまらない。その土地の村や人々と触れ合い、文化や歴史を深く理解する「体験」にある。講師が指摘した通り、こうした国境を越えた交流は、人々の相互理解を深める平和的な取り組みとしても機能している。

「スポーツ」から「レジャー」へ 利用者視点の転換

今回学んだ評価基準(ECS)の画期的な点は、ルートを作る側ではなく「利用する側」の視点で設計されていることだ。

これまでの日本国内のサイクリング文化は、ロードバイクを中心とした「速く走るスポーツ」としての側面が強かった。そのため、ルートの安全性や快適性よりも、距離や難易度が重視される傾向にあった。

しかし、ECSの基準では異なるアプローチが求められる。家族連れや初心者、ハンドバイク利用者など、快適な路面と安全性を求める「ディマンディング・サイクリスト」への配慮が不可欠なのだ。

人口構成を考慮すれば、この層こそが将来的に日本で最大のサイクリスト層となる可能性が高い。ジャパンベロが目指すのは、速さを競うスポーツから、地域の魅力を発見する「レジャー」への転換である。

羽田からあきる野へ 世界水準のルート造成

研修を修了したインスペクターは、ECSを用いて日本のサイクルルートを欧州水準、すなわちグローバル水準へ引き上げる役割を担う。認定されたルート情報はユーロベロのウェブサイトと連携され、海外からのサイクリスト誘致において大きなアドバンテージとなる。

現在、このネットワークを国内に広げる具体的なプロジェクトが進行中だ。筆者が所属する東京山側DMCでは、インバウンドの玄関口である羽田空港を起点に、東京の山間部・あきる野市へと向かうルート造成に取り組んでいる。

羽田から「東京山側」への導線をジャパンベロのコースとして整備することは、旅行者に日本の多様な魅力を提供する重要な施策となる。スポーツに偏らない多様なサイクリング文化を醸成し、地域経済の活性化につなげていく方針だ。


寄稿者:西川佳克(東京山側DMC 地域創生マチヅクリ事業部)

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