【New!トップページ新着コメント欄追加】 学び・つながる観光産業メディア

開業10年目に舞台裏体験型ツアー、東武トップツアーズがバスタ新宿で都市型インフラツーリズム始動

コメント

東武トップツアーズは12月20日、国内最大級の高速バスターミナル「バスタ新宿」(東京都新宿区)を舞台としたインフラツーリズム企画「バスタ新宿大解剖! 知られざる探求ツアー(バスタツアー)」を始動する。開業から10年という節目を迎えたバスタ新宿を、単なる交通拠点ではなく「体験型の観光資源」として再定義し、その役割や意義を来訪者に伝える。

同事業は、国土交通省関東地方整備局東京国道事務所、新宿高速バスターミナル、東武トップツアーズが参画する「バスタ新宿インフラツーリズム魅力倍増プロジェクト協議会」が進める 「バスタ新宿2大パワーアップ計画」 の中核をなすもの。①バスタ新宿そのものを体験するインフラツーリズム(バスタツアー)と、②バスタ新宿を起点に高速バスで地方観光へとつなぐ「バス旅」の2本柱で構成されている。

ツアーの様子
都市型インフラツーリズムとして期待される

開業10年目を迎えたバスタ新宿、その価値を問い直す

バスタ新宿は2016年4月、JR新宿駅南口に開業した日本最大級の高速バスターミナル。新宿駅周辺に点在していた19カ所の高速バス乗降場を一体化し、鉄道・バス・タクシーを立体的に集約することで、都市交通の利便性を大きく向上させてきた。

開業から約10年が経過し、累計利用者数は約7,000万人。1日あたり約2万〜3万人が利用する巨大交通インフラとして定着する一方で、「多くの人にとっては通過するだけの場所」でもあった。今回のツアーは、その当たり前の風景の裏側に光を当て、都市インフラの価値をあらためて可視化する試みとなっている。

いたるところにバスやタクシーが並ぶ

モニターツアーで明らかになった「舞台裏」

ツアー開始に先立つ12月10日には、メディア向けモニターツアーが実施された。3階会議室での概要説明の後、ガイドの案内により施設内を巡る構成だ。ガイドは冒頭、「ここ自体が国道20号の一部」と説明。バスタ新宿がJR線路上の人工地盤に築かれた4層構造の施設であり、道路・鉄道・バスという異なる交通インフラが一体となって機能している点を強調した。

ガイドがバスタ新宿内を案内
ガイドがバスタ新宿内を案内

4階の待合室では、営業時間が午前3時30分から翌午前5時までで、実質の休止時間がわずか2時間半しかないことが紹介された。深夜帯も含めて稼働し続けるターミナル運営の実態は、「止まらない都市インフラ」を象徴している。

店舗運営者による説明
店舗運営者による説明

ツアーの中でも参加者の関心を集めたのが、バスタ新宿の運行を支える管制機能の解説だ。モニターツアーでは管制室内部への立ち入りは行われなかったものの、ガイドや現場担当者から、外部からの視点でその役割が紹介された。

クイズを実施するなど、細かい情報を数多く聞ける。写真は道路鋲。

またツアーでは、一般来訪者が立ち入ることのできないエリアや施設全体の構造を、専用のVR映像で解説する演出も盛り込まれており、現地を歩くだけでは得られない視点からバスタ新宿を理解できる点も、同ツアーならではの特徴となっている。

VR体験の様子
VR体験の様子

バスタ新宿では、全国約100社の高速バスが乗り入れ、1日最大で約1,200便が発着する。ピーク時には1時間あたり約70便が集中することもあり、道路状況による遅延や到着の前後が日常的に発生するという。そうした際には、管制担当者と現地の誘導員が無線で連携し、発着バースの変更や順序の入れ替えなどを行いながら、全体の混乱を最小限に抑えている。「鉄道のように分単位で制御できないのがバス。その分、現場での判断が重要になる」という担当者の説明からは、目立たない場所で積み重ねられている調整業務こそが、巨大ターミナルの日常を支えている実態が浮かび上がった。

次の10年を見据えて横展開を検討

質疑応答では、国交省関係者も登壇し、今回の取り組みの政策的な位置付けについて言及した。国交省東京国道事務所の山下敦馬副所長は、「インフラツーリズムは、これまでダムや橋梁など地方部での展開が中心だったが、バスタ新宿は都市部における新たなモデル」と説明。日常的に利用される都市インフラだからこそ、知ることで価値が変わる体験が重要だと強調した。また、「特定の層に限定せず、一般利用者、インフラに関心のある層、親子連れ、訪日客まで幅広く体験してほしい」とし、都市型インフラツーリズムの裾野拡大に期待を示した。

国交省東京国道事務所の山下敦馬副所長
国交省東京国道事務所の山下敦馬副所長

一方、東武トップツアーズ 東武沿線事業推進部の望月康紀部長は、「立ち入り禁止エリアに入れない制約がある中で、映像やVR、現場の声を組み合わせることで、参加者にしか得られない理解の深さを提供している」と説明。今後はテーマ性を持たせた発展型ツアーも検討しているという。

東武トップツアーズ 東武沿線事業推進部の望月康紀部長
東武トップツアーズ 東武沿線事業推進部の望月康紀部長

質疑では今後の展開にも話題が及んだ。国交省東京国道事務所計画課の遠藤一彦課長は、「バスタ新宿での成果や知見は、他のバスタ(品川、札幌、神戸など)や、他の都市型インフラにも横展開していく可能性がある」と述べ、今回の取り組みを〝実証の場〟と位置付けた。

国交省東京国道事務所計画課の遠藤一彦課長
国交省東京国道事務所計画課の遠藤一彦課長

東武トップツアーズの望月部長も、第2の柱である 「バスタ新宿がつなぐ都市と地方との観光ツアー(バス旅)」 に触れ、「高速バスと到着地での観光体験を一体で予約できる仕組みを構想している」と話した。移動と観光を切れ目なくつなぐことで、地方誘客を後押しする考えを示した。

都市インフラを、次の観光資源へ

開業10年目という節目に打ち出された「2大パワーアップ計画」。それは、バスタ新宿を「通過点」から「旅の入口」へと変える試みとなっている。都市に溶け込み、意識されにくくなった巨大インフラの価値を掘り起こし、次の10年へとつなげる今回の取り組み。東武トップツアーズと国が連携して進める都市型インフラツーリズムは、全国への横展開も視野に入れ、新たな観光モデルとして歩み始めた。

取材 ツーリズムメディアサービス編集部

/
/

会員登録をして記事にコメントをしてみましょう

おすすめ記事

/
/
/
/
/