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観光地域づくり法人(DMO)と天王洲アイル #21 ~天王洲アイルで考えるKPI再設計~

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一般社団法人天王洲・キャナルサイド活性化協会は、観光地域づくり法人(DMO)として、天王洲アイルの観光振興と地域活性化を推進しています。当協会は、行政・企業・大学・地域住民を結びつける「コーディネーター」として、まちの価値向上に取り組んでまいりました。前回は、来街者を地域全体の経済へと還元し、持続的な観光消費を拡大させる仕組みについて紹介しました。今回は、アートがまちを変えたことによって必要となったKPI再設計について述べたいと思います。

壁面に描かれたアート作品 アイルしながわ(左) 、寺田倉庫T33ビル

アートがつくり出す新しいまちの表情

天王洲アイルを歩くと、巨大な壁画、立体アート、ミュージアム、ギャラリー、アートイベントに出会うことができます。再開発をしたわけでなく「まちの表情」は、静かに変わりつつあります。その変化は、訪れる人の歩き方や滞在の仕方にも表れています。アートがまちに与える影響は、想像以上に大きく、そして、高層ビルが立ち並ぶ天王洲アイルの街並みを柔らかくやさしいものにしました。

天王洲アートツアーの様子 This is Mr. Shirai(左)、Anonymous (アノニマス)

アートが人々を魅了する

天王洲アイルの文化発信拠点となるWHAT MUSEUMや国内外のギャラリーが集まるTERRADA ART COMPLEXには、アート好きの人々がゆったりと作品を鑑賞する姿が見られます。かつての天王洲アイルは、「目的がないと訪れにくいエリア」と言われることもありましたが、ギャラリー巡りのついでに散歩をしたり、イベントの帰りにカフェに寄るといった、余白のあるゆったりとした過ごし方が定着しつつあります。

運河沿いには、アーティストが手がけた大きな壁画が点在しています。特に天王洲ふれあい橋付近では、壁画を背景に写真を撮る人が増え、SNSでの投稿も少しずつ積み上がっている状況です。こうした見える変化はもちろんですが、当協会として重視すべきは、アートがもたらす「見えない変化」です。

天王洲第三水辺広場(ボードウォーク)の様子

評価指標(KPI)の再設計を検討

都市型のアートエリアでは、観光客だけでなく地域住民やオフィスワーカーも、同じ空間に自然に混ざり合います。昼休みにアートを見ながら休憩するオフィスワーカー、子ども連れで運河沿いを歩く地元の家族、ミュージアムやギャラリー、イベント目的で天王洲アイルに訪れ、その後、レストランやカフェで長居する来街者といった姿が日常になりつつあります。

しかし、こうした動きは従来の「観光者数」「消費額」などでは捉えきれません。アートの価値は、集客よりも「まちの魅力の変化」に表れます。KPIも、まちの魅力を示すものに変える必要があります。

天王洲公園のアート作品「See a Song」(左) 、アイルしながわキッチンカーフェス

天王洲アイルの変化から見えてきたKPI

  1. ボードウォーク周辺では、散歩で訪れた人が30分以上滞在するケースが前より確実に増えています。壁画を見ながら写真を撮り、運河沿いでくつろぐ、時間の使い方が生まれています。
  2. 天王洲キャナルフェスやアートイベントの来場者が、週末に家族や友人を連れて再訪したり、平日の仕事帰りに立ち寄るケースも増えています。イベントが日常の行動につながるリピート率は重要な指標です。
  3. 天王洲のSNS投稿量は爆発的ではありませんが、投稿の質的な変化も表れています。アートと水辺の組み合わせが心地よい。ミュージアムやギャラリーは、落ち着いて鑑賞できる。といった丁寧な投稿が増えており、地域イメージ形成に寄与しています。
  4. ミュージアム、ギャラリーを訪れた後、カフェやレストランを回遊する人が増え、複数スポットを楽しむ行動が目に見えて増加しています。
天王洲・キャナルアートモーメント 2019(ステージパフォーマンス&プロジェクションマッピング)

KPIを「数字」から「ストーリー」へ

アートの効果は、経済効果として大きな数字で表れるものではありません。しかし、天王洲アイルではアートをきっかけに人がゆっくり歩き、景観を写真に収め、散歩コースに選ぶようになるなど、時間の流れ方そのものが変化しつつあります。こうしたやわらかな変化を捉えることこそ、アートを核とする都市型観光拠点に求められるKPIです。

天王洲・キャナルサイド活性化協会が、重視する指標は以下のとおりです。

  1. 滞在時間の長さとリピート率
  2. SNSでの投稿内容の質
  3. 地域内周遊の広がり
  4. 住民・オフィスワーカー・観光客の自然な混ざり合い

これらは、KPIとしては、曖昧かもしれませんが、アートがもたらす価値を反映する現実的な指標となります。

アートの魅力を測ること

アートの魅力は、大きな数字には現れにくいものです。天王洲アイルでは、壁画が一つ増えるだけで人の歩き方が変わり、運河沿いで足を止める人が増え、まちの空気が少し柔らかくなります。こうした静かな変化こそが、アートがまちにもたらす本当の価値です。天王洲アイルが目指すKPIは、成果を表す数字ではなく、「まちがどの方向に育っているか」を示す羅針盤のような指標であるべきです。滞在時間、歩き方、再訪率、SNSでの語られ方など、その一つ一つが、アートと人がどのように交わっているかを映し出します。

人・アート・水辺が、自然に混ざり合う心地よい都市型観光エリアとして天王洲が育っていくために、アートがまちを変え、まちがアートを育てる。そんなゆるやかな循環が、生まれつつあるエリアです。変化を見逃さず、未来へとつなげることが、当協会に求められている役割だと感じています。

※アイキャッチは、「水辺とアートの街」 天王洲運河

寄稿者 三宅康之(みやけ・やすゆき) (一社)天王洲・キャナルサイド活性化協会 / 会長

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