スカイマークは12月15日、羽田空港近接の本社で記者懇談会を開催し、今後の事業戦略について説明した。神戸発着の台湾国際チャーター便が好調だったことを踏まえ、国際線への取り組みを収益多角化の選択肢として検討していく考えを示した。一方で、国内線事業はコスト高と運賃構造の歪みにより厳しい局面が続いているとし、制度面の見直しと自助努力の両立が不可欠だと強調した。
記者懇談会で本橋学社長は、国際線について「引き続き検討を進めている」と述べた。10月に神戸発着で台湾への国際チャーター便を計7便運航し、神戸発が4便、台湾発が3便と、いずれもほぼ満席に近い搭乗率だったと説明した。国際線需要の強さを実感したとして、機材稼働率の向上や収益源の分散という観点からも、今後の展開を慎重に見極めていく考えを示した。
国内線事業を巡っては、依然として厳しい環境が続いているとの認識を示した。コロナ後、旅客数は回復しているものの、世界的な物価高や円安を背景に、燃料費や部品費など外貨建てコストが大幅に上昇している。一方で、国内線運賃は消費者物価指数や国内旅行代金ほど上昇しておらず、満席が続いても収益が伸びにくい「利益なき繁忙」に近い状態だと説明した。
また、大手航空会社との構造的な違いにも触れた。スカイマークを含む国内線中堅各社は収入の大半を国内旅客に依存する一方、大手2社は国際線や貨物といった複数の収益源を持つ。国内線では燃油サーチャージを運賃に反映しにくい制度面の制約もあり、コスト上昇を吸収しきれない状況が続いているとした。国内航空のあり方に関する有識者会議では、持続可能な運賃競争の必要性を訴えてきたと説明した。
一方で、自社の成長に向けた取り組みも進めている。マイページサービスは登録者が約100万人に達し、顧客データを活用したマーケティングを強化している。若年層向け運賃「BonvoYoung(U25割)」は順調に利用が拡大し、里帰りや友人との旅行、イベント参加など多様な需要を取り込んでいるという。
法人需要の開拓にも注力する。JTBの出張管理システム「ビズバンスJTB出張予約」との連携により、法人向けオンラインサービスの契約企業を約40社増加させたという。出張費抑制ニーズを背景に、大手企業からの利用も広がりつつあり、これまで限定的だったビジネス需要の拡大を見込む。
機材面では、2026年以降に燃費性能が向上した737-8や、座席数を増やした737-10を順次導入する。燃料費削減と供給力強化を通じ、収益改善につなげる狙いだ。新機材は外観デザインも刷新し、ブランドの視認性向上を図る。
本橋社長は、創業30周年を迎える2026年を見据え、国内線の持続性を確保しつつ、国際線を含めた新たな成長機会を模索していく姿勢を示した。
情報提供 トラベルビジョン(https://www.travelvision.jp/news/detail/news-120153)