12月19日、TKC市ヶ谷カンファレンスセンターにて「令和7年度 誰もが楽しめる自然体験型観光推進事業 第4回ワークショップ」が開催されました。東京都内の自然を活用したユニバーサルツーリズムの推進を目的に、専門家による講義と参加者によるグループディスカッションを実施。特に今回は、障害当事者が議論の中心に加わり、「当事者が声を上げ、体験を発信すること」の重要性が熱く語られた、情熱あふれるワークショップの模様をレポートします。
■専門家が語る「諦めを価値に変える」準備と工夫

前半の講義では、現場の第一線で活躍する2名の専門家が登壇しました。
(株)プランニングネットワークの渕山知弘氏は、八丈島でのバリアフリービーチや秋川渓谷でのリバーアクティビティなどの事例を紹介。
ツアー造成の裏側には、車椅子での動線確認やトイレ、着替え場所の確保といった緻密な下見と、旅行会社・アクティビティ事業者の連携が不可欠であると解説しました。

続いて登壇したNPO法人ユニバーサルツーリズム総合研究所の長橋正巳氏は、「旅で元気になる」をテーマに講演。
行けない場所へ行けるようにするソリューションビジネスとしての価値を強調し、「特別扱いではなく、工夫によって『みんなと同じ』体験を提供することが重要だ」と訴えました。
■「行けるかな?」ではなく「行きたい!」と思わせるコンテンツを
後半のグループディスカッションでは、4〜6名のグループに分かれ、「魅力的なコンテンツ造成」「モデルプラン作成」「訴求方法」の3テーマについて議論が交わされました。
あるグループでは、単に「安全で無難なツアー」を作るのではなく、「本当にできるの?」と思わせるような尖った「フックコンテンツ(例:ロングトレイルやリバーリング)」の重要性が話題となりました。まずは「行きたい」という強い憧れを抱いてもらい、そこから丁寧なプランニングで実現に導くというアプローチです。
■当事者が声を上げ、リアルな体験を映像で届ける
特に印象的だったのは、脳性麻痺で車椅子を使用する当事者の方が参加されたグループでの議論です。

通常、モデルプランやコンテンツは健常者側の視点で作られがちですが、このグループでは「当事者が声を上げ、プログラムに反映させること」の本質的な意義が語られました。
当事者の方は、「自分が行くと迷惑になるのではないか」という心理的ハードルがあることを吐露した上で、だからこそ魅力的なコンテンツに引かれて「行こう」と決意し、当事者がその手を掴みに行くことの重要性を強調しました。

そして、効果的な訴求方法として提案されたのが、「当事者による映像発信」です。 テキストや写真だけではなく、YouTubeなどの動画メディアを活用し、当事者が実際に体験して心から楽しんでいる様子(120%の感動)をありのままに発信すること。それが、「自分も行けるかもしれない」という同調を生み、ひいては地域にお金が落ちる持続可能な観光につながるという力強い提言がなされました。
■「誰もが、誰もと楽しめる」未来へ
発表の最後には、「誰かがやってくれるのを待つのではなく、当事者も事業者も一緒になって『ともかく動こう(知覚動考)』」というメッセージが共有されました。 参加者一人ひとりの「本気でユニバーサルツーリズムを推進したい」という熱い思いが、東京の観光を新たなステージへと押し上げることを予感させる一日となりました。
投稿者:西川佳克(にしかわ・よしかつ)東京山側DMC 地域創生マチヅクリ事業部