地域の記憶と巡礼文化に触れる、秋のスピリチュアル・トレッキング
山梨県南部の早川町は、南アルプスのふもとに位置し、「奥山梨」とも呼ばれる山深い地域。急峻な山々と清流が織りなす自然の中に、かつての巡礼道や宿場町、鉱山・林業の歴史が静かに息付いている。
その文化的・精神的な魅力を体験型の旅として再編集したのが、地方創生事業の一環として造成された「奥山梨の聖地巡礼ツアー」だ。
同ツアーは2025年9月から12月中旬まで販売され、秋から冬にかけて催行された。今回は、その実施内容を現地レポートとして紹介する。
「奥山梨」という場所、自然と信仰が交差する山の文化圏
早川町は、南アルプスと櫛形山、身延山の山稜に囲まれ、日本有数の「人口の少ない町」としても知られる。しかし一方で、この地域は古くから巡礼文化と山岳信仰の結節点でもある。
・身延山久遠寺を中心に広がる日蓮宗の聖地
・七面山へと続く参道・宿坊文化
・赤沢宿の講中宿と石畳の街並み
・鉱山と硯の産地として栄えた雨畑地域
観光というよりも、暮らしの中に残る信仰と文化の痕跡がその本質的な魅力だ。今回のツアーは、こうした地域資源を登山・文化体験・交流として編み直され、訪問者がゆっくりと「意味を味わう旅」を体感できる構成となっている。
赤沢宿から始まる、静かな巡礼のプロローグ
1泊2日のコースでは、まず身延駅から送迎車で赤沢宿へ向かう。石畳の坂道に沿って講中宿が並び、木造家屋の軒先から往時の面影が立ち上がる。そして、地元ガイドは参拝者が行き交った江戸時代の記録や、宿坊文化の変遷を丁寧に解説。参加者は足を止めながら、「山へ向かう人々の想い」に思いを馳せた。
歴史を知ってから山へ登ると、ただの登山ではなく物語を辿る旅に変わった。参加者はその後、吊橋から雨畑湖を望み、雨畑硯の製作体験・習字体験へ。手を動かし、墨を磨る時間が、ゆるやかな内省の時間となった。夕暮れになると、宿泊地のヴィラ雨畑へ移動。地元食材の夕食と天然温泉が、旅の緊張感をほぐしてくれた。
「七面山」祈りの道を、一歩ずつ
2日目は、山岳ガイドの先導で七面山登山へ向かった。整備された参道を、宿坊で小休止を挟みながら歩み進める。林間に響く読経の声、参拝者とすれ違う一瞬の会釈。そのすべてが、この山が今も「生きた信仰の場」であることを感じさせられた。山頂の敬慎院では、読経体験と昼食。運が良ければ、堂内の額縁越しに富士山が浮かび上がる「額縁富士」が姿を現すという。参加者からは、「景色が美しいだけでなく、時間の蓄積そのものを感じた」といった声が上がった。下山後は南アルプスプラザで地域特産品を手に旅を締めくくった。

インフルエンサー・山下舞弓さんが語る「旅の質」
ツアーには、登山・アウトドア分野で発信を続ける山下舞弓さんが参加した。「登山・文化・食・学びが重層的に組み込まれた体験でした。送迎やガイドのサポートもあり、安心感と“地域に迎え入れられている感覚”がありました」と話しながら、ポイントとして、①集合から解散までスムーズな移動導線②体験が観光以上・修行未満の程よい深さ③赤沢宿で流れる静の時間-を上げ、「旅の密度が高い」と評価した。

日帰り版「身延山〜赤沢宿」コースも開催
同期間には、初心者向けの日帰りトレッキングも実施された。身延山久遠寺参拝、ロープウェイでの展望、巡礼道の下り歩行、赤沢宿での昼食、羽衣の滝立ち寄りなど、短時間ながら、巡礼文化のエッセンスが凝縮された内容だ。参加者からは、「ただ歩くのではなく、意味を持って歩く旅だった」という声が多く寄せられた。
巡礼文化を未来へ、観光ではない対話する旅
今回のツアーを通じて感じられるのは、地域と旅人の関係が「消費」ではなく「対話」へと近づいていることだ。山を歩くことは、自然と向き合う行為であり、歴史に触れることは、地域の時間を尊重することでもある。秋から冬へと移ろう山里で、参加者はそれぞれの祈り・内省・再発見を胸に帰路についた。
ツアーに関する問い合わせ先
企画・実施はエイチ・アイ・エス(HIS)。
問い合わせ先(同ツアーに関するお問い合わせ)
MAIL:hayakawa-project@his-world.com
エイチ・アイ・エス(地方創生・早川町プロジェクト)