浅間山麓6地域をe-bikeで結び、街道文化、自然景観、食、工芸を“物語”として体験する広域観光プロジェクト「浅間六彩トレジャーライド」。後編では、城下町の歴史と断崖の絶景を抱く小諸市、浅間山南麓の雄大な自然と中山道の風情が残る御代田町、そしてワイン文化と宿場町の面影が共存する東御市の3ルートを紹介する。前編の軽井沢・北軽井沢・嬬恋に続く“後半三彩”は、より深い歴史性と土地の営みを体感できる構成が特徴で、走る・歩く・味わう・学ぶを一体化した体験型サイクリングの真価が現れる。

■小諸市サイクリングルート
城下町と断崖の絶景をめぐる、歴史と癒やしの道
城下町でありながら“谷の町”でもある小諸は、見下ろすのではなく大地に刻まれた時間を感じる土地だ。スタートは小諸駅前の観光案内所。電動アシスト自転車やチャイルドトレーラーの貸し出しもあり、年齢や脚力を問わず参加できる体制が整う。ルートは北国街道の宿場町・小諸宿の古い町並みを抜け、健速神社で旅の安全を祈願。さらに岩壁に抱かれるように建つ布引観音 釈尊寺へと向かう。参拝には山道を歩く必要があるが、眼下に広がる景色は圧巻で、サイクリングに“祈り”と“静寂”の時間をもたらす。
途中、島崎藤村ゆかりの温泉宿でのそば打ち体験や、城跡を整備した懐古園の散策、朝早くから営業するおにぎり店や天空のドーナツカフェ、ハーブ農園など、歴史と食、癒やしの立ち寄りが連続する。総距離は約30kmながら獲得標高は高く、e-bikeの活用が前提となるが、その分、達成感と満足度は大きい。小諸は「歴史の重み」と「心をほどく風景」が同居する、後編の象徴的ルートと言える。
ルートマップ:https://www.navitime.co.jp/coursebuilder/course/8cc04341811643dca81ab2798b5fad98
■御代田町サイクリングコース
中山道と浅間南麓、雄大な自然を駆ける爽快ルート
軽井沢に隣接しながら、より開放的な景色が広がる御代田町。スタートは御代田駅。コンパクトな無人駅の素朴さが旅情を誘う。ルートは中山道の追分宿・小田井宿へと続き、交通量の少ない道を浅間山の眺望とともに進む。雄大な自然の中で風を切る爽快感は、このコースの最大の魅力だ。
道中には、地元フルーツを生かした洋菓子店、野菜ソムリエが営む小さなパン屋、浅間山の鎮火を祈願して建立された古刹、樹齢数百年の御神木を抱く神社など、地域の日常と信仰が点在する。さらに渓谷の景観美を誇る露切峡を経て、老舗和洋菓子店で甘味を楽しみゴールへ。総距離約29km、獲得標高約475mと起伏はあるが、e-bikeにより幅広い層が挑戦可能だ。ガイドが当日の営業状況に合わせて立ち寄りを調整する点も、体験価値を高めている。
ルートマップ:https://ridewithgps.com/routes/52721085
■東御市サイクリングコース
宿場町とワインの丘を結ぶ、歴史と味覚のサイクリング
千曲川の流れと浅間山を望む東御市は、日本有数のワイン産地として知られる一方、北国街道の宿場町・海野宿を擁する歴史の町でもある。スタートは田中駅併設の観光情報ステーション。電動アシスト自転車の選択肢が豊富で、初心者にも安心だ。総距離は約22kmと短めながら、丘陵を多く走るため獲得標高は高く、ヒルクライムの醍醐味を味わえる。
ルート前半では老舗和菓子店や白鳥神社に立ち寄り、海野宿では自転車を降りて徒歩で町並みを味わう。後半はワイン&ビアミュージアムで千曲川ワインバレーの歴史を学び、旧校舎や古民家住宅で地域の教育・農の歴史に触れる。ワインテラスや道の駅では、くるみを使った郷土食や地元野菜、ジュースなどノンアルコールでも楽しめる選択肢が充実し、「飲まなくても満足できるワインツーリズム」を体現する。写真映えと文化的満足度の高いコース設計が光る。
ルートマップ:https://www.navitime.co.jp/coursebuilder/course/5ee850d2c8334d5aa778a2da7b6b1d38
総括 六つの彩りがつくる“面の観光”

後編の3ルートは、城下町の重層的な歴史、街道文化と高原の自然、そしてワインと農の営みという異なるテーマを持ちながら、e-bikeと専門ガイドという共通の手法で一つの物語へと束ねられている。軽井沢のブランド力を入口に周辺地域へと動線を広げる前編に対し、後編は地域の奥行きと生活文化に深く分け入る構成だ。
「浅間六彩トレジャーライド」が描くのは、点在する観光資源を単独で消費するのではなく、地域間を結び“面”として体験する観光モデルである。電動アシスト自転車は移動のハードルを下げ、ガイドは歴史や暮らしの背景を言葉で補完する。そこに食や工芸、信仰、学びが重なり、訪問者は単なる通過者ではなく“地域の一日住民”となる。六地域・六ルートがそろったとき、浅間山麓は「見る場所」から「巡り、味わい、記憶する場所」へと変わる。六つの彩りは、広域連携が生み出す新しい観光のかたちを静かに示している。