現地レポート1
フランスの観光資源を国際市場にアピールしたい地方観光局やDMCと、世界中の旅行会社などをつなぐフランス最大の旅行業界向けBtoB見本市「ランデヴー・アン・フランス」が、2026年も3月31日と4月1日の2日間にわたり華やかに開催された。

今年の会場は南仏「プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地方」の中心都市ニース。20年目の記念すべきイベントにふさわしく、主催のフランス観光開発機構の発表によると世界52カ国から総計約1850人もの旅行業界のプロフェッショナルたちが集結した。フランス国外の旅行会社からの参加者は814人で、フランス側の出展企業・団体数もじつに704にもおよんだ。
世界中から招待された28人のジャーナリストの1人として参加した筆者が、3回にわたってレポートする。
今後は観光客の「数」ではなく「質」を重視、フランス観光開発機構ウビュイCEO
会期中に行われたプレスカンファレンスでは、まず主催者であるフランス観光開発機構のアダム・ウビュイCEOが登壇し、2030年までのビジョンを語る基調講演を行った。

ウビュイ氏によるとパリオリンピック2024という世界的一大イベントが終わったあとでも外国人観光客数は落ち込むことなく、2025年には対前年比2%増の約1億人がフランスを訪れたという。
とはいえ「人数」だけを目標にしているのではないとして、2030年に向けた方針を語った。今後は人数ではなく客単価を上げ、2025年は775億ユーロ(2026年4月現在のレートで約14兆5000万円)だった観光収入を「2030年には1000億ユーロ(約18兆7000万円)にまで引き上げるのが目標だ」とした。
また「サステナブルツーリズムなど」にも注力したいという。「絵はがきにあるような典型的な観光地を見て楽しむ従来型の旅行だけでなく、アグリツーリズムやスポーツツーリズムなどの付加価値のある旅行形態を積極的にアピールしていくために、投資したい」と力強く語った。
特に農業体験・農村体験・地元民との交流などが主軸となるアグリツーリズムなどは観光客を分散させ、旅行業の大きな問題である有名観光地での「オーバーツーリズム」を緩和させることにもつながる。世界の旅行業界をリードする「観光大国」フランスだけに、そのあたりの準備も万全だ。
スポーツツーリズムの充実~パリのレガシーを2030年冬季五輪へ
続いて登壇したフランス観光開発機構のマーケティング&パートナーシップディレクターであるソフィー・マンドリヨン氏は、今後注力していく観光資源やイベントに関してより具体的に語った。

まずは、2024年の夏季パリオリンピックでつくられたスポーツイベント大国フランスというレガシーを2030年の冬季フレンチアルプスオリンピックに引き継ぐべく、さまざまなスポーツイベントをアピールしていくという。世界で最も有名な自転車レースである「ツール・ド・フランス」の2026年の出発地点を男子はスペイン・バルセロナ、女子はスイス・ローザンヌとして国境を越えて盛り上げていく。
6月には日本相撲協会を招いた第3回「大相撲パリ公演」を31年ぶりに2日間にわたり開催。7月には同じパリで、知的障害があるアスリートと障害のないパートナーがともにチームを組むサッカー大会「スペシャルオリンピックスユニファイドフットボールワールドカップ」の第3回大会が7日間の予定で開かれる。

また、来年以降も2027年自転車世界選手権、2028年のアイスホッケー世界選手権、2029年の男子ハンドボール世界選手権(ドイツと共催)と毎年必ず人気スポーツの世界選手権を開催し、「スポーツツーリズム大国」フランスのレガシーを2030年の冬季フレンチアルプスオリンピックへとつなげていく。
モネの没後100年特別展も各地で開催
2026年は印象派の巨匠であるクロード・モネの没後100年にあたる記念すべき年であるため、彼に関連する多くのイベントも開催される。モネの作品は、少年時代の大半を過ごしたノルマンディー地方や、生誕の地でもあり成人後に移り住んだパリやパリ地方で描かれたものが多いため、ゆかりの地であるそれらの観光によるプレゼンテーションも行われた。
まずは没後100周年の特別展。モネが「睡蓮」を描いた家があるノルマンディー地方のジヴェルニー印象派美術館(3月27日~7月5日)を皮切りに、少年期の大半を過ごした同地方のル・アーヴル アンドレ・マルロー近代美術館(6月5日~9月27日)、彼のコレクションで知られるパリのマルモッタン・モネ美術館(9月24日~2027年1月31日)、同じくパリにあり印象派とポスト印象派の作品を集めたオランジェリー美術館(9月30日~2027年1月25日)などである。時期が重なって開催される特別展も多いため、一度の渡仏で2つの楽しめるのも魅力だろう。
さらにモネが描いた風景を訪れるハイキングなども積極的にプロモートしていく。これはフランス観光開発機構のウビュイCEOが基調講演で語った「サステナブルツーリズムやアグリツーリズムやスポーツツーリズムなどの付加価値のある旅行形態を積極的にアピールしていく」という姿勢にもつながるものだ。

彼の生家を訪れるツアーなども含め、合計100以上の「モネ没後100年」関連イベントがノルマンディー地方とパリ地方の各地で行われる。
2030年冬季五輪開催に向けてサステナブルツーリズムを充実
先ほども書いたように2030年には冬季フレンチアルプスオリンピックが開催される。それに向けたさまざまな取り組みも紹介されたが、特に興味深かったのが「サステナブルツーリズム」に関するものだ。
万博同様オリンピックでも開催年は大きな観光収入などが見込まれ経済が潤う。だが一方で作ったはいいがその後は維持費だけが毎年数億円レベルでかさむ競技施設など長期的に見て「負の遺産」となることもままある。
IOC(国際オリンピック委員会)からのサステイナブルに関する要求も非常にハイレベルなものだ。だがその高い要求水準は逆に言えば、宿泊施設や交通(たとえばガソリンではなく水素ガスを用いたバスの導入)、観光業に関わる人々のホスピタリティーの向上にもつながる。
つまりオリンピックを「一時(いっとき)だけ盛り上がるイベント」ではなく、「永続的な観光の質向上のためのチャンス」ととらえる。
そうした面も含めさまざまな意味で、観光大国であり続けるフランスの底力を感じたプレスカンファレンスだった。

次回は、「地方観光局」の局長・部長クラスのインタビューを中心にお届けする。
【取材協力】
フランス観光開発機構 www.france.fr/ja
プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地方観光局 www.provence-alpes-cotedazur.com
エールフランス航空 www.airfrance.co.jp
寄稿者(文・写真) 柳沢有紀夫(海外書き人クラブ代表)