松下産業は10月5日、茨城県笠間市稲田に文化発信拠点「LOGISTICS(ロジスティクス)」を開設する。日本を代表する白御影石「稲田石」の産地にある石材物流倉庫の一角を改修したギャラリー兼アーカイブ施設で、石材とその背景にある地質・風土・採石技術・地域文化を未来へ継承する拠点として運営する。開館を記念し、3組のデザイナーによる企画展「INTO THE STONE」を同日から開催。
なぜ今、石文化の拠点なのか
日本各地には長い歴史を持つ採石場が存在し、その土地固有の地質とともに独自の石文化が育まれてきた。しかし現在、国内で使用される石材の多くは海外産となり、日本各地の採石場や加工産業は減少傾向にある。石は暮らしの中に存在しながら、その背景にある産地や技術、文化に触れる機会は少なくなっている。
LOGISTICSは、そうした時代に日本の石文化をあらためて見つめ直すために企画された。石を単なる建築材料としてではなく、地球の歴史を内包した自然資源であり地域文化を伝える媒体として再認識し、その価値を建築家やデザイナー、地域住民、次世代へ継承することを目的とする。
施設が位置する笠間市稲田は日本有数の白御影石産地で、背後には現在も稼働する採石場が広がる。巨大な花崗岩の岩体が露出する風景は、この土地ならではの景観であり、来場者は展示作品だけでなく石が生まれる土地そのものを体験できる。都市部のギャラリーにはない独自の価値だという。
「石を運ぶ場所」から「石について考える場所」へ
LOGISTICSという名称は、現代的な物流だけでなく、その語源である「兵站」の考え方から着想を得ている。石という物質を運ぶ場所から、石に宿る文化や記憶を未来へ運ぶ場所へと、実際に使用されていた物流倉庫を改修して再生した。
空間デザインは、数多くの商業施設や文化施設を手がける飯島直樹氏が担当した。既存倉庫の構造を活かしながら、ホワイトキューブの開放性と日本的な空間感覚を融合させ、石と向き合うための静かな環境をつくり上げている。同施設は展示施設であると同時に、日本各地の石材を収集・保存・発信するアーカイブ施設でもあり、来場者は石材サンプルや仕上げ見本を実際に手に取りながら産地ごとの違いを体感できる。
開館記念展「INTO THE STONE」を開催
開館記念展「INTO THE STONE」には、AATISMO、DAIKI TADO、SUPER RATの3組が参加する。各デザイナーは日本各地の採石場や加工現場を訪れ、石そのものと向き合いながら制作した。展示では、スツールやテーブル、照明、洗面ボウルなど、石という素材の新たな可能性を探求した作品群を紹介する。展覧会タイトルには「石を理解するのではなく、石の中へ入り込むように向き合う」という意味が込められている。
オープンに先立ち、10月2、3日には建築・デザイン・アート・メディア関係者を対象とした内覧会を実施する。施設見学に加え、参加デザイナーによるプレゼンテーショントークも予定している。
松下産業は1939年創業の石材専門企業で、天然石の調達から加工、販売、施工、メンテナンスまでを一貫して手がけている。東京・大阪・福岡・仙台にショールーム「STONES」を展開するなど石文化の発信活動を続けており、LOGISTICSはその活動をさらに発展させる新たな拠点となる。施設は茨城県笠間市稲田3888-4に位置し、面積は180平方メートル。