恋路観光バスのグループ企業であるスズ交通(石川県珠洲市)は9月30日、珠洲市中心部と金沢駅を往来する長距離相乗りタクシーの運行を始めた。国土交通省北陸信越運輸局への報告状況に基づくと、石川・富山・福井の北陸3県では初の相乗りタクシーとなる。能登半島の先端に位置する珠洲と金沢の間を乗り継ぎなしに直行でき、自動車交通が主である奥能登地域に新たな公共交通の選択肢が加わる。
1日1往復、乗客が増えるほど割安に
運行は1日1往復を基本とし、珠洲市のすずなり館を午前5時30分、金沢駅西口タクシー乗場を午前9時に出発する。完全予約制で、ホームページ経由の予約を基本とし、アクセスできない利用者には電話予約も受け付ける。珠洲〜金沢間の所要時間はトイレ休憩を含めて片道3時間で、途中、金沢医科大学病院(石川県河北郡内灘町)での乗降も可能だ。
料金は、スズ交通が届け出た特定大型車の時間制運賃に基づく片道3万7,500円を、乗車人数で按分する「割り勘」方式とする。車両の乗車定員は運転手を除き9人で、乗車人数が増えるほど1人あたりの料金が安くなり、9人の場合は1人あたり4,167円となる。便数は、利用状況や市場ニーズを踏まえて柔軟に対応する予定だ。
住民の声を起点に、公的資金に頼らない運営
事業開始の経緯は、既存の広域基幹交通による大量輸送の範囲外にある運行時刻などに関する地域住民の声に、恋路観光バスが耳を傾けたことから始まった。課題解決に向けて国土交通省や石川県、珠洲市などと協議を重ね、既存の広域基幹交通を補完し、地域住民に加え観光客の移動にも対応する相乗りタクシーとしてサービスを設計した。
相乗りタクシー制度は、2018年の実証実験を経て2021年に制度化されたが、地方での導入事例はまだ限定的だ。業界ではIT事業者が配車アプリを開発して地方の事業者と協働するケースが多いが、同事業では地方の自動車交通事業者が予約受付・集金・旅客運送を一貫して行う。運賃への公的資金の充当を前提とせず、民間企業が自立的に運営するビジネスモデルを構築した。予約システムを含むホームページ構築などの初期費用は、観光庁の補助事業に採択された。令和6年能登半島地震後に事業承継で経営陣が刷新されて以降、スズ交通にとって初の新事業となる。
観光客の分散と能登の人流回復へ
スズ交通は、同サービスにより金沢を訪れる観光客の一部を能登方面へ誘導することで、観光客の地域的な分散を促すとともに、地域住民の移動利便性向上と能登半島への人流回復を目指す。あわせて、石川県内での観光客の滞在期間を延ばし、地域経済の回復・発展に寄与したいとしている。
問い合わせは相乗りタクシー広報担当(専用電話0768-84-5076)へ。