国土交通省は10月5日、令和8年度「都市景観大賞」の受賞地区・活動を発表した。大賞(国土交通大臣賞)には、都市空間部門で「長野県立美術館・長野市城山公園周辺地区」(長野県長野市)、景観まちづくり活動・学習部門で「住民有志の発意による100年後も語り継がれる風景づくり-bandpark 番所鼻自然公園リ・デザイン-」(鹿児島県南九州市)を選出した。
都市景観大賞は、「都市景観の日」実行委員会が1991年度から実施。良好な都市景観を形成する地区や、地域の景観に関する活動を表彰し、地域活性化につながる取り組みの普及を図っている。今年度は都市空間部門で5地区、景観まちづくり活動・学習部門で4活動が選定された。
善光寺、美術館、公園を一体的に整備
都市空間部門で大賞を受賞した「長野県立美術館・長野市城山公園周辺地区」は、国宝・善光寺に隣接する城山公園内の美術館建て替えを契機に、周辺を一体的に再整備した。
長野県立美術館は「ランドスケープ・ミュージアム」をコンセプトに、周辺景観とのつながりを重視。建物の高さを抑えるとともに、展示室以外の共用部を無料で開放し、屋上広場からは善光寺や信濃の山並みを望めるようにした。また、歩道橋の撤去や周辺歩道の整備なども行い、善光寺と美術館、公園をつなぐ新たな景観を形成した。
計画にあたっては県民リレーワークショップなどを実施。審査では、公共施設の建て替えを契機に、公園や周辺地域との関係まで含めて新たな景観を生み出した点が評価された。
都市空間部門ではこのほか、「御堂筋(なんば駅前~長堀通)地区」(大阪市)が「都市景観の日」実行委員会会長賞、「川崎市役所広場地区」(川崎市)が公益財団法人都市づくりパブリックデザインセンター理事長賞を受賞。「双葉駅西住宅地区」(福島県双葉町)と「“海と共に生きる”観光防災まちづくりを進める 伊豆市土肥地区」(静岡県伊豆市)が奨励賞に選ばれた。
住民主体で自然公園を再生、来訪者20万人へ
景観まちづくり活動・学習部門の大賞となったのは、鹿児島県南九州市の「bandpark 番所鼻自然公園リ・デザイン」。東シナ海や開聞岳を望む番所鼻自然公園を舞台に、住民有志が主体となって景観の再生と公園運営に取り組んできた。
公園内に放置されていた民間建物の撤去運動をきっかけに、地域の自然景観を生かした公園づくりへ発展。50回を超える住民参加の社会実験を重ね、公園全体のリニューアルや、公設民営のカフェ、ツリーキャンプ場などを整備した。施設収益の5%を公園管理費に還元する仕組みも構築している。
こうした取り組みにより、公園の来訪者数は2010年の1万5000人から2024年には20万人に増加。審査では、住民主体で「事業・空間・仕組み」を連動させ、自然景観の保全だけでなく、観光や地域経済の循環までつなげた点が評価された。
新潟、立川、水戸の活動も選定
景観まちづくり活動・学習部門では、「地域の歴史資源を活用した多世代景観学習の発展的継続」(新潟市)と「アートと歩む景観まちづくり」(東京都立川市)が会長賞を受賞した。
新潟市では、旧小澤家住宅を核に大学と地域住民が連携し、景観学習や歴史的建造物の活用を展開。立川市では、ファーレ立川の109点のパブリックアートを30年以上にわたって一つも欠くことなく維持し、小学校の鑑賞教室などを通じて次世代への継承にも取り組んできた。
また、「水戸宿泊交流場を拠点とした空き家・空き店舗活用による次世代の景観まちづくり活動」(水戸市)が都市づくりパブリックデザインセンター理事長賞に選ばれた。
審査委員会は今年度の活動について、地域にある価値を住民自身が見つけ、磨き直し、新たな担い手を迎えながら次世代へつなぐ取り組みが見られたと評価。人口減少や少子高齢化が進む中、景観づくりを通じて「地域の未来を自らつくり出していく」動きが広がっていると総括した。