古くから、富士山を愛でることができる坂が東京都内には方々に存在した。23区内には17か所の富士見坂があったと言われる。そして、国土交通省関東地方整備局が2005年に「関東の富士見百景(128景)」を選定。その53番目に都内7か所が登録されている。
建物がどんどん天に向かって・・・
高層ビルが立ち並ぶようになると、富士山が見えなくなることがしばしば・・・
ここ、日暮里富士見坂も2013年、富士山を塞ぐように、高層ビルが建築された。かなりの署名を集め建築反対運動があったと記憶している。しかし、ビルは予定通り建築され、富士山は見えなくなった。
毎年1月下旬と11月中下旬に、ちょうど太陽が富士山の稜線に沈む「ダイヤモンド富士」となる。そのため、この時期は夕暮れ時になると、数多くのカメラマンが出没する名所であった。しかし、今では富士山を見ることができない。そして、観光客も少なくなったと聞く。
また、写真を撮りに来た人々がマンションの敷地に無断で入り込むというオーバーツーリズムも起こり、地域住民との軋轢も生まれていた。
観光地は、その人気を持続できない
観光地は、
・これまで見えていたものが見えなくなる
・有名な食事処がなくなる
・新しい道路ができて、交通量が激減する
といったことによって、大きく変化する。

話が少しずれるが、周遊型バスツアーが全盛時の北海道旅行は4泊5日のコースが主流だった。しかし、高速道路網が完備されたことによって2泊3日に短縮。その結果、この二日間の短縮によって、コース選定から外れる宿泊施設や食事施設が生まれ、その経営を左右されることも数多く見受けられた。
昨今、SNSが発達し個人旅行シフトが激しくなっている。その中でも、ロングスパンで好まれるモノ・コトは「自然環境」と言われる。例えば、季節の花々は時期になると咲き乱れるモノ。また、晴れた日の夕景はタイミングを計ってみることができるコトである。
誰もが「映える」景観を求め、情報発信するレポーターになる。そして、それを見た人々が、リピーターとなって、また訪れるのである。
変化に対応することが、未来につながる

ダイヤモンド富士に!
日暮里富士見坂は、町歩きのメッカと言われる「谷根千」に隣接する高台にある。普段は、閑静な住宅街。また、この富士見坂や近くの諏方神社が、テレビドラマのロケ地として、何度となく、その姿を見るようになった。「昭和」を彷彿する石畳と煉瓦造りの壁、富士山は見ることができなくなったが、新たな仕掛けが次につながる観光コンテンツを生み出している。
因みに、23区内で富士山が見える唯一の富士見坂は、目黒駅から恵比寿駅に向かう途中にあるらしい。景観を変えることなく、末永く富士山を愛でることができるように望みたい。
取材・撮影 2013年1月1日、2024年2月9日
(これまでの特集記事は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=8
取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長