学び・つながる観光産業メディア

伝統工芸品の海外展開や地域振興事例を学ぶ、地域連携研究所が第5回大会を北海道・釧路で開催

コメント

 “地域間交流拡大”を強力に推し進め、地域の活性化に向けた課題解決に取り組む地域連携研究所(濵田健一郎理事長)は6月29日、「第5回地域連携研究所大会 in ひがし北海道・くしろ」を北海道釧路市の釧路市観光国際交流センターで開いた。伝統工芸品「備前焼(岡山県備前市)・大館曲げわっぱ(秋田県大館市)」を出展作品として、4月16~28日にイタリア・ミラノで開かれた欧州三大家具見本市の一つ「ミラノサローネ」の中で最大級の展示会「フォーリサローネ」での出展参加報告や、1月1日に発生した能登半島地震からの北陸復興支援における意見交換のほか、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長による特別講演などを実施。全国から国・自治体や観光関係者ら約500人が出席し、地域振興の取り組みを学んだ。

地域連携研究所の浅見茂専務理事

 同大会では冒頭、地域連携研究所の浅見茂専務理事が参加者を紹介。主催者あいさつでは、地域連携研究所企業会員制度共同代表で日本航空の清水新一郎副会長が「地域連携研究所は、2021年に北前船交流拡大機構の兄弟法人として設立された。北前船の寄港地を限定することなく、範囲は広く設けられており、地域の発展への志を同じくする人たちが集っている。組織は、官民がそれぞれの強みや特性、アイデア、技術を提案する課題解決型のプラットフォームであり、話題となるインバウンドや地域の観光再生、ふるさと納税、地域の食などに相互理解を深めながら対応している。この取り組みを継続し、未来につなげていきたい」と展望を示した。また、釧路—羽田線が昨年に50周年を迎えたことに対して謝意を述べた。

地域連携研究所企業会員制度共同代表で日本航空の清水新一郎副会長

 来賓からは、観光庁参与(元観光庁長官)で地域連携研究所の田端浩特別顧問が「北前船寄港地フォーラム、そして地域連携研究所大会が初めて太平洋側で開かれた。北海道は、全てが札幌に集中しがちだが、道東地区の観光振興は今後において非常に重要であり、注目してもらいたい。私は、北方四島における墓参をはじめ、共同経済活動に力を入れてきた。問題を解決するには、もっと話題が道東に戻って来なければならない。地域連携は課題としてよく上がるが、北前船をきっかけとしたこの組織では、地域連携が進んでいる。活動の活発化が、地域振興の加速につながる」とあいさつした。また、日本と台湾の関係についても紹介。「8割以上がリピーター。例えば地域連携研究所主催で台湾訪問ツアーを展開することなどで相互交流が深まり、インバウンドのさらなる誘客につながるのではないか」と提案した。

観光庁参与(元観光庁長官)で地域連携研究所の田端浩特別顧問

 木下グループの木下直哉社長兼グループCEOは、「一昨日に帯広に入り、エクスカーションなどで地域を体験したが、いろいろな場所で多くの人にもてなしていただき感動した。北前船のつながりは、昨年の岡山大会では約400人が集まったが、今回は500人と拡大した。この勢いは続くだろう」と今後への期待を表した。このほか、観光業を支えるものとしてDXの正しい理解の必要性を説き、DXへのカスタマイズが効く企業として楽天を紹介した。

木下グループの木下直哉社長兼グループCEO

 新潟県の花角英世知事(代読:新潟県観光文化スポーツ部の前川翔副部長)は、「北前船の寄港地である佐渡の金山における世界遺産登録の実現に向けて全力で取り組んでいる。地域連携研究所においては、最新の取り組みを共有しながら、新たなエリア交流が創出される場となることを期待している」と話した。

新潟県観光文化スポーツ部の前川翔副部長

 MBSメディアホールディングス代表取締役で毎日放送の虫明洋一社長は、「ネットワークを作る上では、東京や大阪からの情報をただ地方が一方的に受け取る形が良くない。地域同士の連携が大切となる」と、連携の在り方を示した。毎日放送では、地域局同士が各地の良いものや文化を互いに取材して一緒に放送する試みを行っている。

MBSメディアホールディングス代表取締役で毎日放送の虫明洋一社長

北前船精神を世界に、地方の世界進出が伝統工芸品を次のステージへ

 大会は2部で構成。第1部では「ミラノフォーリサローネ」出展報告、「北陸復興支援について」をテーマとしたパネルディスカッションが行われた。出展報告では、岡山県備前市の𠮷村武司市長と秋田県大館市の福原淳嗣市長が登壇。2人の報告の前には、ミラノフォーリサローネの取り組みをまとめた動画が放映された。

会場で放映されたミラノフォーリサローネの様子を伝える動画

 𠮷村市長は、備前市の魅力として、1000年の歴史を持つ無釉薬の唯一無二の焼き物である備前焼のほか、日本最古の庶民のための教育施設である旧閑谷学校、カキ・フルーツ・水餃子といったグルメなどを紹介。一方、備前焼は近年において後継者育成が課題となっていることを明かした。課題の解消には作家の人たちに夢を持ってもらう大切さを説き、「伝統工芸品が世界に進出することで、他の伝統工芸品も広く知られるきっかけとなる。備前焼は次の1000年へとつなげられる」と世界展開の持続を誓った。また、ミラノフォーリサローネ出展を振り返り、「会場には約37万人もの人が来場した。大館市の曲げわっぱとの共同事業だったが、互いの伝統工芸の技術、北前船精神を世界に披露でき、多くの観客を魅了できた」と成果を披露した。今後は、フランスやドイツ、モナコなど、その他のヨーロッパ各地で開かれる展覧会に出展する予定。

岡山県備前市の𠮷村武司市長

 福原市長は、ミラノフォーリサローネで開いた秋田犬セミナーについて報告。「昨年11月は忠犬ハチ公生誕100年の節目の年だったが、会場にはヨーロッパにおける秋田犬に関する仲間が集まった。ヨーロッパでは秋田犬を飼育することがステータスとなっており、改めてポテンシャルに感動した。また、会場では備前市と共に日本の文化、伝統として、備前焼は大地の恵みと匠、大館の曲げわっぱは森のめぐみと匠という2つの恵みをコンセプトに切り込んだ。特にイタリア・ミラノ大学に集まった若い世代の心をつかむことに成功し、将来日本に訪れてもらうきっかけとなった」と未来を見据えた。また、今後における伝統工芸品の推進に向けて、「KOUGEIツーリズム」の推進の必要性を唱え、「地方が直接世界に打って出ることで、ふるさとが先人から受け継ぐ自信と誇りが蘇り、日本の伝統工芸品を次のステージへと押し上がる」と会場に呼び掛けた。

秋田県大館市の福原淳嗣市長

日本発「KOUGEIツーリズム」等の取り組みが復興支援に

 パネルディスカッション(ファシリテーターは、カジノ管理委員会事務局の出口岳人財務監督課長)では、観光庁の竹内大一郎観光資源課長のほか、ジェイアール東日本企画の赤石良治社長、日本政策投資銀行企業投資第3部の西村俊輔地域投資担当課長、内閣府地域活性化伝道師で跡見学園女子大学の篠原靖准教授が登壇した。

 出口財務監督課長はまず、ミラノフォーリサローネの出展について、「ヨーロッパに新しい道を開いた意味では、大きな出来事だった。継続した取り組み、仕組みを整える必要がある」と振り返った。北陸復興支援に向けては、「伝統工芸による新たな誘客手法として『KOUGEIツーリズム』ということの見解が提言されており、伝統工芸品を通じたふるさと納税や体験を通じた支援などが考えられる。復興に向けては、伝統工芸、日本の食文化といった大事なものを支援していくことが大切だ」と語った。

ファシリテーターを務めた、カジノ管理委員会事務局の出口岳人財務監督課長

 西村地域投資担当課長は、ミラノフォーリサローネの出展について触れ、「現地で備前市と大館市の雄姿を目に焼き付けたが、海外展開の成功を単発で終わらせずに次の新しい伝統工芸の展開につなげてほしい」と要望した。また、今後の展開において大事なこととして、①世界の中でしっかりと見せていくこと②見せるだけでなく、背後に隠れているストーリーや歴史背景などをセットで売ること③強烈なリーダーシップのもと活動を行うこと—を挙げた。また、活動成果の横展開により、能登半島の伝統工芸品の世界展開、北陸復興支援につながることを期待した。

日本政策投資銀行企業投資第3部の西村俊輔地域投資担当課長

 赤石社長は、震災復興における3つの側面を語った。1つ目として「モビリティの確保」について説明。「今回は痛ましい地震が発生した一方で北陸新幹線の敦賀延伸が控えていた。インフラが痛む中で鉄道の工事をどうするかは問題だったが、地元の人や関係者の努力があり、無事にダイヤ改正ができた。震災時のモビリティの確保については、陸路、海路、空路を含めて、このような事態の際にどう合意形成がなされるかが重要」と話した。2つ目として「観光」での側面を挙げ、「難しい側面もあるが、震災時には、国や行政、企業が震災復興と観光を共に進めることが必要であり、地域の力、国力を高めることにつながる」と、東日本大震災時における事例も交えながら、同時並行で進める努力の大切さを訴えた。3つ目には、購買による活性化を挙げ、「東京都内においてもアンテナショップで地域の産品を購入できる」と参加者に支援を呼び掛けた。また、10月1日から始まるJR6社による北陸3県でのデスティネーションキャンペーン(DC)について紹介した。

ジェイアール東日本企画の赤石良治社長

 篠原准教授は、6月15日から視察で訪れた能登半島における被災地の現状について紹介。復旧の現状については、「水道は通り、生活の基礎ができたところだが、一番悩んでいることとして下水道の問題がある。街においては、輪島では半年たった今でも焼け野原のような状態が続いている」と未だインフラが整わなず、復旧もままらならない状況を説明した。

かつて輪島朝市でにぎわっていた場所

 今後の北陸の復興に向けては、「輪島には室町時代からの技法で現在まで伝統が引き継がれている輪島塗り、震源地の珠洲市においては、珠洲焼がある。作家や職人の活動には大きな影響があり、伝統の継承の危機にあるが、輪島にある工房に入った際は『輪島頑張れ、命あれば道はある』という言葉が掲げられていた。伝統をつなげたいという思いは、皆さまとも変わらない」と述べ、地域連携研究所として共に考えていくべきだと提言した。また、会場に集う観光庁に向けて助成策などでの支援を求めた。

内閣府地域活性化伝道師で跡見学園女子大学の篠原靖准教授

 竹内観光資源課長は、ミラノフォーリサローネの取り組みについて、「曲げわっぱと備前焼が世界レベルとなったことは意味深い。現地で工芸品に触れた人が、実際に生産地に足を運ぶことにつながれば」と期待した。急増するインバウンドへの課題についても言及。課題として、3大都市圏に7割の外国人旅行客が集まる現状がある「地方誘客」、為替水準や物価の高騰を鑑みても伸び代がある「消費額」の2つを挙げた。課題解決に向けた一つとして、歴史や自然、食文化、職人の技を体験するなど、「コト消費」につながる新たなコンテンツの造成への取り組み支援を行っていることを紹介した。また、注目していることとして、北海道の中で多く取り組みが進むアドベンチャーツーリズム、地域の食文化と共に生産者との触れ合いや、背景にある歴史・文化を学ぶガストロノミーツーリズムを挙げた。北陸の復興に向けては、「アドベンチャーツーリズム、ガストロノミーツーリズムは共に欧米発祥のものである。一方、今話題となる『KOUGEIツーリズム』は日本発祥であり、世界に売っていける。職人との触れ合い、製作体験なども含めて伝統工芸品と地域との関係を伝えることが、伝統工芸品を守り、地域のブランディング化、リピーター獲得、地域の支援につながる」と話した。

観光庁の竹内大一郎観光資源課長

日本の食・伝統工芸品のブランド価値を向上させ、世界につなげる

 パネルディスカッションの最後、篠原准教授が総括と共に、今年度以降における地域連携研究所の活動あり方を説いた。日本全国に眠る地域の食文化の再度見直しについて、「その土地の生活文化から成り立つ物語をシナリオにする必要がある。観光資源として活用できる様にするためにも改めて、行政、DMO、民間事業者が一丸となり、個性ある新たに地域食のブランド化をインバウンドを視野に観光資源として新たな展開を行わなければならない」と考えを示した。また、「実現は決して簡単で道ではないが、既にパリ大会でも同行した全日本食学会理事長、京都祇園、菊乃井の村田社長、敦賀の奥井海生堂の奥井隆社長を始めとする日本を代表する食のプロたちが会員の地域の食を高度化を支援をいただくチームが既に結成されている。全国の会員の地域の食のブランド価値を向上させ日本文化とともに世界に発信していくことを目指してほしい」と食の高度化、発信の重要性を訴えた。

 伝統工芸品の今後についても言及。「日本全国に伝わる伝統工芸品の現状は、新たな販路開拓が難しく、室町時代から続く輪島塗を例にしても後継者の高齢化、被災による離職者が絶たない。危機的な状態であることを鑑みれば、政府として再度歴史的工芸品の価値を芸術性の高さ、込められた職人な魂を戦略的にしっかりと世界に発信していくことが重要となる。そして『KOUGEIツーリズム』を、観光庁の新しいコンテンツとして位置付けながら、世界の富裕層への製品の輸出と、富裕層観光客の拡大の双方につなげていくことをぜひ確立したい」と方向性を示した。

 終わりに篠原准教授は、「以上の2項目を内閣官房を始めとする各省庁、そして特に外務省欧州連合EU代表部で日本文化を世界に展開する活動を精力的に行っている二宮悦郎参事官の尽力にも期待している。少子高齢化で苦戦している地域の方々に小さな経済がしっかり回る様に本地域連携研究所の会員の皆さんとともに新たなスタートを切ってまいりたい」と、来場者に取り組みへのさらなる参画を呼び掛けた。

パネルディスカッションでは、地域振興につながるさまざまな意見が交わされた

ふるさと納税、AIなど、さまざまな取り組みが地域振興に

 第2部では、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が「楽天が考えるイノベーション戦略」をテーマに特別講演。冒頭、三木谷社長は総務省が、ふるさと納税で仲介サイトがポイントを付与することを2025年10月から禁止すると発表したことについて触れ、「推定1兆円となったふるさと納税が、大きく縮小してしまう」と再考を依頼すると共に、反対するネット署名への協力を呼び掛けた。講演では、楽天グループの歩みの紹介や、楽天モバイル事業による国民の携帯電話料金負担軽減などの実績を強調した。また、今後における楽天グループの挑戦として、①楽天市場で日本を元気に②Ai-nization(AIを活用して人々と社会をエンパワーメントする)―に向けた考えや取り組みを披露した。

楽天グループの三木谷浩史会長兼社長

 各種報告では、自治体や団体・企業から5人が登壇して、地域振興などの取り組みを紹介した。北海道白糠町の棚野孝夫町長は、「新たなまちづくりと挑戦」をテーマに、生産者の所得向上に向けて行ってきたこれまでの取り組みを解説した。町の経済的自立に向けて、地方公共団体として初めて楽天市場にネットショップを開設したこと、ふるさと納税を推進することで、昨年度には167億円の寄付が寄せられたことを紹介。棚野町長は、「他地域からの税源移譲が新たなまちづくりへのチャレンジへとつながった」と胸を張り、今後の新たなまちづくりへのチャレンジとして、①第1次産業の再興と振興②町民の健康づくり③教育(意識改革)―への取り組みを推進するほか、食と食材をキーワードにした「しらぬかブランド」を確立することを宣言した。 

北海道白糠町の棚野孝夫町長

 日本スポーツ政策推進機構の河野一郎理事長は「日本スポーツ政策推進機構の目指すもの」を題に、日本スポーツ会議における提言や、NSPCスポーツ政策研究所におけるスポーツ政策推進プロジェクト、スポーツ政策推進人材育成事業の説明などを行った。河野理事長は、アスリートについて「地域のウェルビーイングを創るクリエイターである」と伝え、取り組みとして倒木撤去などを行う「コンディショニング×森林保護」、田植えを通して体を動かし、食の大切さを学ぶ「コンディショニング×農作業」といった取り組みを紹介した。

日本スポーツ政策推進機構の河野一郎理事長

 内閣官房国際博覧会推進本部の長崎敏志事務局次長は「EXPO2025大阪・関西万博に向けて~国際交流と青少年交流」をテーマに、2025年4月13日に大阪・夢洲で開幕する大阪・関西万博の概要や会場の整備状況、各国パビリオンの展示についてなどを紹介した。同万博には現在、約160カ国、8国際機関が参加表明をしている。参加各国は、独自のデザインを凝らした特徴的なパビリオンを建設する予定で、例として「伝統文化と最新技術の融合」「『未来社会』や『循環経済』」を体験できるパビリオンを紹介した。また、未来社会の体験イメージを披露。会場では新たなモビリティ体験として「空飛ぶクルマ」「水素燃料電池船」「来場者移動EVバス」が走り、同時通訳システムを使いながら、世界のこどもたちが言葉の壁を超えて語り合い、触れ合うイベントが開催される。長崎事務局次長は、「交流を深めるためにも、観光などさまざまな点で地域と万博の連携を進めていきたい」と述べた。工事については、6月中旬において工事量の70%が完成していることを伝えた。

内閣官房国際博覧会推進本部の長崎敏志事務局次長

 フォーシーズの清水俊明専務と光岡健世取締役専務執行役員は「地産地消ピザによるピザーラの地域振興」を題に、フォーシーズやピザーラの歩みのほか、「地産地消ピザプロジェクト」について紹介した。地産地消プロジェクトは、地域の資源・特性を活かしたピザ開発・プロモーションを行い地域経済に貢献する活動。地方自治体・団体を含め28道府県で活動が行われている。プロジェクトは、①地元食材の消費促進②地域振興への貢献③地域間交流とネットワーク構築—の3つを目的として掲げている。光岡取締役は「今回は北前船の寄港地、食文化を学んだ。北前船のその有志でゆかりのある土地の食材を使ったピザを、今回を機に取り組んでいきたい」と宣言した。 

フォーシーズの清水俊明専務
フォーシーズの光岡健世取締役専務執行役員

 新潟県佐渡市の渡辺竜五市長は、「江戸幕府の財政を支えた佐渡の金銀山~北前船と金の道~」をテーマに、佐渡金銀山の世界遺産としての価値、算出された金銀を江戸まで運んだ「金の道」のストーリーなどを紹介した。佐渡では、採鉱から小判の製造まで一連の行程が全て行われ、金は「硫黄分銀法」「焼金法」の組み合わせにより99.54%まで純度が高められていた。渡辺市長は、「手工業による金生産システムの最高到達点に達し、世界最大級・最高品質の金を生産していた」と述べた。佐渡金山は天領となる一方、地域には人が集い、薪能や鬼太鼓といった伝統芸能が広まり、今でも根付いている。地域は、北前船や奉行・役人の往来による文化・経済的な影響も多大に受けており、北前船の寄港地として繁栄した町並みは、重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。渡辺市長は今後のまちづくりとして、「歴史・文化を活用したリゾート化を進め、美しい風景の島を未来に残していく」と決意を述べた。 

新潟県佐渡市の渡辺竜五市長

 閉会に際しては、ANA総合研究所の森健明副社長が「地域、地方が直接海外に出ていくことの重要性の共有ができた。地域をつなぐには、ふるさと納税やデジタルネットワークデバイスを通じて支えることも大切だ。地域の文化、自然芸術、伝統工芸品やエンターテイメントなど、地方の魅力を輝かせるコンテンツは既にあるが、各地域がそれぞれ活動するだけでなく、地域が連携を強固にしながら取り組んでいかなけばならない」と呼び掛けた。

ANA総合研究所の森健明副社長

 次回の大会は、11月22、23日に北陸(石川県加賀市、福井県)で開かれる。また、2025年度は秋に長野で開かれる予定。

取材 ツーリズムメディアサービス編集部

/
/

会員登録をして記事にコメントをしてみましょう

おすすめ記事

/
/
/
/
/