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「秋の夜長・出発(たびだち)の時・福島市旧広瀬座」六文銭‘09 ~音楽のある東北 第18回 2016年10月29日~

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 4年目を迎えた音楽(おと)のある東北もこの年最後のコンサートとなりました。舞台は、昨年も開催した福島市の旧広瀬座です。オリンピックも近づいてきたために、隣接するあずま球場は、改修工事中とお聞きしました。そして、アーティストは、初登場の六文銭‘09です。

陽は傾いて、今宵の宴は始まる
陽は傾いて、今宵の宴は始まる

日本語の素晴らしさを理解してもらうために

 六文銭(ろくもんせん)は、小室等さんが英語の歌全盛期に疑問を感じて、1968年に「日本語主体の音楽をやりたい」と結成した音楽ユニットです。「雨が空から降れば」や上條恒彦さんと歌った「出発(たびだち)の歌」を、その詩の世界に若者たちが共感を示し大ヒットしました。しかし、短期間でメンバーが頻繁に入れ替わり、1972年に解散となりました。

 そのグループ名は、三途の川の渡し賃が六文銭であることに由来とされています。しかし、小室さんが、サマセット・モーム著「月と六ペンス」を「六文銭」と訳したとも言われています。後年のインタビューによれば、偶然見かけた居酒屋の看板「六文銭」に着想を得、「月と六ペンス」にひっかけて命名したと語っています。

 前述の「出発の歌」は、1971年、上條恒彦と共演した曲で、三重県の合歓の郷で行われた「ポピュラーソング・フェステバル'71」でグランプリ受賞。次いで第2回世界歌謡祭でグランプリを獲得しています。

 時を経て、2009年4月に小室さんの娘であるこむろゆいさんが加入。「六文銭'09」にユニット名を改め、今日、このステージに立つことになりました。

ミュージシャンが自らのちからを信じて・・・

 ご存じのとおり、小室等さんは、音楽業界においては、シンガーが詩と曲を自ら作り、アレンジもすると言う先駆者です。1975年にミュージシャンが自らレコード会社を設立するという社会的反響を呼んだ「フォーライフレコード」の初代社長を務めています。

 そのメンバーは、吉田拓郎・井上陽水・泉谷しげる(敬称略)と、当時のフォークソングのビッグアーティスト。音楽という権利ビジネスをミュージシャンの手に取り戻す端緒でした。僕たちにとってもインパクトの大きな出来事であったと思い出します。

今宵は、芝居小屋もにぎやかに・・・

 さて、広瀬座の詳細については、昨年も開催していますので、第14回の宇崎竜童さんの回をお読みいただくとして、10月下旬は、日が暮れるのが早く、お客さまが芝居小屋をくぐる時間には、既に陽は傾き、少しばかり、肌寒さも感じました。

(第14回はこちらから) https://tms-media.jp/posts/32595/

 場内の設えは、大きく変えることはできません。桟敷に敷かれた座布団は、そのままです。

マイクの数が今宵は違います
マイクの数が今宵は違います

 しかし、今宵は、マイクの数が違います。男女混合のコーラスは、天まで届くかのような歌声。昔の歌は、日本語の素晴らしさを語り上げるものが少なくありません。それ故、時間を超越して、歌い継がれるのかもしれません。カラオケが全盛の時代においても、僕たちの世代は、歌詞を見ずとも歌うことができる。まさしく、フォーク喫茶にいるような錯覚に陥りました。

 「詩に曲をつける」時代から「曲に詩を乗せる」時代への変化。いずれにしても、音楽が僕たちに元気を与えてくれることには変わりはないです。しかし、「詩」が心の中に沁み込んでいくのは、いつの世も変わりなく、音楽の持つ力なのではないでしょうか。

~♬ 乾いた空を 見上げているのは誰だ
   おまえの目に 焼きついたものは化石の街
   愛の形が壊れた時に
   残されたものは 出発(たびだち)の歌
   さあ 今
   銀河の向こうに飛んでゆけ・・・

   ・・・さあ今 宇宙に さあ今 未来に 飛んでゆけ・・・ ♪~

出発(たびだち)の歌~上條恒彦と六文銭

 エンディングは、会場が一体となって、この歌を大合唱していました。やはり、音楽の力は、素晴らしいものです。

音楽・・・それは永遠に

 音楽のある東北は、翌2017年に2回開催されました。全部で20回の軌跡です。しかしながら、僕のレポートは、今回が最終回となります。

 何故、と思われますが、それは一緒に歩んできた社長が、最終年度には東北の地から離れてしまったことです。そのため、次は、新天地での新たなコンサートを作ろうと約束しました。その場所は、僕の出身地である北九州の地にしたい。後日、仙台の居酒屋で語り合ったのでした。

 そして、舞台の灯りも消え、今宵は、最終の新幹線の出発時間まで、福島駅前の居酒屋で盃を傾けました。疲れが出たのでしょうか。列車では、爆睡だったことは言うまでもありませんが・・・。

(おわり)

コーラスラインも終焉に
コーラスラインも終焉に

(これまでの寄稿は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=33

(キャピタルヴィレッジのHPはこちらから) https://www.capital-village.co.jp/

寄稿者 荒木伸泰(あらき・のぶやす) 株式会社キャピタルヴィレッジ 代表取締役

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