朝陽と四季(四国の夜明け)
佐田岬半島は、四国西端にあって西南西に細長く伸びた日本一細長い半島だ。八幡浜市内からだと国道197号をクルマで走って佐田岬燈台の駐車場までが約50kmで1時間少々。
北側は瀬戸内海、南側は宇和海というようにこの半島が二つの海に分断している。対岸の大分県との間は豊後水道と言われ、佐田岬半島の向かい側の関崎との間は約14kmでこれを豊予海峡という。
四国は東の紀伊水道、西の豊後水道、北西側の関門海峡が瀬戸内海でつながっており、自然のいとなみの宝庫と言えるのだ。
夏至になると
写真①は今年(2024年)6月19日の日の出後の午前5時46分に権現山展望台から撮影したもの。伊予灘海域から佐田岬半島沿いに蒸気霧が帯のように半島を越え宇和海へと吸い込まれている。写真中央の朝陽の下方には金山出石寺(標高812m)が見えている。そして、その脇の山腹にはわずかに霊峰石鎚の山頂が見える。
佐田岬半島は、藩政時代は宇和島藩、現在は伊方町である。また、この街のキャッチフレーズの一つでもある「二つの海が見える町」は、正にこの場所から見える景色をそのまま表現したものである。そのため、訪れた際には必ず立ち寄って写メを撮っておきたいオススメスポットだ。
併せて②の春の絶景と③の夏の絶景を一緒に観てみると、この佐田岬半島が如何に素晴らしいところであるか。中央構造線沿いにあることも含めて地球の鼓動を感じる場所でもあるのだ。
夕陽と豊後水道(四国の夕陽)
写真④と⑤は、佐田岬半島では一番高い伽藍山(標高413.6m)から観た佐田岬半島先端部分である。約50kmに及ぶ細長い半島だがほぼ東西に延びていることから朝陽と夕陽を観ることができる。
撮影に携わるものとしていつも考えているのが「春分」と「夏至」と「秋分」と「冬至」の日の出と日の入りの場所と時間、同じように満月もしかりだ。
写真①では夏至近くの日の出の時間と位置を確認。写真⑤では春分前後の夕陽の時間と場所を確認できた。特に⑤では沈む太陽の位置がほぼ西であるから半島が西南西に延びていることを確認することができる。そして、かすんでいない季節なら対岸の佐賀関の煙突や大分の海岸風景を視界に収めることができる。
自然と対峙して
大自然を舞台とした風景写真と地域のいとなみなどを撮影する場合には、太陽や月の動きに併せて色々なことができあがっているため。そのため、これらを写真でしっかり表現し感じていただけるような撮影を心がけることがとても重要なことになってくる。
『佐田岬ドラマ』とは、大自然のいとなみとその恩恵を受けて、この半島に生きる人々の生き方そのものである。それをファインダー越しに見つめ多くの方々にご覧いただくことが、この半島にとっては大切なことではないかと、確信めいたものを抱きながら撮影に臨んでいる。
次回は「メロディーライン」です。伊予灘からの蒸気霧の動きについては別の章でその仕組みなどを書かせていただくことにします。
(つづく)
(これまでの寄稿は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=14
寄稿者 河野達郎(こうの・たつろう) 街づくり写真家 日本風景写真家協会会員