真言宗豊山派総本山の奈良・長谷寺は、4月下旬から5月上旬にかけて、7,000株以上の牡丹が満開となる。花の御寺と言われる大和国と伊勢国を結ぶ初瀬街道沿いの名刹。その創建は、奈良時代と言われる。そして、平安時代には観音霊場として貴族の信仰を集めた。かつては、東大寺(華厳宗)や興福寺(法相宗)の末寺だった。しかし、16世紀初頭に真言宗に改宗し、現在に至っている。
全国には、長谷寺と名乗る寺院が約240か所もある。特に、鎌倉の長谷寺と区別をするため、大和国長谷寺とか総本山長谷寺と称している。
さて、広大な境内は、初瀬山の山麓から中腹にかけて伽藍が配置されている。そして、入り口の仁王門から本堂まで、399段の屋根付きの登廊(のぼりろう)がその伽藍の荘厳さを増す。また、大晦日には登廊に万燈が灯される。
本堂は、京都の清水寺同様に懸造(かけづくり)だ。そのため、舞台から見下ろすと、境内地の広さが、この寺院の歴史の流れを映し出している。
奈良県内は、東大寺や興福寺、薬師寺や法隆寺などのメジャーな観光寺院だけでなく、奥が深い神社仏閣も多い。そのような場所をゆっくりと巡ることが、奈良大和路の本来の観光の姿と言える。
(2015.08.25.撮影)
(これまでの特集記事は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=8
取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長