里芋は、長期貯蔵が難しいとされる。そのため、雪深くなる冬を前に、親しい仲間内で持ち寄り、川原で会食を楽しんだのが「芋煮会」の始まり。山形県が発祥の地と言われる。そして、県内各地でその味をしのぎ合っている。海に面した庄内地方は味噌味、内陸は醤油味と味付けが変わるのも珍しい。
秋の風物詩となった「日本一の芋煮会」は、1989年に始まった。大鍋「鍋太郎」で作られる芋煮は、その大きさや材料などがギネス級であり、提供数が記録を誇っている。直径6mの大鍋に、里芋3t、醤油700L、水6t、酒50升、山形牛肉1.2t、こんにゃく3,500枚、砂糖200kg、ネギ3,500本を放り込む。そして、クレーンを使って一気に調理する。その数、有に3万食分が提供されるのだ。
さて、9月上中旬の日曜日、馬見ヶ崎川の河川敷は、芋煮を求めて訪れる人々でいっぱいになる。そのため、かなり遠くからもその匂いが漂い、秋の収穫前の一大イベントで、町中がお祭り騒ぎとなる。
「食」は、誰もが好む観光コンテンツだ。また、無名の隠れた料理も、これから脚光を浴び人気を博すことも考えられる。この芋煮会は、野外イベントとしての成功事例である。食べることは、奥が深く、生きる上にも大切なものだ。その意味からも、「食」コンテンツは、化ける可能性を秘めている。
(2013.09.01.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長