「暑さ寒さも彼岸まで」ということわざ通り、彼岸花は季節を分ける花だ。別名を曼殊沙華、サンスクリット語で「天界に咲く花」という意味らしい。血のような朱色の群生は、命の鼓動が聞こえるように咲き誇る。
関東では埼玉県日高市の巾着田が有名だ。しかし、このコロナ禍ですべてを伐採したというニュースが流れた。そのため、この群生地も人気の的となった。
千葉県八千代市、1975年頃に開発された村上団地の傍にある緑地公園が、その群生地である。公園の中央部に20万本もの彼岸花が咲く。丘陵地形をうまく活用し、アップダウンのある群生地は朱色を俯瞰できる。そして、ペットや狐面を持って和装する人などの撮影会が、方々で行われている。また、クロアゲハが乱舞する姿は、「赤と黒」のコントラストが素晴らしい。
大型団地とセットで開発された緑地公園、SNS全盛の時代には、非日常として、人が集まる場所に変換した。平日でもすごい人、週末となると、どのようになるのか計り知れない。
この朱色たちが終わりを告げると、秋色は深まり、冬景色へと季節は変わっていく。まさしく、季節を分ける瞬間、しばしの間、朱色の花に心を魅せられる。
(2021.09.21.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長