東京商工リサーチは7月28日、上場ホテル運営13社(15ブランド)の2025年3月期の平均客室単価が前年同期を大幅に上回ったとする調査結果を発表した。
ホテル業界ではインバウンド需要の拡大を背景に、客室単価と稼働率が引き続き高水準を維持していることが分かった。
調査対象となった15ブランドの2025年3月期の平均客室単価は1万6,679円で、前年同期比12.6%の上昇。新型コロナウイルスの影響で客室単価が大きく落ち込んだ2021年同期(7,755円)と比べると114.5%増となり、実質的に2倍以上にまで回復している。
また、稼働率も15ブランドすべてが70%を超え、うち9ブランドが80%以上と、依然として高い水準にある。
2025年上半期の訪日外国人数は2,151万8,100人で、前年同期比21.0%増と大幅な伸びを記録。半年で2,000万人を突破したのは過去最速となった。円安傾向も追い風となり、インバウンドの宿泊需要は各地のホテルで依然として強い。特に需要が集中する都心部や地方の主要都市では、供給が追いつかず、客室単価の上昇に拍車をかけている。
客室単価の前年同期比上昇率では、10%以上15%未満が9ブランドと最多で、10%未満が3ブランド、15%以上20%未満が2ブランド。最も高い上昇率を記録したのは、東急不動産ホールディングスが展開する「東急ステイ」で20.4%増だった。
ビジネスホテル8ブランドに限ってみると、2021年3月期の客室単価は6,180円と最低水準だったが、2025年同期には1万3,930円まで上昇し、約2.3倍となった。平均稼働率も2021年の45.8%から大幅に改善し、2025年同期は81.0%と高水準を維持している。
観光庁の「インバウンド消費動向調査」によれば、2024年4〜6月期の訪日外国人による旅行消費額は2兆5,250億円にのぼる見通しで、前年同期比18.0%増となる。中でも宿泊費の占める割合は38.5%と最も高く、ホテル業界にとっては大きな追い風となっている。
一方で、人件費やエネルギーコストなどの上昇も影響し高稼働・高単価の傾向は当面続く見通しだが、需給バランスの悪化による客室不足や、サービスの質への懸念も広がっている。人材不足も深刻化しており、スタッフの確保や処遇改善、定着率の向上といった課題への対応が急務となっている。
調査は、2025年3月期の業績や開示資料をもとに、上場ホテル運営会社13社(15ブランド)の客室単価と稼働率を集計した。12月決算企業については、2025年1~3月期(第1四半期)の公表値を使用。調査は今回で6回目となる。
対象企業とホテルブランドは次の通り。
藤田観光(ワシントンホテル)、JR東日本(ホテルメッツ、メトロポリタンホテルズ)、相鉄ホールディングス(相鉄フレッサ・サンルート)、東急不動産ホールディングス(東急ステイ)、共立メンテナンス(ドーミーイン)、グリーンズ(コンフォートホテル、ホテルエコノなど)、西日本鉄道(西鉄ホテル)、ポラリス・ホールディングス(ベストウェスタン)、大和ハウス工業(ダイワロイネットホテル)、西武ホールディングス(プリンスホテル)、阪急阪神ホールディングス(阪急阪神ホテルズ)、三井不動産(三井ガーデンホテル)、JR九州(THE BLOSSOMなど)。