「渋谷のラジオ」の番組「渋谷商店部 お店に行こう!」で、先日原宿神宮前で開催されたセミナー『公民連携の未来図:東京山側DMCと渋谷区観光協会の事例に学ぶ持続可能な地域創生』の内容が紹介された。ゲストとして出演した株式会社東京山側DMC代表取締役の宮入正陽さんは、自身の事業活動について深く語った。
民間DMCが担う地域創生の新機軸

宮入正陽氏は、東京都中山間地域を拠点に、自然・歴史・文化といった地域固有の資源を活かした観光・学習事業を展開する株式会社東京山側DMCの代表である。欧米でスタンダードとなっているDMC(デスティネーションマネージメントカンパニー)という「街づくり会社」の機能に注目し、民間ならではのスピード感で試行錯誤を繰り返すことが、行政との協働において重要であると語る。
東京山側DMCは、民間と行政が連携し、地域資源の調査・企画から商品造成、販売、さらにはガイド育成までを一貫して担うDMC機能を構築している。この取り組みは、公共の公金に頼りすぎず、自然資源を最大限に活用し、地域内で経済を循環させる「循環型の街づくり」の実践を目指すものである。
都市と地域をつなぐ「橋渡し役」としての役割
東京山側DMCは、東京の豊かな自然や文化と、渋谷をはじめとする都市部=「街側」との交流促進や「関係人口」の創出に注力している。多様な体験プログラムを通じて、都市と地域を結ぶ「橋渡し役」を担っているのだ。
具体的な活動には、アドベンチャートラベル、自然体験学習スクール、高尾山における都内唯一のヘルスツーリズム認定コースなどが挙げられる。宮入氏自身が幼少期から山で自然と触れ合ってきた「原体験」が、この事業の根幹にあるという。かつて、江戸にエネルギーを供給する「街」として栄えた東京の山側と都市部の交流が失われた歴史を再構築し、都市の便利さを犠牲にすることなく、里山の文化を知ることの重要性を伝えている。
全国展開への挑戦と持続可能な未来
東京山側DMCは、これまでの知見を全国に広げる新たな挑戦として、「地域創生の窓口」と称する地域創生プロデューサー資格講座を無料で展開している。この講座は、AIを活用することでノウハウを再現可能にし、フランチャイズではなく日本の「のれん分け」のような形で、全国の地域創生の担い手を増やすことを目的としている。東京を日本のハブと捉え、ここでの動きを他県の地域創生への「レバレッジ」にしたいという宮入氏の展望が示された。
さらに、子どもたちの「探求型自然体験スクール事業」にも注力し、国際基準の安全管理やライセンスを整備することで、非認知能力や意欲の向上を目指している。無料のリバークリーン活動なども実施し、「体験格差」をなくす努力も行っている。宮入氏は、自然の摂理を知る自身の経験から、子どもたちの自殺をなくしたいという強い思いがこの事業を立ち上げた動機であると語った。
まとめ:地域創生は「循環」の物語
宮入氏が語る東京山側DMCの取り組みは、単なる観光振興に留まらない。それは、地域に根差した民間の力が、行政との協働を通じて、都市と地域をつなぎ、持続可能な経済と文化の循環を生み出すという壮大な物語である。宮入氏の言葉からは、故郷への深い愛情と、失われたつながりを再構築したいという強い情熱が感じられる。この東京から始まる「循環型の街づくり」は、日本全国の地域創生に新たな光を投げかけることだろう。
公式noteからラジオを聴くことができます。
https://note.com/shiburadi/n/n7239fd440c65