【New!トップページ新着コメント欄追加】 学び・つながる観光産業メディア

(風土再生の旅)【第2回】エネルギーも、仕事も、自分たちで創る。陸前高田の挑戦的ビジネスモデル

コメント

2025年08月25日〜27日に開催された地域創生と風土再生をテーマにした研修ツアー。今回は八木澤商店の河野通洋社長のお話から、震災後の陸前高田で生まれた革新的なビジネスモデルに迫ります。

「一社も潰すな」の誓いから立ち上がった陸前高田。彼らの挑戦は、単なる事業再建に留まりませんでした。地域の資源を最大限に活かし、エネルギー、食、福祉、そして人材育成の分野で、持続可能な未来を自らの手で創り出す、革新的で多様なビジネスモデルが次々と生まれています。

河野社長にお話を伺ったCAMOCY(カモシー)

■ 発酵とエネルギーで、地域の「巡り」を取り戻す

震災から10年を経て誕生した発酵パーク「CAMOCY(カモシー)」。ここは、失われた味噌醤油屋の営みだけでなく、街の音や匂い、人々の繋がりといった、目に見えない大切なものを「発酵」というテーマで再生させる場所です。

さらに、街はエネルギーの自給自足という壮大な目標を掲げます。設立された「市民エネルギー」は、年間37億円もの市外へ流出するエネルギー費用を地域内で循環させることを目指します。小型水力発電の導入では環境省から50億円の予算を獲得。自分たちで電気を創り、地域内で消費する。そんな未来が、すぐそこまで来ています。

お話を伺ったCAMOCY(カモシー)店内の様子

■ 一次産業に革新を。常識を覆すアイデアが価値を生む

陸前高田の挑戦は、地域の基幹である一次産業にも及びます。

  • 日本酒作り:地元産の米をあえて磨きを2割に抑え、雑味となるタンパク質を極限まで減らした日本酒を開発。常識外れの発想が、新たな価値を創造しました。
  • 起業家育成:地元のリンゴを使った「陸前高田マイクロブルワリー」や、フェアトレードのカカオで作るチョコレート工房「CACAO broma (カカオ ブローマ)」など、若者のアイデアが次々と形になっています。
  • 人材育成:「SET(セット)」と呼ばれる大学生向けアントレプレナー養成所では、若者が漁業や林業に関わりながらビジネスプランを練り、地域に根差した担い手へと成長しています。
ロッツ株式会社が運営するチョコレート工房「CACAO broma (カカオ ブローマ)」

■ 誰一人取り残さない。福祉と雇用の新しい形

「グレーゾーン」と呼ばれる、障害者年金を受けられない人々を支援する「ユニバーサル就労支援センター」では、彼らが農業や林業を通じて社会との繋がりを持てる機会を提供。

また、ロッツ株式会社は、国の「産業特区」認定を受け、医師の処方箋なしで理学療法士がリハビリメニューを柔軟に変更できる画期的な介護サービスを展開。寝たきりの高齢者を再び立ち上がらせることを目標に、希望を生み出しています。

陸前高田の挑戦は、経済活動を通じて地域課題を解決し、そこに住む誰もが豊かになれる社会を目指しています。

次回は、こうした革新的な挑戦を根底で支える、この土地ならではの歴史や文化、そして未来への投資である「人づくり」の物語をお届けします。

寄稿者:東京山側DMC 地域創生マチヅクリ事業部

/
/

会員登録をして記事にコメントをしてみましょう

おすすめ記事

/
/
/
/
/