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(風土再生の旅)【第3回】未来は過去からの贈り物。陸前高田が守り育む、歴史と人という宝

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2025年08月25日〜27日に開催された地域創生と風土再生をテーマにした研修ツアー。八木澤商店・河野通洋社長が語る陸前高田の物語、最終回です。

陸前高田の力強い復興と革新的な挑戦。その原動力は、一体どこにあるのでしょうか。最終回となる今回は、この地に深く根ざした歴史と文化、そして何よりも大切にされている未来への投資、「人づくり」に光を当てます。この町の本当の強さは、古くから受け継がれる「宝」の中にありました。

陸前髙田・気仙大工左官伝承館

■ 日本三大名工「気仙大工」の魂と知恵

陸前高田は、日本三大名工と謳われる気仙大工発祥の地。彼らの卓越した技術は、釘を使わない「組み込み工法」や精緻な彫刻に見ることができます。しかし、その真髄は技術だけではありません。家全体を守る神棚、子孫繁栄を願う亀甲柄の欄間、そしてネズミと共存するための「ネズミくぐり」。建物の一つひとつに、自然を敬い、家族を想う先人の温かい知恵と祈りが込められています。

伝承館では昔ながらの囲炉裏も体験できる

■ 誇り高き歴史が育んだ、不屈の精神

この町の歴史は、困難に立ち向かい、自らの手で未来を決めてきた軌跡そのものです。かつて、広田湾の埋め立てや石油コンビナート建設計画が持ち上がった際、地域を挙げて反対し、日本で唯一その計画を阻止したという誇り高き歴史があります。 「100年後、日本中がコンクリートで覆われても、この町だけは緑が残るだろう」。先人たちのこの言葉は、目先の利益にとらわれず、未来を見据える陸前高田の精神として、今もなお脈々と受け継がれています。

気仙大工の細部へのこだわりも解説

■ 未来への最大の投資は「人」。若者と世界を惹きつける町

陸前高田は、未来への投資を惜しみません。その最大の投資先は「」です。

震災直後、地元企業が高校生の100%雇用を宣言し、若者たちの未来を守りました。大学生向けアントレプレナー養成所「SET(セット)」では、若者たちが地域に滞在し、一次産業に触れながら自らの手で仕事を生み出す術を学んでいます。

その取り組みは国境を越え、ハーバード大学の学生やアフリカからの研修生、国連関係者など、世界中から多くの人々が視察に訪れます。彼らは単なる「支援者」や「視察者」ではありません。体験料を支払い、地域住民と深く交流することで、この土地の価値を学び、感動を分かち合う仲間となるのです。

自然の中で魚を獲り、山で遊ぶ。そんな当たり前の体験を、都会の子供たちには有料で、地元の子供たちには無料で提供したい―。この想いは、自然との繋がりの中で豊かな感性を育むことこそが、最高の未来への贈り物だと信じているからです。

気仙大工が木に魂を込めるように、陸前高田は人に、未来に、想いを込める。歴史と文化を礎に、人を育み、世界と繋がる。この町の復興の物語は、日本が未来へ進むための、大きな希望の光となるでしょう。

寄稿者:東京山側DMC 地域創生マチヅクリ事業部

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