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(風土再生の旅)【陸前高田スタディーツアー現地ルポ|第9回】「あなたはどう思う?」から始まる未来。陸前高田の賢人が語る、本当の地域創生

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風土再生ツアー2日目の夜、一日の濃密な体験を分かち合いながら囲む夕食の席。その中心にいたのが、長洞(ながほら)元気村のリーダー、村上誠二さんです。彼の静かで、しかし確信に満ちた言葉の中に、これからの日本の地域社会が向かうべき道の、温かいヒントが隠されていました。それは、単なる復興の物語ではなく、人と人が繋がり、未来を育む「まちづくり」の普遍的な物語でした。

1. 対話が人を育てる。「爆睡する人がいなくなった」ワークショップの秘密

「昔はね、防災の話を2時間も3時間も一人で喋ってたんですよ」と、誠二さんは笑います。しかし震災後、彼はある手法を取り入れました。それは、正解のない問いに「イエスかノーか」で答え、グループで議論する参加型のワークショップ「防災クロスロードゲーム」です。

「避難所にペットを連れてきたい人がいる。あなたならどうする?」

「支援のおにぎり、自治会に入っていない人にも配る?」

具体的な問いを投げかけると、参加者の目の色が変わります。特に高校生たちに「あなたはどう考えたの?」とマイクを向けると、最初は戸惑いながらも、自分の言葉で意見を表明し始めます。

「このゲームを始めてから、爆睡する人がいなくなったんですよ」

この一言が、すべてを物語っていました。答えを教えるのではなく、共に考える。この対話のプロセスこそが、将来の地域を担う若者の「考える力」と「発言する力」を育むのです。それは、リーダーシップ研修にも通じる、まさに地域創生の原点でした。

隙間時間にも質問がでる

2. ばあちゃんたちの“張り”が宝物。新しい漁業モデルの温かい構想

地域の未来を語る上で欠かせないのが、高齢者の役割です。85歳で引退を決意したベテラン漁師さんの後をどう継ぐか。誠二さんが描くのは、単なる事業承継ではありませんでした。

「みんなで出資して、一緒に漁に出て、獲れた魚を山分けするんだ」

この「体験型漁業」で主役となるのは、地域の“ばあちゃん”たちです。参加者が獲った魚の鱗を取り、調理し、真空パックに詰める。あるいは、魚を買い取って加工し、地域の市場で販売する。それは、ばあちゃんたちにとって、かけがえのない役割となります。

「大事なのは、金額じゃない。『自分も必要とされている』『社会の一員なんだ』っていう“張り”なんだよね」

誠二さんの言葉に、ハッとさせられます。地域創生とは、立派な施設を作ることではない。一人ひとりが役割を持ち、生きがいを感じられる居場所を作ること。この温かい構想には、人が幸福に生きるための本質が詰まっていました。

食事は地元のおばあちゃんたちの手作り

3. 言葉はいらない。「分かり合おう」とする心が繋いだ、ハーバード大生とのお団子作り

「昔は、茅葺き屋根の葺き替えに、村中から180人も集まったもんだ」

誠二さんは、かつて地域に当たり前に存在した「お互い様」の精神を懐かしみます。スマホ一つで世界と繋がる現代、「共同でやらなきゃいけないこと」が減り、隣人との繋がりが希薄になっていることに、彼は静かな危機感を抱いていました。

しかし、希望の光は思わぬところから差し込みます。ハーバード大学の学生たちが訪れた際、ばあちゃんたちと一緒に郷土料理の「水団(しとね)」を作った時のことです。言葉は通じません。それでも、身振り手振りを交え、「こうやるのよ」「これはどうするの?」と教え合ううちに、不思議と心が通じ合っていく。

「大事なのは、お互いに『分かり合おう』と歩み寄る気持ち。それさえあれば、言葉なんていらないんだ」

この国際交流は、ばあちゃんたちの心に「やってみよう」という小さな革命を起こしました。失われつつある地域の絆は、案外こんなふうに、共に何かを作り上げる純粋な楽しさの中から再生していくのかもしれません。

4. 『幸福』のクロスロードに立つ私たちへ。陸前高田からの問いかけ

最後に、誠二さんは私たちに深い問いを投げかけました。

昔の足踏み脱穀機を巧みに操る老人たちは、道具の「仕組み」を理解し、工夫する中で知的好奇心を刺激され、若々しかった。それに比べ、複雑な機械のボタンを押すだけの現代は、本当に豊かになったのだろうか。

「医療技術はどこまでも進歩する。でも、人間の生き方として、そこまで求めなくてもいいんじゃないかとも思うんだ」

陸前高田の夜に交わされた対話は、私たち自身が現代社会の「クロスロード」に立っていることを気付かせてくれました。効率や便利さの先にある、本当の幸福とは何か。人との繋がり、世代を超えた役割、そして生きる手応え。陸前高田の地域創生は、その答えを過去の知恵と未来への希望の中に静かに示してくれています。

寄稿者:東京山側DMC 地域創生マチヅクリ事業部

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