槍のように伸びた佐田岬半島の南側、宇和島を中心とする宇和海沿岸は、リアス式海岸として有名だ。そして、真珠の養殖も盛んな場所である。また、入り組んだ土地には、小さな集落も点在する。入り江ごとに分断されているが、急斜面を活用した畑地がいづれにも形成されている。
その代表的なものが、半島先端部の遊子水荷浦(ゆすみずがうら)にある段畑(だんばた)である。小さな石を積み上げて雛壇状に造られ、平均斜度40度、高さ1m以上の石段が造られている。そして、60段以上の石段が、一番高いところで海抜90mとなる。広さ約3.4haに1,000枚近くの段畑がある。
かつては、養蚕のための桑畑が造成されていた。また、サツマイモや麦も作られていた。しかし、1955年頃より耕作放棄地となった。現在では、ここでジャガイモが作られ、「遊子産」というブランド品として、宇和島の「道の駅」などで販売されている。小ぶりなジャガイモだが、とても美味しい。
この景観を守るためにNPO法人「段畑を守ろう会」が、ふる里だんだんまつりやライトアップを実施している。そして、駐車場のそばには、地産地消レストランやイモの直売所も経営している。
交通至便とは言えず、路線バスの本数も少ない。観光客が訪れるためには、クルマが必須となる。地元の頑張りを後世にしっかりと残すために次なる一手も必要である。国内各地に、そのような場所は少なくない。
(2022.05.14.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長