三角西港は、2015年に世界遺産に登録された。「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産の一つである。1884年整備が始められ、1887年に開港したものだ。また、近代的港湾としては、日本でも最古である。そのため、三角西港の建設には国費が投じられ、宮城県野蒜築港、福井県三国港とともに明治の三大築港と呼ばれている。
ここを通る国道57号線は、宇土半島を熊本市内から天草諸島に通じている。そして、天草五橋を渡る手前に三角西港は位置する。風光明媚な有明海を望みながら、先を急いでいると通り過ぎてしまう場所でもある。昭和初期まで、裁判所や学校などが設立され、交通の要衝となっていた。しかし、拡張するのに難があり、国鉄三角線が通る東港にその機能を移していった。
早くに東港に機能が移ったため、西港は石積みの埠頭や水路・橋などが、当時のまま原形を留めていた。このことが、全国唯一の港湾史跡として高く評価され、世界遺産にも登録された。
日本全国を広域的に横断する「明治日本の産業革命遺産」、有名なものと無名なものとが融合し、世界遺産として登録されている。そのため、「ここも世界遺産」と聞いて初めて認識する場所も多い。世界遺産の登録資産として、胸を張って、観光客を迎えて欲しいと思う場所である。
(2016.09.06.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長