美しい四国「佐田岬半島と大洲盆地」編
私たちの地球は、天の川銀河のオリオン腕(オリオンわん=銀河系の比較的小規模な渦状腕の1つで、現時点で太陽系が通過している渦状腕)の付近を通過している太陽系を構成する一部である。
その地球の北半球に位置する日本列島、とりわけ中でも「四国」は本州や北海道、九州とは違って知られざる美しい景色の宝庫でもある。今回から数回のシリーズで(厳密に申し上げるとネタが切れるまで)「美しい四国」を写真でご紹介しすることで、ツアープランニングの参考にしていただきたい。
四国の夜明け(2024.07.04./ 04:44)①

佐田岬燈台沖南西約1.5kmの荒れ狂う黄金碆付近から撮影した写真は、私が乗っている撮影船も前後左右に揺れながら軽く2m前後は上下する状況の中で、悪戦苦闘しながら撮影したシーンだ。夏至から2週間が過ぎて、この日の日の出から1分ずつ遅くなっていくタイミングの絶景だ。私の場合、よほど体調でも崩していない限り船酔いすることはないが、黎明から東雲へと変わりゆくグラデーションが描く光芒には酔いしれた。
四国の夜明け(2024.06.19./ 05:15)②

撮影日が前後するが、この写真は佐田岬半島のほぼ真ん中付近に位置する「権現山展望台」からの撮影。ちょうど「夏至」の日の出を狙っての撮影で、左側が伊予灘(瀬戸内海)、右側が宇和海。夕刻から明け方にかけては瀬戸内海側から宇和海側へと気流が流れる。一方、その伊予灘へは大洲盆地から流れ出る「肱川(ひじかわ)」の河口から上流からの南風が吹き出している。
数年前からの佐田岬の撮影で、この長尺半島が壁となりその根っこ付近に位置するすり鉢状の大洲盆地と肱川が何らかの影響力を及ぼしているのではないかと予想していた。季節は梅雨時ではあるが、半島の中心付近に立って左右の海域を同時にファインダーに収めることで、冬場の撮影の参考になるかもしれないからだ。
午前4時過ぎから待機して日の出の時を待つ。次第に明るくなってくると海の状況が変化してくる様子が確認できた。最初は霧など全くなかった伊予灘海面から徐々に霧が湧き上がり、ついには瀬戸内海側から宇和海側へと吹き抜ける風に乗って、まるで龍が這っていくように佐田岬半島の尾根を越えていく。なんと美しいことか。このとき、たまたま肱川河口で撮影していた仲間によると、秋口でもないのにまるで肱川あらしのように盆地から霧が流れ出ていたと言うから、目の前のシーンとの関係性を確信した。
四国の夜明け(2024.01.02./ 05:38)③

これは大洲盆地の西側の淵にあたる「高山(たかやま)」から撮影した、正に「黎明の刻」である。写真のど真ん中が東。日の出は写真の右端からだ。ビッシリ張っている雲海の下からにじみ出るような街明かりがとても幻想的で美しい。
肱川上流は写真右上、下流方向は写真左下である。雲海は、前日夕刻から南風に変わるため右側から左側へと流れ出ている。毎年10月下旬から2月下旬くらいまで観られる「世界三大超自然現象」と言われるもので、多くの写真家たちが追いかける。これが伊予灘へと排出される「肱川あらし」の源だ。
肱川あらし(2021.01.15. / 06.51)

これが肱川あらしだ。排出される気流と伊予灘側で沸き立つ気嵐が風速20mでこの港町(長浜町)を襲うのだ。
写真中央から左手が伊予灘海域で佐田岬半島はこの写真の左手の海岸線の延長である。今年の春先はここのところの異常気象の影響からか、4月に入っても肱川あらしが現れていたので、このことを写真で確認していくと佐田岬半島とその付け根付近に位置する大洲盆地は、肱川という「気流の管」を通して全く無関係とは言えないのではないか。そんなロマンが「四国の夜明け」と謳うひとつの根拠でもある。
まだまだ撮り続けて写真を並べて確認し、さらにファインダー越しに観察していけば必ず何か発見できるのではないか。そんなことがツアープランニングのお役に立てばと考えながら撮影を続けている。
冒頭の写真は、「天の川(伊方湾から/2025.07.27. / 20:47)」
(これまでの寄稿は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=14
寄稿者 河野達郎(こうの・たつろう) 街づくり写真家 日本風景写真家協会会員