東京二期会は、ワーグナーのオペラ「さまよえるオランダ人」を新制作として上演する。演出を手がけるのは映画監督の深作健太氏で、9月13~15日の3日間、東京文化会館大ホールで公演される。(写真提供:公益財団法人東京二期会、撮影:寺司正彦)
「バトル・ロワイアルII」や「僕たちは世界を変えることができない。」などで知られる深作氏は、これまでオペラ演出でも注目を集めてきた。今回は「孤独と救済」をテーマに、現代社会に響く新しいワーグナー像を提示する舞台に挑む。演出の発想は、ドイツ・ロマン派の画家カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの絵画《氷海》や、メアリー・シェリーの小説『フランケンシュタイン』から得たという。氷塊に押し潰される船や北極をさまよう孤独な怪物の姿を通して、社会に居場所を持たない「アウトロー」としてのオランダ人像を描き出す。
深作氏は「誰にも愛されなかった存在を救おうとするゼンタの優しさを通じ、孤独な魂を救済する物語にしたい」と語る。ワーグナーの時代と同様に、現代も資本主義の矛盾や格差、戦争、環境問題など多くの課題を抱えている。深作氏はこの舞台を通じて、「現実の厳しさの中で夢見るロマンと救済」を現代の観客に呼び覚ますことを意図している。
音楽は指揮・上岡敏之氏が務め、読売日本交響楽団と二期会合唱団が参加する。衣裳デザインは西原梨恵氏。映画的なスピード感と演劇的な情熱を融合させ、19世紀の伝説を重層的に表現する舞台となる。
公演は9月11日を皮切りに、13、14、15日に行われる。開演はいずれも14時。会場は東京・上野公園の東京文化会館大ホール。チケットは二期会チケットセンターで販売されている。