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彰義隊の夢の跡~黒門は移築され・東京都荒川区~ニッポンを歩こう139

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南千住の日光街道沿いに位置する円通寺は、曹洞宗の寺院で本尊は聖観音菩薩である。791年坂上田村麻呂によって開かれたと伝えられる。

明治維新、1868年に上野戦争で亡くなった彰義隊の隊員を上野公園の西郷隆盛像のあたりで、この寺の住職が火葬を行なった。そのため、上野寛永寺の総門(黒門)が移築されている。黒く塗られた門のあちらこちらに鉄砲玉の跡が残され、幕末の戦乱の大きさを物語っている。そして、境内には、亡くなった彰義隊の隊員の墓もある。

しかし、ここには、もう一つ慰霊の地蔵が設置されている。それは、1963年3月に当時4歳であった村越吉展(よしのぶ)ちゃんが誘拐される事件に由来する。そして、1965年7月に敷地内の墓地から白骨化した遺体が発見されたのだ。猟奇的な殺人事件は、当時の治安の悪さを示すものだった。そのため、子供たちを見守り、事件事故の再発防止の意味合いから慰霊地蔵に思いが込められている。

幕末から明治時代への名残と高度成長期が始まる時代の凶悪事件が共存する寺院。しかし、今ではその歴史が忘れ去られている。昨今の観光は、素晴らしい宿泊施設や美味しい料理に焦点が当たり、なかなか、過去の歴史は重きを置かれない。ヒストリカルツーリズムは、集客するのが難しいと言われる。しかし、地元の史跡を、しっかりと後世に語り継ぐことは大切なことである。

(2022.06.13.撮影)

(これまでの特集記事は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=8

取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長

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