オーストラリアのエアーズロック・リゾート(ウルル)を運営するヴォヤジーズ・インディジナス・ツーリズム・オーストラリアはこのほど、CEOのマシュー・キャメロン=スミス氏が来日して東京でメディア関係者やインフルエンサーを対象としたイベントを開催、ウルルでの体験の充実をアピールした。
ウルルでは、2019年10月に登山が禁止となり、また翌年にはコロナ禍に入ったこともあって現在も日本人訪問者数は回復の途上。さらに今年7月末にはノーザンテリトリー政府観光局が日本事務所を閉鎖し、日本市場でのプレゼンス低下が懸念されるところだったが、キャメロン=スミス氏は取材に対して「日本市場は我々にとって最重要市場のひとつ。今後も引き続き働きかけを継続する」と明言。今回の来日でも旅行業界向けのイベントは実施しなかったものの、日本・韓国担当ビジネス・デベロップメント・マネージャーを務める大矢和宏氏とともに東京と大阪で旅行会社へのセールスコールも実施した。
今回のメディアイベントは、登山禁止後の新時代のウルル観光について情報を提供して啓蒙することがねらい。ヴォヤジーズでは、禁止を見越して2017年にはウルルを望むサッカー場5面分もの大地を5万球もの電球で彩る光の祭典「フィールド・オブ・ライト」を開始したが、その後も新たな観光の魅力を生み出す努力を続けているところ。
なかでもコロナ後に誕生した目玉と言えるプロダクトは、2023年5月から始まった世界でも最大規模となるドローンショー「ウィンジリ・ウィル」。ウルルとカタジュタと沈む夕日が壮大な景観を眺めた後にドローンやレーザー光線、プロジェクションマッピングなど先端技術と音楽で先住民アボリジナルピープルの古代の物語を描くもので、すでに多くの賞を受賞。さらに、昨年にはウルルとカタジュタが朝焼けに浮かび上がる時間に、アナング族の著名な女性アーティスト3名が共同制作した絵画をテーマにしたレーザー光線ショー「サンライズ・ジャーニー」も開始した。

こうしたプロダクト開発で同社が最も重視しているのはアボリジナルピープルで、何万年もの間受け継がれてきた文化や歴史、伝統、物語などに焦点を当て、ウィンジリ・ウィルなどのショーの内容も当事者たちが主体的に関わる形で企画。このほかにも、ウルル周辺や国内各地の先住民の食材を使うオーストラリアン・ネイティブ・ハイティーで紅茶自体も先住民が経営する企業が地元の素材を加えて作るインフューズティーを利用するなど工夫を重ねている。
キャメロン=スミス氏はこうした取り組みについて、他者による翻訳ではなくアボリジナルピープルの手による彼らの物語であることを重視しているとし、リゾートが先住民やその企業が成長する場となることがめざすべき姿だと説明。また登山についても「日本人にとっての神社や仏閣に登るようなもの」であったとして禁止の意義に理解を求め、むしろ禁止によって「主体的に文化を学べる、多様な文化を楽しめる場所になった」と語りかけた。
アクティビティ充実は今後も継続し、例えばフィールド・オブ・ライトも誕生から10年近い時間が経過した中で「これまで以上に良いもの」へとアップデートする計画が進行中。またウィンジリ・ウィルやサンライズ・ジャーニーもアボリジナルピープルとの契約期間が5年間であることから、その期間が経過した後にはまた共同作業を通して新たな内容となる可能性もあることを示唆した。
キャメロン=スミス氏はプレゼンテーションの締めくくりとして、「日本人とアボリジナルピープルは、祖先や年長者を大切にしたり歴史や伝統を大切にしたりするなど文化的な共通点が多い」と説明。集まったメディア関係者やインフルエンサーに対し、アボリジナルピープルの文化を学び楽しむ体験の目的地としてウルルへの日本人旅行者が増えるよう協力を呼びかけた。
情報提供 トラベルビジョン(https://www.travelvision.jp/news/detail/news-118627)