新潟を拠点とする地域航空会社トキエアは10月2日、株式会社ランドトケイアン(以下、ランド)の株式取得と新経営体制の発足した。新体制には、目玉として社外取締役として実業家の堀江貴文氏が参画。今回の統合は、これまでの「スピードや技術」を重視した運航志向から、「機内エンターテインメント」や「旅の楽しさ」を軸とした価値創造型の路線へと舵を切るもので、エンタメと地域航空を掛け合わせた新たな地方創生モデルの確立を目指す。
地方の「アンダーバリュー資産」を高めるエンタメ戦略
新経営陣は、日本の地方が持つ文化や資産を「アンダーバリュー(過小評価)」されていると捉え、ブランディングと高付加価値化を通じて収益性を高める戦略を描いている。これは、単なる移動手段としての航空会社ではなく、地域への誘客装置としての役割を強調するものだ。
エンタメ×航空の具体策

- 機内体験の充実:「移動=楽しむツーリズム」へ再定義し、機内DJやドリンク提供による「パーティーエアライン」演出などを企画。ランドの持つグローバルな音楽・エンタメ資産を機内コンテンツに転用する。
- チャーター事業「ソラパス」の拡充:火・水・木曜日を中心にチャーター事業をメイン展開し、「神戸→隠岐の島→壱岐→神戸」といった周遊型ツアーを提供。ATR機材(72席/46席)を活用したチャーターは、1区間100万円(72席/46席同一価格)から提供され、1人あたり約12,000円と安価で、一般利用者への「空の民主化」を目指す。
- 「空飛ぶ北前船」構想:神戸から北海道に至る歴史的な商圏を参考に、新潟を中心とした地域間接続を強化。佐渡就航を新規候補路線として挙げ、世界遺産登録を見据えたインバウンドや余裕層の空路ニーズに応える。
IT・製造業を巻き込んだ三位一体の地方創生モデル
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トキエアの新戦略は、航空運送事業に留まらない。
1. スーパーアプリ構想で地方の非効率を解消
航空予約に加え、二次交通、宿泊・飲食予約、マイレージ、ECを一体提供するスーパーアプリの開発を推進する。これにより、地方に届きにくい情報やサービスの遅延を解消し、新潟県民の生活利便性を大幅に向上させる意図がある。また、MVNO「トキエアモバイル」構想を掲げ、携帯代と運賃の相互割引など、マイレージと通信を連動させた還元モデルも検討されている。
2. 燕三条を拠点としたLSA(軽飛行機)製造への挑戦

事業の柱の一つとして、LSA(Light Sport Aircraft:軽飛行機)の製造・関連産業への参入を目指す。これは、MRJ(スペースジェット)頓挫後の日本の航空産業の停滞と人材流出への危機感からくるものだ。
- 地域連携:燕三条のものづくり技術と連携し、航空部品・キットを供給。
- 国際市場:当初は米国の3,600億~4,000数百億円とされるLSA市場へのキット販売をターゲットとする。
- 人材育成:「飛行機を作れる」という夢を喚起し、新潟で雇用創出と国際的人材集積を図る。
同社は、航空運送、スーパーアプリ、そして航空製造の3事業すべてで単体黒字を目指し、2026年に単月黒字、2027年に通期黒字を達成する計画である。
トキエアの挑戦は、地域航空が単なる交通インフラに留まらず、エンタメ、IT、製造業を統合したプラットフォームとして、地方創生と日本の航空産業の未来を切り開く可能性を示している。
役職・担当 | 氏名 | 主要な役割 |
CEO 兼 クリエイティブディレクター | 和田直樹 | 経営統括、事業戦略、エンタメ×航空の推進 |
COO 兼 カウンター | 長谷川正樹 | AOC(運航許可)取得の突破力、規制対応の牽引 |
取締役(ランド社経由で参画) | 堀江貴文 | PR・YouTube等での認知拡大、IT・アプリ開発助言 |
CSO 兼 安全統括管理者 | 新俊則 | 安全と収益化の両立、最年長としてのガバナンス |
CPO | 西村啓介 | 運航経済の即応力、投資判断の中核 |
CGO | フラビオ佐々木 | グローバル展開、機材リース・交渉 |
CRO | 斉藤和也 | 地域密着の市場浸透、燕三条連携、新潟の価値発見 |
寄稿者:東京山側DMC 地域創生マチヅクリ事業部