運命的なフェーズ:論理をぶち抜く現場の迫力
10月7~9日にかけて、新潟県長岡市にある〈未来里山技術機構 NEST〉さんを訪ねた「風土再生の旅」は、「このために今まで生かされ、様々な経験を積ませていただいたのだな」と、運命的なフェーズの到来を実感する時間となりました。
机上で地域創生を語るのは簡単ですが、現場に立つことで、風、光、湿度、土の質感までが「生きた情報」になる。NESTさんの現場は、まさに自然と技術、暮らしと経済が混ざり合い、“ひとつの有機体”のように動く**「風土の知性」**が生きている場所でした。
私はこれまで、泥臭く現場で活動することばかりでしたので、いかに論理的に、根拠立てて物事を伝えるかが重要で、その部分が自分に足りないと考えていました。しかし、今回見た突き抜けた実践は、時に論理をぶち抜く力を持つことを教えてくれました。理屈を超えた、土地と人が織りなす「鼓動で掴む」情報の迫力。地域創生プロデューサーとは、まさにその土地の言葉を現代に翻訳し、人や事業をつなぐ**“風土の通訳者”**なんですよね。

終わった「空白の100年」と迫りくる「市街地決戦」
なぜ今、長岡の地でこれほど切迫した挑戦が生まれているのか。それは、日本の長い歴史から見れば「異常」であった、「動物のいない100年」という空白の期間が終わりを迎えたからです。かつて明治〜大正期に激減した野生動物は、保護政策によって個体数が回復しました。しかし、人間側の社会は中山間地域の急速な過疎化と高齢化により、動物の侵入を防ぐ防衛線を維持できなくなっているのです。
長岡市の周辺地域では、今後わずか30年以内に人口がゼロになるという現実が迫っています。人口減少と、管理されない広大な森林の荒廃は、耕作放棄地や空き家の増加を招き、必然的に鳥獣被害を激化させます。
これが、私たちが直面する最も避けるべき未来、**「野生動物との市街地決戦」**の始まりです。
このフェーズは、大型野生生物との闘いの空白の100年が終わり、かつての状態に戻った今、急速に地域の人口が減少し、都市部には海外からの移住者・旅行者が爆増している現代のわれわれの行動が、日本の未来の方向性を決める重要な局面であることを痛感させます。人生を賭してこの戦いに挑む山本代表の迫力を眼前で見られたのは、今回の旅の最大の成果でした。

「懐かしい未来」:里山防衛ラインの再構築へ
私の関心は、この「市街地決戦」を防ぐために、いかに被害を最小限に抑えられる里山地域の防衛ラインを賢く再構築できるか、という点にあります。
NESTさんが目指すのは、まさに**「懐かしい未来の実現」**。これは、多大な労力で維持されていたかつての循環型社会の知恵を、最新のテクノロジーを用いて再構築するという、先進的なコンセプトです。
- 共存(ゾーニング):野生動物の生息域である「山」と、人間の生活圏である「里」を明確に分離(ゾーニング)し、相互不干渉を基本とすること。
- サーキュラーエコノミー:林業、農業、エネルギーなど全ての事業を有機的に連携させ、廃棄物や「厄介者」を資源に変える循環型経済を構築する。
- テクノロジー活用:かつて1000人で維持していた営みを、省力化技術やAI、ドローンを駆使して100人、あるいは10人でも維持可能にする。
この旅を通して、まちづくりと野生動物との共存、そして風土資本を軸にした地域再生が、切り離せない「シームレス」な関係性であることを改めて深く痛感しました。
風土は“感じる”もの。理論じゃなくて、鼓動で掴むもの。

地域活動の理想形へ:長岡で見つけた六方良しの循環
NESTの活動の根底には、単なる事業の成功を超えた、**「六方良し」**の持続可能な循環モデルが息づいています。これは、私たちが目指す地域活動の理想形です。
- 生物多様性:広葉樹林業や竹林整備により生態系を再生・保護し、野生動物とのゾーニングを確立します。
- 地権者:耕作放棄地や荒廃した森林を事業の場として再生し、土地所有者の不安解消と満足をもたらします。
- 若者・移住者:新たな循環型ビジネスを創出することで、地域に雇用と挑戦の場を生み出します。
- 都市住民:農林業体験や狩猟体験、地域文化体験といったディープな探究型学習の場を提供し、自然体験のニーズに応えます。
- 新たなビジネスモデル:地域資源を活用した、**持続可能な地域経営体(DMC)**が機能します。
- 地域創生:これらの価値が複合的に地域経済を支え、コミュニティの存続と発展に貢献します。
長岡でのNESTの挑戦は、まさにこの都市と地方の課題を統合的に解決し、関わる全ての人と自然に恩恵をもたらすサステナブルな地域づくりの具体例であると同時に、東京山側DMCが求めている力強い地域再生のモデル地域に成り得ることを確信した瞬間でした。

これからが面白くなる! 協業と学びの場の提供
これからNESTさんとの協業も本格的に動き出します。この秋から相互に交流し、お互いの得意な所を情報・技術提供しつつ、この「風土再生の旅」のような探究プログラムとして練り上げて、すぐに開催していきます。この最前線で、賢く戦うための実践的思考を、今後も学ばせていただきたい。
また、共に地域の根っこを探る「風土の通訳者」を養成する講座も開講しますので、ぜひご参加ください!
10月開講!第5期 地域プロデューサー養成講座《初級》無料説明会
地域の“風土”を次代の産業へ翻訳する民間型プロジェクト。このプロジェクトは、短期的な観光振興を超え、地域に深く根を張る〈未来の地域経営体〉の共創を目指しています。“土地の記憶”と“文化資本”を、次代の産業に翻訳し、地域の本質を編み直す──私たちは、その想いと志を同じくする方々と共に実現したいと考えています。
【講座概要】 オンライン4回+リアル研修 受講無料(教材費5,000円) 年齢・職種・地域 不問
【無料説明会(オンライン・無料)】 ・全日程 20:00〜21:00 10/9(木) 10/16(木) 10/23(木) 10/30(木)
講座概要 • オンライン4回+リアル研修 • 受講無料(教材費5,000円) • 年齢・職種・地域 不問
無料説明会申し込みはこちら https://rprqkhrx.gensparkspace.com/
修了者の声 https://xkgeisdk.gensparkspace.com/
運営:株式会社東京山側DMC https://mt-tokyo.com/ これからが、本当に面白くなります。🔥
