観光庁の村田茂樹長官は4月の定例会見で、2026年3月の訪日外国人旅行者数や消費動向、今後の観光政策の方向性について説明した。3月の訪日客数は約362万人と単月として過去最高を更新し、インバウンドは高水準を維持しているとの認識を示した。一方で、中東情勢や燃油価格の上昇など外部環境については「不確実性がある」とし、引き続き慎重に動向を見極めていく必要性を強調した。
3月は362万人、2月から約15万人増で過去最高更新
2026年3月の訪日外国人旅行者数は約362万人となり、2月(約347万人)から約15万人増加。単月として過去最高を更新した。2月は東アジア市場(韓国・台湾・香港)が牽引したのに対し、3月はこれに加え欧米・東南アジアの伸長が顕著となり、需要の広がりが一段と進んだ。
特に3月は、中国・香港・中東を除く20市場で過去最高を記録。インドネシア、ベトナム、米国、カナダ、英国、ドイツ、北欧などは単月でも過去最高となり、訪日市場の多様化がより鮮明となった。一方、2月に引き続き中国市場は回復途上にあり、中東は航空便減少の影響で減少するなど、地域別のばらつきも見られる。
村田長官は「単一市場への依存度が下がり、多様な市場からの訪日が増えている」とし、構造的な変化が進んでいるとの認識を示した。
消費額は四半期で過去最高、構造は“モノからコトへ”
2026年1~3月期の訪日外国人旅行消費額は約2.3兆円と過去最高を更新。2月までの回復基調に加え、3月の訪日客増が押し上げ要因となった。一人当たり支出は横ばいながら、平均宿泊数の増加や宿泊単価の上昇が寄与。消費構造では、中国市場の減少により買い物支出の比率が低下し、宿泊や体験などの“コト消費”が相対的に増加している。この変化について村田長官は「欧米豪市場の伸長が背景にある」と説明し、消費の質的転換が進んでいるとの見方を示した。
外部環境の影響は限定的も「引き続き注視」
中東情勢や燃油価格の上昇については、現時点ではインバウンド全体への影響は限定的としつつも、「今後の動向は注視が必要」との姿勢を示した。特に燃油サーチャージの上昇については、アウトバウンド・インバウンド双方に影響する可能性があるとし、「コスト環境が変化する中でも、日本の魅力を高めていくことが重要」と強調した。
マーケティング戦略本部を軸に市場別戦略を強化
観光庁では、こうした市場環境の変化に対応するため、マーケティング機能の強化を進めている。特に、マーケティング戦略本部を中心に、各市場の特性に応じたプロモーションや商品造成を推進。データ分析を活用し、需要動向に応じたターゲティングの高度化を図っている。
これにより、「欧米豪市場の高付加価値層の取り込み」「東南アジアの成長市場の拡大」「中国市場の回復局面への対応」といった複線的な戦略を展開していく方針だ。
村田長官は「市場の多様化が進む中で、それぞれに最適化した戦略が重要」と述べ、従来の一律的なプロモーションからの転換を示唆した。
日米観光交流キャンペーン2026も本格展開
会見では「日米観光交流促進キャンペーン2026」の推進についても説明された。米国建国250周年などを契機に、旅行商品の造成やプロモーションを通じて相互交流を拡大する取り組みで、地方誘客にもつなげていく。会見ではキャンペーンを紹介する動画が公開された。

2030年に向け“量から質”への転換を加速
政府は2030年に訪日客6000万人、消費額15兆円を目標としているが、今回の会見では「量の拡大だけでなく質の向上」が改めて強調された。地方誘客やリピーター創出、消費単価向上などを柱に、持続可能な観光モデルへの転換を進めていく方針だ。
二重価格は重要な選択肢の一つ、地方誘客や分散化の取り組みを引き続き強化
会見では、インバウンドの足元の好調さを踏まえつつ、外部環境や制度面に関する質問が相次いだ。
中東情勢の影響については、「一部でフライトの欠航・減便が見られるものの、訪日全体への影響は現時点では限定的」と説明。そのうえで「国際情勢は観光需要に影響を与えやすく、今後も注視していく必要がある」と述べた。
また、原油価格の上昇に伴う燃油サーチャージの引き上げについては、「訪日需要への影響を現時点で見通すのは難しい」としつつ、「コストが上昇しても日本に来たいと思われる魅力づくりが重要」と強調した。
さらに、観光施設などで議論が進む外国人と国内客で価格を分ける「二重価格」については、「料金設定は各事業者の判断が基本」としながらも、「持続可能な運営やサービス向上の観点で重要な選択肢の一つ」と言及。「利用者への丁寧な説明が不可欠」とした上で、観光庁としてガイドライン整備を検討していく考えを示した。
このほか、インバウンド需要の拡大に伴う地域への影響についても質問があり、村田長官は「地方誘客や分散化の取り組みを引き続き強化することで、持続可能な観光の実現を図る」と述べた。
取材 ツーリズムメディアサービス代表 長木利通