観光庁の長﨑敏志観光地域振興部長は6月12日、「Tabinaka Summit 2026」で講演し、訪日市場の伸び鈍化や都市部への集中が進むなか、今後は旅行者数の拡大だけでなく消費額や体験価値を重視する観光政策を推進する考えを示した。地方誘客や地域経済への波及効果を高めるため、タビナカ体験の充実や二次交通の改善、人材育成などの重要性を訴えた。
長﨑氏は冒頭、訪日市場について、コロナ禍からの回復は続いているものの、2026年に入ってから伸び率が急速に低下しているとの認識を示した。中国市場の減速や中東情勢の影響に加え、燃油サーチャージの上昇や航空便の減少なども重なり、「予断を許さない状況」と説明した。
国内市場についても課題を指摘した。宿泊ベースでは三大都市圏への集中がコロナ前より進み、地方への誘客が十分に進んでいないとした。また、訪日客の旅行消費単価はコロナ前から上昇しているものの、足元では伸び悩みも見られるとし、人数拡大だけに依存しない観光政策の必要性を強調した。
こうした状況を踏まえ、第5次観光立国推進基本計画では観光を「戦略産業」と明確に位置付けたほか、訪日客数のみを追い求めるのではなく、消費額や地域経済への波及効果など「質」を重視する方針を掲げていると説明した。インバウンドの戦略的誘致と住民生活との両立、日本人の国内旅行・海外旅行の促進も重要な柱とした。
観光庁の支援方針については、「ウリ(コンテンツ)」「ヤド(宿泊)」「ヒト(人材)」「アシ(交通)」「コネ(プロモーション)」の5つの要素で整理。これまでの観光政策はプロモーション支援に重点が置かれていたとしながらも、今後は地域の魅力的な観光コンテンツ造成や宿泊施設の高付加価値化、人材育成、交通環境整備などへの支援をより重視する考えを示した。
タビナカ市場への期待については、台湾市場を例に挙げ、訪日リピーターほど地方を訪問する割合が高まる傾向を紹介。その一方で、地方での体験コンテンツや受入環境の整備が十分とは言えない現状があると指摘した。
また、訪日客の消費構造について、宿泊や飲食への支出割合が高まる一方で、体験やアクティビティなどサービス消費は全体の約5%にとどまっていると説明。「現地で何かを見たり体験したりする消費が十分に収益化できていない」との認識を示し、地域での体験消費拡大が今後の重要課題との考えを示した。
情報提供:トラベルビジョン(https://www.travelvision.jp/)