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韓国観光公社、「今日行く韓国」で訪韓3,000万人へ 日韓観光が新局面

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韓国観光公社(KTO)は4月10日、「2026韓日観光交流の夕べ」を東京都港区のグランドハイアット東京にて開催した。会場には、日韓両国の観光関連事業者、旅行会社、オンライン旅行会社(OTA)、航空会社、自治体関係者などが集まり、「今日行く韓国」をテーマに、急拡大する日韓観光市場の現状と今後の戦略について共有した。日韓観光が日常化フェーズを迎え、2028年までに中期目標として訪韓外国人3,000万人を目指す。

同イベントでは、韓国観光公社による市場戦略の発表に加え、「K-TOURISM INSIGHT TALK」と題したトークセッションが実施され、交通・旅行系YouTuberのはるのハルハル氏や、旅行アプリ「NEWT」を運営する令和トラベル執行役員CSOでReiwa Travel Korea, Inc.代表取締役の受田宏基氏らが登壇。若年層の旅行行動の変化や、AI・SNSを起点とした新たな旅行需要について具体的な事例が紹介された。

日韓間の往来が過去最多水準に達する中で、短期・高頻度化する旅行スタイルや、AIによる意思決定の変化など、観光の構造そのものが変わりつつあることが改めて示されたイベントとなった。

日韓往来は1,300万人、2026年は日本人450万人目標

冒頭、韓国観光公社の朴聖爀(パク・ソンヒョク)社長は、2025年の日韓間の往来人数が1,300万人を超え、過去最多を更新したことに言及した。

日本から韓国への訪問者数は約365万人と過去最高を記録しており、日本市場は韓国インバウンドにおける最重要マーケットの一つとなっている。

その上で韓国観光公社は、2028年までに訪韓外国人3,000万人を目指す中期目標を掲げ、2026年はそのステップとして2,300万人を設定。日本市場については前年比約23%増となる450万人の誘客を目標とする方針を示した。

朴社長は「韓国はもはや海外というより、気軽に訪れることのできる身近な目的地となっている」と述べ、短期旅行や高頻度訪問の拡大に期待を示した。

日本側からは日韓親善協会中央会会長の河村建夫氏が登壇し、日韓観光の拡大について「観光は両国の相互理解を深める最も重要な基盤の一つ」と強調した。今後については、「人の往来が増えることが信頼関係の強化につながる。観光交流をさらに活性化させていくことが、日韓関係全体の発展にも寄与する」と述べた。

日本旅行業協会の髙橋広行会長は、日韓観光の急回復について「両国間の交流は量的にも質的にも新たな段階に入っている」と評価。そのうえで、「短期・高頻度化する旅行スタイルに対応しながら、旅行商品の付加価値を高めていくことが重要」と述べ、旅行業界としても新たな需要創出に取り組む姿勢を示した。

KTOのパク・ソンヒョク社長

“日帰り渡韓”が新たな旅行スタイルに

「K-TOURISM INSIGHT TALK」では、YouTuberのはるのハルハル氏が登壇し、若年層を中心に広がる“日帰り渡韓”について紹介した。

早朝出発・深夜帰国のフライトを活用することで、宿泊を伴わない韓国旅行が現実的な選択肢となっており、「美容施術」「グルメ巡り」「ショッピング」といった目的特化型の行動が主流となりつつある。

はるの氏は、SNSを通じた情報発信により「韓国は思い立ったらすぐ行ける場所という認識が広がっている」と述べ、従来の“旅行”とは異なる消費行動が生まれている点を指摘した。一方で、日帰りに最適化された観光コンテンツや外国人対応のインフラ整備はまだ十分ではなく、受け入れ側の対応が今後の成長の鍵になるとした。

はるのハルハル氏

NEWTが示す“AIネイティブ旅行”の実態

続いて登壇した受田宏基氏(令和トラベル)は、旅行アプリ「NEWT」のデータをもとに、若年層の旅行行動の変化について解説した。NEWTのユーザーは20〜30代が約6割を占め、特に20代女性ではAI活用率が9割を超えるなど、旅行計画におけるAI利用が一般化している。

受田氏は、旅行の意思決定プロセスが「検索 → 比較 → 予約」から「SNS → AIレコメンド → 即時予約」へと変化していると指摘。特に韓国は、距離の近さやコンテンツの豊富さから、こうした“即決型旅行”と極めて相性が良い市場であるとした。

また、インフルエンサーと共同開発したツアーが前年比500%成長するなど、SNS起点の旅行商品が新たな需要を生み出していることも紹介された。

受田氏

地方直行便とリピーター戦略を強化

韓国観光公社は、日本市場に対する具体的な戦略として、「未訪韓層には「手軽さ」を訴求」「訪韓経験者には地方誘客やテーマ旅行を提案」といった方針を示した。

また、熊本や松山など地方空港から韓国地方都市への直行便が増加しており、観光交流は都市部から地方へと広がりつつある。これらにより、リピーターの分散と消費単価の向上を同時に狙う。

観光は“発見される時代”へ

旅行先のトレンドも変化している。明洞や江南といった定番エリアに加え、聖水や漢南洞といった新興エリアへの関心が高まっている。SNSやAIによるレコメンドの影響により、観光地は“選ばれるもの”から“発見されるもの”へと変化している。

課題はアウトバウンドの拡大

一方で、日韓観光には課題も残る。韓国から日本への訪問者が約946万人であるのに対し、日本から韓国への訪問者は約365万人と差が大きく、日本側のアウトバウンド拡大が求められている。双方向の交流拡大に向けては、若年層の海外旅行需要の回復が鍵となる。

“今日行く韓国”が示す新たな観光像

イベントでは「今日行く韓国」をテーマとしたセレモニーも実施された。この言葉が象徴するのは、観光の位置づけの変化だ。旅行は特別なイベントから、日常の延長線上にある選択肢へと変わりつつある。

今回のイベントは、①日帰り化②AI化③SNS起点化―という3つの潮流が、観光の意思決定と消費構造を大きく変えつつあることを示す場となった。

日韓観光は今、量の拡大から質と構造の転換へ。その転換点にあることを強く印象づける一夜となった。

取材 ツーリズムメディアサービス代表 長木利通

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