上海から南西に車で2時間ほど走ると緑が多くなる。道路の両側には木々が生い茂り、多くの観光客が徒歩やサイクリングで散策する姿が目につく。2011年に世界遺産に登録された杭州市の西湖に近づいてきた。西湖は周囲約15㌔。レンタサイクルもあり、自転車なら1時間30分で回れる。白居易や蘇東坡の詩にもうたわれ、1000年の詩詞文化に育くまれた土地といわれる。元の時代に杭州を訪れたマルコポーロが、この地を地上の楽園とたたえ、風光明媚な景観と繁栄ぶりを記録している。(写真:西湖の背後には高層ビルが顔を出す。白居易が築いた白堤)
激辛中国料理のイメージと異なる優しい味
その西湖のほとりの150年以上続く老舗、楼外楼(孤山路店)で名物の西湖醋魚を味わった。杭州市のある浙江省の伝統の味で、2018年9月には、浙江省十大名菜に選ばれている。酸味と甘みが絡み合った味付け。柔らかく煮込まれた淡水魚の身にあんかけ風のタレがしみ渡り、ご飯に乗せれば箸が進む。ただ、世界遺産である西湖では漁業ができないため。湖岸に生け簀をもうけ、ここに別の土地で獲った淡水魚を放し、数日間泥抜きをして食卓に供する。

日本ではトンポーローとして人気の東坡肉もなじみのある一品だ。豚肉を甘辛く煮込んで、口の中でとろけるような味わい。前述の蘇東坡が生んだ料理と伝えられ、その名にちなみ、東坡肉と名付けられた。中国料理といえば、花山椒や唐辛子を使った激辛料理とのイメージがあるが、この料理は日本人にも口にも合う。浙江省特産の緑茶、龍井(ロンジン)茶を飲み、口の中に爽やかな感触が広がった。楼外楼では西湖が眺められる窓の席は常に満席であり、予約が必須だ。
四大民間伝説「白蛇伝」の舞台を眺める
お腹が満たされたところで、西湖の船着き場から遊覧船に乗り、湖上から周辺を眺めてみた。湖には白堤、蘇堤、楊公堤の3つの堤がある。このうち、このうち西湖最古の堤、白堤は白居易が築いたもので、全長1㌔。中国古代の四大民間伝説「白蛇伝」の舞台となった石橋も白堤にある。伝説は、白蛇の妖怪が女性に化け若い男性を襲うことを繰り返すが、最後は人間の男性と恋に落ちる物語。船が進むにつれ、湖面に顔を出すのが「西湖十景」の3基の石塔だ。これは中国紙幣の1元札にも描かれている。観光客たちは、1元札を取り出し湖面と見比べスマホに納めていた。
国運が上向く! 海外要人も訪れる霊隠寺
船を下りて霊隠寺に向かった。326年に建立された禅宗の古刹で、多くの中国人がお参りに訪れており、観光名所といった感もある。2025年12月から拝観料が無料となったこともあり、今年5月のメーデーの連休には80万人が詰めかけたと報じられた。敷地内にある大雄宝殿は国の運が上向くとされることから、海外の要人もしばしば訪れるという。岩山に彫られた338体の石仏は日本でいうところの磨崖仏。なぜこのような険しい崖に彫ることができたのだろうと感慨を覚えた。
