国土交通省は4月21日、令和8年度「観光MaaS推進事業」の支援対象として全国9事業を選定したこと発表した。交通事業者や観光コンテンツの連携で、複数の移動手段を一体的に提供するMaaS(Mobility as a Service)の導入を後押しし、観光地における周遊促進や消費拡大を図る。
今回の取り組みは、単なる移動の利便性向上にとどまらず、オーバーツーリズム対策や地域交通の再構築といった観光・地域課題の解決を視野に入れている点が特徴となっている。
全国9事業を選定、北海道から沖縄まで展開
選定された事業は、北海道から沖縄まで全国に広がる9案件。北海道では周遊促進型サービス「ぐるっと北海道」や地域MaaSの高度化、都市部では宇都宮や秩父での新型モビリティ導入、地方都市では高松市や宗像市による公共交通の最適化など、多様な取り組みが並ぶ。
また、九州では広域連携によるMaaS高度化や、訪日外国人向けのID連携基盤構築といったインバウンド対応も含まれている。宮古島では観光地特化型のMaaS推進が進められる。
観光MaaSは“周遊”と“分散”の鍵に
国交省は、MaaSを活用することで観光地内の回遊性向上を図り、観光消費の拡大につなげる考えだ。特に、観光地で課題となる「移動の分断」を解消することで、特定エリアへの集中を避け、需要の分散にも寄与するとしている。
観光における移動はこれまで“個別最適”にとどまりがちだったが、MaaSによって「面での体験設計」が可能になる。
「交通空白」解消と地域再生を両立
今回の事業は、観光だけでなく地域交通の再構築とも強く結びついている。人口減少により交通サービスの維持が難しくなる中、MaaSは複数の交通手段を束ねることで効率化を図り、「交通空白」の解消につなげる狙いがある。
国交省は、地域交通の“リ・デザイン”を進めながら、観光アクセスの改善を通じて地方誘客を促進し、地域経済の活性化につなげていく方針だ。
インバウンド対応とデータ活用も加速
今回の選定では、訪日外国人向けサービスの高度化も重要なテーマとなっている。ID連携によるシームレスな移動体験の実現や、データ活用による需要分析など、デジタル基盤の整備が進むことで、より高度な観光マネジメントが可能になる。
“移動”が観光価値を左右する時代へ
観光施策において、コンテンツ開発と並び重要性を増しているのが「移動」の質だ。MaaSは単なる交通サービスではなく、観光体験そのものを再設計するインフラとなりつつある。今回の9事業は、各地域における実証的な取り組みとして、今後の全国展開のモデルケースとなる可能性が高い。
“行きやすさ”が“行きたさ”を生む。観光MaaSは、地方誘客の鍵を握る施策として、次のフェーズに入りつつある。