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子どもの「知りたい」から、地域を見つめ直す|東京山側DMC・印南幸恵氏

コメント

地域にある自然や文化、人を生かした体験プログラムの企画・運営を手掛ける東京山側DMC。2026年から同DMCに参画している印南幸恵氏は、自然保育の現場で子どもたちと過ごしてきた経験を生かし、化石や鉱物、森、川など、地域にすでにある「本物」を入り口に、子どもたちの「知りたい」を引き出す体験づくりに取り組んでいる。印南氏が大切にしているのは、大人が答えを用意して子どもに学ばせるのではなく、子ども自身が「面白い」「なぜだろう」「もっと知りたい」と感じることから始まる学びだ。今回は、70年以上続いてきた「自然保育 森の幼児園」の運営経験から得た気づき、現在の自然体験プログラムへの思い、そして子どもの興味を出発点とする「探究遠征」について聞いた。(9月2日、オンライン取材。聞き手 ツーリズムメディアサービス特任記者 いおん)

自然保育の経験が、今の活動につながっている

化石研究者でむさしの化石塾代表の福嶋徹氏(左)と印南氏

――これまでの経歴や、現在の活動について教えてください。

中学3年生と小学4年生の2人の子どもを育てながら、自然体験や教育、地域に関わる活動をしています。2022年に一般社団法人 紡ぐ手を設立し、70年以上続いてきた「自然保育 森の幼児園」を前任者から引き継ぎ、運営してきました。

森の幼児園では、生き物を探したり、土や石ころ、木の枝など、自然そのものを遊び道具にしていました。大人が先回りして答えを教えなくても、子ども自身が考えて工夫して遊びます。そうした姿を見てきたことが、現在の活動にもつながっています。
2026年からは東京山側DMCに参画し、自然体験プログラムの企画・運営に携わっています。

――自然保育を通して、一番感じたことは何でしょうか。

自然の中には、子どもが自分で見つけられる「問い」がたくさんあるということです。
「この虫は何だろう」「この石は何だろう」「どうしてここにあるんだろう」そういう小さな疑問から、子どもの世界が広がっていく。だから、最初から「学ばせよう」とするのではなく、まずは「面白い」と思えるものに出会うことが大切だと思っています。

一方で、幼児園を運営する中で、活動を続けていくためには、思いや情熱だけではなく、運営の仕組みやお金も必要だということも学びました。そこは今も、自分自身が考え続けているところです。

地域にあるものを、子どもの「知りたい」につなげる

――現在は、どのようなプログラムに取り組んでいますか。

東京山側DMCでは、これまでも化石や鉱物などをテーマにしたプログラムを行ってきました。私はその活動に関わりながら、これまで自然保育で大切にしてきた「子ども自身が興味を持つ」という視点を、自然体験プログラムの中でも生かしていきたいと思っています。
専門家の方に話を聞きながら、本物に触れることで、子どもたちが「もっと知りたい」と思うきっかけをつくる。教科書で知識を得ることとは違って、実際に見たり触ったりした経験は、その後の興味関心につながりやすいと感じています。

――体験をつくるときに意識していることはありますか。

「楽しかった」で終わらず、その後に何かが残ればいいなと思っています。例えば、石を一つ見つけたことがきっかけで、「石ってどうやってできるんだろう」と調べてみる。そこから地層に興味を持ったり、別の場所にも行ってみたくなったりする。そういう小さな「もっと知りたい」を大切にしたいです。

一人でつくるのではなく、地域にいる人と一緒に

――活動を続けていく上で、課題に感じていることはありますか。

良い体験をつくることと、それを継続していくことは別だと感じています。研究者や専門家の方に協力していただく場合も、きちんと仕事として成り立つ形にしていかなければ、長く続けることはできません。また、企画する側だけが頑張り続ける形にも限界があります。だからこそ、全部を自分でつくるのではなく、地域の方や仲間と一緒につくっていくことが大切だと思っています。新しいものを一からつくるというより、すでにある人や場所をつないでいくことで、できることが増えていくのではないかと思っています。

これからやってみたい「探究遠征」

――今後、やってみたいことはありますか。

「探究遠征」のようなことを、子どもたちとやってみたいです。私の長男は昆虫が好きで、森の幼児園のお山の先生だった昆虫の師匠を今でも慕っています。幼児園や地域のネイチャークラブの方から、昆虫だけではなく自然のことをいろいろと教えてもらい、私よりもずっと詳しいです。次男はサッカーが好きで、興味を持つものは違いますが、2人とも自然の中で育ってきました。親として見ていると、子どもは自分で好きなものを見つけると、大人が思っている以上に深く入っていくんだなと感じます。

だから、子どもに何かを教えたいというより、子どもが夢中になっていることを、できるだけ邪魔せずに見守りたい。そして、「もっと知りたい」「ここに行ってみたい」と言ったときには、その一歩を背中を押してあげられる存在でいたいと思っています。例えば、昆虫が好きな子が「この虫をもっと見てみたい」と思ったら、専門家の方と一緒に、その虫がいる別の地域へ行ってみる。子ども自身が興味を持ったことを、実際の場所で確かめてみる。そんな「探究遠征」ができたらいいなと思います。海外にも行けたら面白いです。

――大人が学びを用意するのではなく、子どもの興味を出発点にするということですね。

そうですね。子どもは、親が思っている以上に自分の世界を持っています。私自身、子どもから教えてもらうことがたくさんあります。だから、大人が「これをやらせよう」と決めるのではなく、子どもが夢中になっているものを見守りながら、必要なときに人や場所につないであげる。それくらいの距離感が、今の自分には合っているのかもしれません。

森の幼児園を運営していたときも、子どもたちが自分で遊びを見つけていく姿をたくさん見てきました。その経験があるからこそ、今度は、幼児期を過ぎた子どもたちの「好き」や「もっと知りたい」を、どう応援できるのかを考えていきたいと思っています。

「見えるもの」が変わる体験を

――最終的に、子どもたちにどんな経験をしてほしいですか。

自分で「面白い」と思えるものを見つけてほしいです。そして、そこから「なぜだろう」「もっと知りたい」と思って、自分で調べたり、誰かに聞いたり、実際に見に行ったりしてほしい。

自然の中で過ごしていると、今までただの石だったものが「面白い石」に見えたり、ただの山だったものが「この地層はどうやってできたんだろう」と気になったりします。知識が増えることで、「同じ景色でも見え方が変わる」。そういう体験を、子どもたちにつくっていけたらと思っています。

私自身も、まだ勉強しながら活動しています。地域には、知らないだけで面白いものや、それを知っている人がたくさんいます。まずは自分たちの身近な地域にある「本物」に出会うこと。そこから、子どもたちの「知りたい」が少しずつ広がっていけばいいなと思っています。

※印南幸恵=2022年に一般社団法人 紡ぐ手を設立し、「自然保育 森の幼児園」の運営に携わる。2026年から東京山側DMCに参画。自然体験プログラムの企画・運営などに取り組んでいる。

聞き手 いおん(ツーリズムメディアサービス特任記者、周防光DMC)

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