日本バス協会は9月17日、通常理事会を開催し、会場とオンラインで計67人が出席した。運転手不足や燃料高への対応を議論し、特定技能2号への拡充や、国際観光旅客税の増収分を観光地の交通空白解消や二次交通の支援に充てるよう求めた。
全国のバス事業者でつくる日本バス協会の理事会には、会場46人、オンライン21人の計67人が出席した。清水一郎会長が議長を務め、国土交通省から自動車局旅客課長の庄司郁氏が出席し、バス事業をめぐる現状と今後の政策について説明した。
運転手不足への対応と運賃制度を議論
清水会長は、バス業界の最重要課題として運転手不足と燃料高を挙げた。特に地方では路線の維持が難しくなっており、賃上げの原資を確保するためにも運賃改定が重要になるとした。
事例として、愛媛県松山市で路線バスを運行する伊予鉄バスの取り組みを紹介した。同社では3年連続で毎年7%の賃上げを実施し、運賃を段階的に改定することで賃上げの原資を確保している。応募者が増える傾向もみられる一方、労働力人口そのものが減少する中で、人手不足は続いているという。
外国人運転士の受け入れでは、特定技能1号の活用が始まっている。清水会長は、5年間の在留期間では長期的な人材確保に限界があるとして、特定技能2号への拡充と早期実現を求めた。
国土交通省は、運転手の賃上げにつなげるため、乗合バスの運賃改定を迅速化・簡素化する取り組みを進めている。賃金指標については全産業平均の水準を参照する仕組みへ見直し、適正な運賃を設定しやすくする方向で制度を整備している。
また、上限運賃の引き上げに関する権限を地方運輸局へ大幅に委譲し、審査や手続きの迅速化も進めている。貸切バスでは、2023年8月に新運賃を公示し、20~30%引き上げた。庄司課長は、営業収入の回復とともに1社当たりの営業収支も改善していると説明した。
交通空白の解消と観光地の二次交通を推進
交通空白の解消も大きなテーマとなった。国土交通省は交通空白の解消を重要課題と位置付け、地域の足について3カ年集中で取り組んでいる。地域旅客運送サービス再構築事業を創設し、バス事業者と教育、医療、福祉、商業などの送迎主体が連携して地域輸送を再構築する仕組みを進める。
例えば、スクールバスが稼働していない時間帯に公共ライドシェアを活用し、高齢者などの移動ニーズに対応する取り組みが想定されている。庄司課長は、観光地でも二次交通の不足が課題となっており、観光の足を含めた交通空白の解消を進める考えを示した。
自動運転の社会実装に参加
清水会長は、自動運転について、2030年までにバス、タクシー、トラックを合わせて自動運転サービス車両1万台を導入する目標に触れ、バス業界としても国のプロジェクトに積極的に参加していく考えを示した。レベル4の自動運転を実現し、1人のオペレーターが複数車両を管理する「1対N」の運行を目指す。
庄司課長は、自動運転を人手不足や地方の移動手段の課題を解決する可能性がある重要な技術と説明する一方、社会実装には制度や財源などの課題があると指摘した。技術を長期的な視点で捉え、まずは一歩ずつ実装を進めることが重要との考えを示した。
また、自動運転が社会に受け入れられるためには、利用者が不安を感じない環境づくりも重要と説明。業界とのコミュニケーションを重ねながら、国として導入を後押ししていく考えを示した。
キャッシュレス化やEV導入、安全対策を推進
バスの完全キャッシュレス化も進んでいる。実証運行は2024年度の18事業者29路線から、2025年度には28事業者44路線へ拡大した。交通系ICカードやクレジットカードなどで現金の取り扱いをなくし、乗降の円滑化と乗務員の負担軽減につなげる。国土交通省は標準約款を改正し、支払い方法を限定できる制度整備を進めるほか、キャッシュレス決済機器や乗務日報、運行管理システムの導入・更新も支援する予定だ。
環境対応では、EVバスの導入促進が進められている。清水会長は、EVバスについて航続距離、座席数、車種のラインナップなど、実際のバス事業に適した性能を重視する必要があると指摘した。
補助制度については、国産車の育成という政策目的がある一方、事業者が必要とする性能を持つ車両を選べる制度にすることも重要だと要請した。庄司課長は、事業者の意見を重要視しているとした上で、経済安全保障の観点から国産車を育成する政策課題もあると説明。両方の要請をどう調和させるか、関係部署と連携して検討する考えを示した。
税制では、自動車税や自動車重量税の軽減措置の延長を要望している。2027年度税制改正に向け、営業用EVバスを含む税制措置について結論を得る方向で議論が進められている。
安全面では、安全輸送決議案や社内事故防止キャンペーン、車両火災など緊急時の統一マニュアル改正を承認した。また、貸切バス安全対策協議会を新設し、軽井沢スキーバス事故から10年を機に、DXを活用した安全対策や事故の風化防止について継続的に協議している。
労務面では、10月からのカスタマーハラスメント対策義務化を見据え、協会としての指針を整理。大型二種免許取得支援や職場環境改善を通じた人材確保、女性活躍の推進にも取り組む。環境面では、CO2排出量の評価方法を「実車キロ当たり排出量」に見直し、2013年比で16%改善したことも報告された。
国際観光旅客税の充当を要望、11月に決起大会
観光地の二次交通を支える財源として、国際観光旅客税の増収分についても議論した。清水会長は、国際観光旅客税の税額引き上げによって拡大する財源を、観光地の交通空白解消や公共交通の支援に充てるよう求めた。
庄司課長は、8月末に概算要求を取りまとめ、年末の予算決定に向けて財務省と交渉していると説明。財源には限りがあるとしながらも、業界との連携を密にして要求の実現に取り組む考えを示した。
今後の取り組みとして、11月11日に臨時総会を開き、理事選任を行う予定だ。同日には「バス危機突破決起大会」も開催し、国会議員とともに業界が抱える課題への対応方針を共有する。
清水会長は、バスを公共交通の最後の砦と位置付け、路線・貸切の両面から持続可能性を確保していく考えを示した。