愛媛県西予地方の内子町は、明治末期から大正時代にかけて、木蝋や生糸の生産で栄えた。そして、その繁栄の象徴として、内子座は建てられている。地元の人々の娯楽の場、大正天皇の即位を祝して地元有志が造成した。1915年に大典記念株式会社内子座が設立され、その1年後に落成式が行われる。地域密着の娯楽の場所は、歌舞伎や人形芝居、映画や演説会の会場として利用された。
しかし、戦後になると会社は解散する。それに伴い、商工会から町へと所有が移転していく。また、町は昭和末期から平成にかけて、復元工事を進める。その結果、2015年には国の重要文化財に指定された。2023年秋口から、最終的な改修工事に入り、現在は見学できない。
このあでやかな芝居小屋の近隣には、重要伝統的建造物群保存地区である八日市護国が、南北に約600mの小道を作っている。地中埋設された電線によって空が広い。そのため、町家や豪商の屋敷などが連なる姿は、古き時代へいざなってくれる。
人の集まるところには、娯楽がある。近世近代の炭坑町や古き町並みには、繁栄の証の芝居小屋が存在する。娯楽の中心が経済・消費行動の中心となり、後世につながっていく。しっかりと修繕を施し、維持保存してほしいものだ。
(2016.06.01.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長