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地域創生撮影活動 第五章 『写真は語る』粋亭の美学①

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冒頭の写真は「粋亭の美学」( 2013年11月4日撮影)

名勝「臥龍山荘庭園」の建築経緯

現在、臥龍山荘が建つ敷地は、藩政時代にこの地を治めた加藤家が所有し、客人をもてなす場所として活用されていたとされる。時期は定かでないが、明治に入ってから元々大洲藩の御用商人でもあった城甲家が、婿養子義兄弟の活躍で得た財力を以てこの地を買い取り、1897年に庭園整備を開始している。

その後、3年間かけて行った庭園整備を経て、1900年9月に今や日本の名建築と謳われる「不老庵」の建築を開始し、翌年3月に完成させている。そして、2年を経て1903年から主屋の臥龍院などの建築に取りかかり、全体が完成したのは1907年のことだった。

初期の庭園整備から完成まで要した10年という期間で、関わった総人数は約9,000人と聞き及ぶ。棟梁は地元大洲の名大工「中野虎雄」、庭師は神戸の「植德」。そのほか、京都からその道の名人や千家十職など多くの人々が知恵を絞り腕を振るって完成させたのだ。

以来一世紀以上の時を経て、来年2027年には「臥龍山荘120周年」を迎える。現在、その節目の年の発刊を目指し『仮称臥龍山荘写真集』の企画編集作業が進んでいるが、ご紹介も兼ねて「酔景と調和」という視点で観てみたい。

酔景「臥龍の潭淵」

初夏の絶景臥龍淵 / 2015年5月21日撮影
初夏の絶景臥龍淵 / 2015年5月21日撮影

2015年初夏に撮影した絶景臥龍淵。それから10年の時を経て撮影した2024年晩秋の絶景臥龍淵。この間数回の肱川氾濫による洪水に見舞われている。特に2018年7月7日の西日本豪雨と言われるその時には、写真中央正面建つ蓬莱山の東屋まで水位が上がるという危機的な状況に見舞われたが、しっかり残っている。

故黒河紀章氏をもってして「壊れたら復元は難しい /『 花数寄』(黒河紀章著)」とまで言わしめたさすがの名建築である。この絶景臥龍淵に峙つ粋亭を大正から昭和の戦前にかけて発行された『大洲案内』という小冊子の中で、当時の大洲の人々が次のように賞賛している。

臥龍の潭淵(たんえん))

肱川の清流蜿延(えんえん)として亀が首にり(めぐり)、

緩水如法寺渡しの巌((いわお))を抱いて、

淵(らんえん)渦を生ずる所、人、呼んで臥龍といふ、

危岩密樹を含み、

粋亭崖に峙って畫よりも雅なり、

対岸の細砂雪よりも白く、

冨士山の寺鐘行人を酔はしむ、

臥龍は雄大な風致は欠けど、

これ亦月に雪に宜しき大洲名所の一仙郷なり。

晩秋の絶景臥龍淵 / 2024年12月2日撮影
晩秋の絶景臥龍淵 / 2024年12月2日撮影

秋は川、

両岸到る處の色、錦繍の紅葉に能く、

如法寺山の月影や、

此の上もない鮮やかさに水に眠りて小波の、

金波銀波を漂はす、秋の大洲の麗しさ、

是なら縣下にタントあるまい。

雪の絶景臥龍淵 / 2018年2月1日撮影
雪の絶景臥龍淵 / 2018年2月1日撮影

冬は雪、

高山渡し場不可ならざるも、

亀山より見た積む銀世界の臥龍の景色、

風流好む閑人の嘆賞措かぬ絶勝にして、

淵には沈む如法寺の鐘に1瓢を傾くれば雅、

美姫を具して陽氣な雪見酒と洒落たら

俗な中での風流なり。

歴史が紡ぐ長い時を・・・

人々は、ありがたいことにこの大地と河と巡る季節に生かされている。その物語が「四季」という舞台で演じられる。太古の昔から積み上げてきた日本の暦と五行十干はその台本のようなものではないか。

臥龍山荘を軸とした大洲という街の情報発信を本格的に考え始めた2004年ころから撮影を始めた。先に紹介した『大洲案内』にて掲載されていたかつての人々の思いや、日本庭園を舞台として展開されてきた茶の湯の世界における日本建築は日本の宝であり、これを撮影して百年先のみなさんへ届けたいというのが、私の撮影に懸ける思いでもある。

城甲家の婿養子義兄弟、共に家業の木蝋業に携わった。義兄の河内寅次郎は神戸にて商売に成功し、義弟は大洲にて精蝋業に専念した。蓄財を投資して自らの余生を過ごす別宅として建築を実現した河内寅次郎だったが、無念にも1909年に神戸にてこの世を去っている。

彼が描いたであろう「粋亭の美学」を紐解きながらファインダー越しに臥龍山荘を見つめ、120周年の記念写真集として仕上げていければと考えている。

晩秋の趣 / 2013年12月1日撮影
晩秋の趣 / 2013年12月1日撮影

(これまでの寄稿は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=14

寄稿者 河野達郎(こうの・たつろう) 街づくり写真家 日本風景写真家協会会員

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