日本旅行業協会(JATA)は6月17日、東京都千代田区の経団連会館で第70回定時総会後の懇親会を開催した。会場には金子恭之国土交通大臣、木原稔内閣官房長官、城内実内閣府特命担当大臣をはじめ、国会議員や各国大使、観光関係者らが出席。新会長に就任した原優二氏(風の旅行社会長)の門出を祝うほか、会長を退任した髙橋広行氏(JTB相談役)を慰労。国内外から日本の観光産業のさらなる発展に期待が寄せられた。

原新会長「高付加価値化で産業の未来を切り拓く」
懇親会の冒頭であいさつした原会長は、同日の総会で会長に選出されたことを報告し、「前髙橋会長が築いてこられた歩みをしっかり受け継ぎ、会員各社や関係者の支援をいただきながら職責を果たしていきたい」と決意を表明した。
原会長は、訪日外国人旅行者数が過去最高の4,200万人を超えたことに触れ、「2030年の6,000万人時代も現実味を帯びてきた」と評価。一方で、「日本人の海外旅行を今年こそ本格的に復活させ、観光庁と連携しながらバランスの取れた双方向交流を実現したい」と語った。
また、旅行業界がこれまで「低賃金」「長時間労働」「生産性が低い」といった課題を抱えてきたことにも言及。「旅商品の高付加価値化を進め、生産性を向上させ、やりがいと働きがいのある産業へと変えていかなければならない」と強調した。
原会長は新たな副会長体制についても紹介。JTB代表取締役社長執行役員の山北栄二郎氏、日本旅行代表取締役社長兼執行役員の吉田圭吾氏、阪急交通社代表取締役会長の酒井淳氏の3氏が副会長に就任したことを報告した。酒井氏は所用により欠席したものの、「3人の副会長と力を合わせ、観光産業のさらなる発展と会員各社の事業前進に全力で取り組んでいきたい」と述べ、新体制への協力を呼びかけた。

金子国交相「観光は日本の戦略産業」
来賓として登壇した金子恭之国土交通大臣は、退任した髙橋広行前会長の功績をたたえるとともに、原新会長への期待を表明した。
金子大臣は、2025年の訪日客数が4,270万人規模となり、観光消費額も約9.5兆円に達したことを紹介し、「観光産業は自動車産業に次ぐ第二の輸出産業に成長した」と説明。「2030年の訪日客6,000万人、消費額15兆円の目標達成に向け、国際観光旅客税も活用しながら施策を進めていく」と述べた。

木原官房長官「旅行業は日本を元気にする光」
木原稔官房長官は、自身が航空会社出身であることに触れながら、「国会議員の中で航空券の予約記録を打てるのは私くらい」と会場を沸かせた。
その上で、訪日客数が2003年の約500万人から現在は4,000万人超へ拡大したことを振り返り、「まさかここまで成長するとは思わなかった」とコメント。一方で、日本人海外旅行は依然としてコロナ前水準に戻っていないとしながらも、「着実に回復している。旅行業は日本を元気にする一筋の光だ」と業界への期待を語った。

城内大臣「旅は人と地域をつなぐ架け橋」
日本成長戦略担当大臣の城内実氏は、「旅行業は単に人を運ぶだけではなく、人と人、人と地域、人と文化をつなぐ架け橋だ」と強調した。
また、「旅先は誰かの地元でもある」と述べ、持続可能な観光の重要性に言及。「地域文化や自然環境を守りながら観光を成長させることが求められている」と語った。さらに、会場に集まった各国大使に向けて、双方向交流のさらなる活性化にも期待を示した。

「地方誘客の次の一手を」 鶴保氏が提言
自民党観光立国調査会長の鶴保庸介参議院議員は、AIに「地方誘客策」を質問したエピソードを披露し、「観光庁が取り組んでいる施策がほぼ全て出てきた」と紹介。その上で、「AIを超える新しいアイデアを生み出すことが重要」と述べた。
また、SNSやインフルエンサーを活用した情報発信の効果にも触れ、「地方誘客の新たな可能性がある」と指摘。「観光政策を前に進めるエンジンはJATAであり、現場からの提案を期待している」と呼びかけた。

各国大使も参加 双方向交流への期待高まる
懇親会には各国大使も多数出席した。乾杯の発声を務めたギリシャ共和国のオルガ・クリアナキ駐日大使は、「日本とギリシャは文化とおもてなしを共有する友好国」と述べ、両国間の観光交流拡大への期待を表明した。

また、元首相の菅義偉氏や二階俊博氏からもメッセージが寄せられ、インバウンドの地方分散や観光立国の実現に向けた旅行業界への期待が示された。
新体制のJATAがスタートする中、懇親会では「訪日6,000万人時代」と「日本人海外旅行の本格回復」を見据えた旅行業界の役割と責任が改めて共有された。
取材 ツーリズムメディアサービス代表 長木利通