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パリ観光、日本市場は緩やかに回復 新交通網で変わる空港アクセスと郊外観光

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フランス観光開発機構(アトゥー・フランス)は、都内で開催したワークショップ「SAKIDORI FRANCE 2026」で、旅行会社向けにパリ地方観光局によるセミナーを実施した。同セミナーでは、パリ地方における日本市場の現状に加え、パリ市内とシャルル・ド・ゴール空港を結ぶ新路線「シャルル・ド・ゴール(CDG)・エクスプレス」など、交通インフラ整備の動向が紹介された。

本稿では、同セミナーに登壇したパリ地方観光局レジャー&ビジネス部門マネージャーのイングリッド・ハチキアン氏への取材をもとに、パリ地方における日本市場の現状と、交通拡張計画「グラン・パリ・エクスプレス」の概要を伝える。あわせて、2026年4月にパリを訪れた際の状況を交えながら、14号線沿線で注目されるエリア、ベルシーを紹介する。(旅行ライター:西尾知子)

日本市場は徐々に復調、CDG/パリ市内の新路線は2027年3月開通予定

ハチキアン氏によると、2025年にパリを訪れた日本人観光客は約42万人、対前年比4%増でほぼ横ばい。宿泊数は約181万4000泊で、こちらは対前年比13%増と、パリを拠点とした滞在型の旅が伸びていることをうかがわせ、「深い文化体験や地域探索のニーズが高まっていることが考えられる」という。訪問者数はコロナ前(2019年)の54万人には及ばないものの「着実に回復中」という見方を示している。

こうしたなか、セミナーで主要事項として発表されたのが、パリ地方に関する2つの交通システムの計画だ。

1つ目は「シャルル・ド・ゴール(CDG)・エクスプレス」。2027年3月28日開通予定で現在整備が進められている。名前の通りシャルル・ド・ゴール空港からノンストップ、所要時間約20分で空港からパリ東駅を結ぶ路線で、朝5時から午前0時まで、15分間隔で運行する予定だ。

パリ市内の交通渋滞やCO2削減などで2026年2月にロワシーバスが廃止となり、現在空港と市内の往復はRER(地域圏急行鉄道網)B線で北駅利用、タクシー利用、あるいは新設の9517番バス(アルジャントゥイユ~サン・ドニ・プレイエル~ロワシーポール)利用などが主だ。それぞれに所要時間が30~50分かかる。CDGエクスプレスの料金は未定だが、空港アクセスに特化した列車の開通は「利便性の向上につながる」と期待を寄せる。

もう1つの交通拡張計画「グラン・パリ・エクスプレス」は、フランスの首都パリの郊外地域(イル・ド・フランス地方)を結ぶ、自動無人運転メトロ網の建設・拡張プロジェクトだ。2024年のパリオリンピック・パラリンピックを契機としてインフラ整備が進められており、同年に14号線がサン=ドニ・プレイエル駅からオルリー空港駅まで延伸された。

さらに今後、新線15、16、17、18号線の建設が進められており、段階的な開通を経て2030年代前半の完成を目指す。特に15号線は、パリ近郊を環状に結ぶ路線となる予定で、これにより市内の主要ターミナル駅を経由することなく郊外間の直接移動が可能になる。また18号線は、オルリー空港からハイテク産業が集積するサクレー地域(プラトー・ド・サクレー)を経由し、ヴェルサイユまで敷設される予定だという。

14号線開通で注目を浴びるベルシー地区

「グラン・パリ・エクスプレス」の全面完成は2030年代前半を予定しているため、旅行会社の商品造成や手配業務に直接関わってくるのはまだ先の話だ。しかし、パリ・オリンピックのレガシーの一つであり、今後の新たな拠点の1つとして期待されるサン=ドニ・プレイエル駅周辺では、すでに隈研吾氏の設計による駅舎が完成し、新ホテル「H4 ウィンダム パリ プレイエル(H4 Wyndham Paris Pleyel)」も開業している。周辺の商業インフラ整備はこれからという印象だが、今後どう変化していくのか見守りたいエリアだ。

また、こうしたなか、完成した14号線を利用して訪れやすくなったスポットもある。パリ南東部(12区)のベルシーだ。

ここは古くからパリ郊外のワイン流通の拠点として栄えていた地域だが、1960年代以降、流通システムの変化や近代化に伴い衰退。廃墟と化していたこの地を、パリ市が1980年代から再開発した。旧ワイン倉庫街の一部に1996年「縁日博物館(Musée des Arts Forains)」が開館し、1998年の地下鉄14号線開通と連動する形で、2000年頃から順次、倉庫群を利用した商業施設「ベルシー・ヴィラージュ」がオープンしている。

特に縁日博物館は、観光は少人数限定の完全予約制ガイドツアーのみであることから、長らく「知る人ぞ知る」スポットであったが、映画のロケ地となったことで一躍注目を集めた。さらにSNSなどで女性を中心に話題になっていたところに、14号線の南北延伸という恩恵が加わった。これにより、パリ中心部から10分ほど、サン=ドニ・プレイエル駅からも乗り換えなしで20分程度の時間でアクセスできるようになった。

館内では実際にアンティークのメリーゴーラウンドに乗ったり、縁日のゲームを楽しんだりできるとあって幅広い客層が訪れ、現在来館者数は年間約30万人を数えるという。ガイドはフランス語と英語のみだが、各国語の資料を用意。レトロでアンティークなムードは女性グループにも喜ばれそうな雰囲気もある。グループの受け入れも可能なので、MICEなどでの活用もおもしろそうだ。

今後、2030年代に向けて「グラン・パリ・エクスプレス」の整備が進めば、沿線では新たなホテルや施設建設の動きも加速していくことだろう。パリ地域圏住民に対する利便性の向上は「観光にも好影響を与えるだろう」とハチキアン氏。拡張するパリの動きを注視したい。

2026年、パリ地方観光局が推進する「モネ没後100年」と郊外素材

交通インフラの整備によってパリ郊外への移動環境が変わりつつあるなか、パリ地方観光局が2026年に打ち出すテーマの一つが、印象派の画家クロード・モネ没後100年を契機とする印象派プロモーションだ。その文脈で注目したい素材が、アルジャントゥイユの「印象派の家(Maison Impressionniste)」。

ここはモネが1874年から4年間暮らした家を整備し、2022年から一般公開しているもの。パリのサン・ラザール駅からJ線利用で10〜15分とアクセスしやすい。館内にモネの原画展示はないが、画家が暮らした1870年代の雰囲気が忠実に再現され、画家や印象派についてのデジタル展示もあるほか、最上階には「アトリエ舟」も作られている。

コアなモネや印象派ファン向けの施設だが、オルセー美術館や、モネのコレクションを有するマルモッタン・モネ美術館での絵画鑑賞と合わせて訪れることで、ストーリー性のある行程を組み立てやすい。なお、マルモッタン・モネ美術館は、2027年初頭から、大規模な改修工事に伴う休館を予定しているので、2026年内の訪問を勧めたい。

同じ印象派関連の郊外素材としては、「カイユボット邸」も候補となる。画家であり、モネやルノワールら印象派の画家を支援したことでも知られるギュスターヴ・カイユボットゆかりの館で、パリのリヨン駅からRER D線を利用し、約30分でアクセスできる。広大な敷地内の庭園は市民にも開放されており、郊外の自然や小さな町での散策を楽しめる点も魅力だ。

CDGエクスプレスやグラン・パリ・エクスプレスによるアクセス改善に加え、モネ没後100年を契機とした印象派関連素材の発信が重なれば、パリ商品は市内観光中心の定番行程から、近郊での文化体験を組み込む提案へと広がる。日本市場が緩やかに復調するなか、交通網の変化と郊外素材の組み合わせは、今後のパリ販売における新たな切り口となりそうだ。

情報提供:トラベルビジョン(https://www.travelvision.jp/

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