観光庁は4月15日、長官会見に続いて菅原晋也観光戦略課長が2026年1~3月期の訪日外国人旅行消費動向について説明した。第1四半期の消費額が過去最高を更新したことについて菅原課長は「市場の多様化と宿泊費を中心とした構造変化がより鮮明になっている」との認識を示した。
消費額は1兆3,378億円、過去最高を更新
2026年1~3月期の訪日外国人旅行消費額は1兆3,378億円となり、前年同期比2.5%増(575億円増)と、第1四半期として過去最高を記録した。
増加の主因は訪日客数の拡大で、国・地域別では台湾(714億円増)、米国(369億円増)、韓国(359億円増)、ベトナム(323億円増)などが押し上げ要因となった。一方で、中国は2,763億円減と大きく減少し、全体は他市場の伸長で補う構図となっている。
菅原課長は「従来のように特定市場に依存するのではなく、多様な市場が全体を支える構造に変わってきている」と述べた。
1人当たり支出は22.1万円、ほぼ横ばい
1人当たり旅行支出は22万1,000円と、前年同期比0.6%減でほぼ横ばいとなった。中国の1人当たり支出は約25万9,000円と平均を上回るため、その減少が全体単価の押し下げ要因となった。一方で欧米や東南アジア市場では単価の上昇も見られ、「市場構成の変化がそのまま平均単価に影響している」(菅原課長)と分析した。
宿泊費が36.7%、滞在長期化が消費をけん引
費目別では、宿泊費の構成比が36.7%と最も高く、前年より上昇した。平均宿泊数は10.3泊と前年から1.3泊増加しており、訪日客の滞在は明確に長期化している。これに伴い宿泊費が増加し、消費全体を押し上げる構造となっている。
菅原課長は「宿泊日数の増加に加え、1泊当たりの単価も一定程度上昇している。単純に安価な宿泊施設へのシフトだけでは説明できない」と述べ、宿泊を軸とした消費の変化を指摘した。
買い物代は減少、“モノからコトへ”が進行
一方、買い物代は約5万6,000円と前年から減少した。特に中国市場の縮小が影響しており、靴やバッグなどの高額商品の購入が落ち着いたことが背景にある。この結果、消費構造は「モノ中心」から「滞在・体験」へとシフトしており、インバウンドの質的変化がより明確となっている。
欧米・中東など高単価市場が拡大
今回の調査では、欧米や中東などの高付加価値市場の存在感も高まっている。これらの市場は、
・1人当たり支出:30万円台半ば
・平均宿泊数:13~14泊
と、全体平均(22.1万円、10.3泊)を大きく上回る水準となっている。菅原課長は「こうした市場の拡大が、今後の消費額全体を押し上げる重要な要素になる」と述べた。
■質疑応答:課題は“単価の引き上げ”と地方分散
質疑では、今後のインバウンド戦略について質問が相次いだ。
消費単価の伸び悩みについて問われた菅原課長は、「人数の増加と消費額の拡大が同時に進む中で、その中身をどう高度化していくかが次の段階」と指摘。高付加価値化や体験コンテンツの充実を通じた単価引き上げの必要性を強調した。
また、地方への誘客については「引き続き重要なミッション」とした上で、宿泊旅行統計なども活用しながら地域別の動向を分析し、政策に反映していく考えを示した。コト消費の拡大については「現状では大きな伸びが見られている状況ではない」とし、「今後の施策の中で一層強化していく必要がある」と述べた。
菅原課長は最後に、「市場の多様化が進み、構造も変化している中で、量の拡大だけでなく質の向上が求められている」と述べ、今後の観光政策の方向性を示した。
取材 ツーリズムメディアサービス代表 長木利通