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SNSのフォロワーを増やせば、まちは変わるのか?自治体プロモーションの整え方

コメント

「SNSのフォロワーを増やすにはどうすればいいですか?」
「とりあえず、HPをもっとカッコ良くしたいです。」
「施策を増やしているのに、いまいち成果が出ない……。」

自治体の広報・ブランディングに携わっていると、こうした切実な悩みをよく伺います。現場の担当者ほど、日々「どう伝えるか」という手法に頭を悩ませているのが現状でしょう。

しかし、自治体のブランディングにおいてこうした「手段(枝葉)」の話から入るのは危険です。厳しい言い方かもしれませんが、どれほど綺麗な枝葉を付けても、土台となる「根っこ」が整っていなければ、その努力は資産として積み上がりません。私たちGrass Familyが提唱する「Oneブランディング」は、手段から入るのではなく、いわば「土壌改良」から始めるブランディングです。

1. ブランドとは「選ばれる理由」がある状態

そもそも「ブランド」とは、目立つことでも有名になることでもありません。

ブランドの語源は、牧場で自分の牛を見分けるために付けた「焼印(burned)」だと言われています。ブランディングの本質は、「他と何が違うのかが分かり、選ばれる理由がある状態」をつくることです 。自治体プロモーションにおいて、流行りのデザインや最新の手法を追いかける必要はありません 。大切なのは、今すでに持っている価値を整理し、「このまちの軸は何なのか?」を誰もがわかる言葉で伝わるように設計することなのです 。

2. 「一本の木の構造」で考える、Oneブランディングの設計図

Grass Family

私たちは、ブランディングのプロセスを一本の木に例えて設計します。目に見える「枝葉」の施策ではなく、見えない「根っこ」から整える。これが私たちの考える「Oneブランディング」の全体像です。

STEP1【根っこ】ラシサコレ(自分たちらしさ、核)

新しいコンセプトを無理やりひねり出す必要はありません。これまでの歩みやエピソードの中に必ず、その自治体「らしさ」が眠っています。ここで大切なのは「考える」ことではなく、「思い出す」こと。例えば、「広報誌のバックナンバーを30年分読み返す」「地元の80代のおじいちゃんに、昔の遊び場所を聞く」「若手職員と『この街にしかない音や匂い』を書き出す」といった、過去を紐解くことで、自分たちの長所も短所もフラットに洗い出します。

STEP2【幹】マヨイドメ(判断の基準)

「らしさ」を言語化したものが、組織の軸になります。これが決まっていないと、上層部の一言で方針がブレたり、現場が迷ったりしてしまいます。「マヨイドメ」という判断基準があることで、組織全体が同じ方向を向けるようになります。例えば「ロゴの色で揉めていた3時間の会議が、軸に沿って15分で決着する」といった、現場の生産性向上(タイパ)にも繋がる重要なステップです。

STEP3【枝葉】トドケカタ(どう伝えるか)

ここでようやく、SNSや動画、Webサイトといった「手段」が登場します。流行に飛びつくのではなく、届けたい相手の「気持ちのステップ」に合わせて、最適な手法を選択します。例えば、「まだ街を知らない人」には視覚的に一瞬で惹きつけるショート動画を、「具体的に旅を計画している人」には、不安を払拭し信頼を与える公式サイトの情報を 。
根っこと幹がしっかりしていれば、どのツールを使っても「この街らしい」一貫した体験を届けることができます。

STEP4【循環】ヤリッパドメ(資産化)

施策を「やりっぱなし」にしない。振り返りを行い、得られた知見を蓄積することで、日々の努力を「見えない苦労」から「見える資産」へと変えていきます単なるPV数だけでなく、「市民からどんなポジティブな声が届いたか」「職員のモチベーションがどう変わったか」といった、独自のKPIを持つことが重要です。

■ なぜ「考える」のではなく「思い出す」のか

ブランディングと聞くと、つい「新しいキャッチコピーをひねり出す」ことを想像しがちです 。しかし、無理に作ったコンセプトは、地域の日常から浮いてしまい、長続きしません 。 大切なのは「考える」ことではなく「思い出す」こと 。これまでの歩みや住民とのエピソードの中にこそ、その自治体「らしさ」が眠っています 。過去を紐解き、自分たちの長所も短所もフラットに洗い出す作業こそが、揺るがない根っこを作るのです 。

■ 組織の軸が「マヨイドメ」になる

「らしさ」を言語化したものが、組織の軸となります 。これが決まっていないと、上層部の一言で方針がブレたり、担当者が変わるたびに施策がバラバラになったりしてしまいます 。 「マヨイドメ」という共通の判断基準があることで、現場の迷いが消え、組織全体が同じ方向を向けるようになります 。一貫した姿勢が住民や外部への信頼に繋がり、結果として「選ばれる理由」が強化されていくのです 。

最後に

OneブランディングのOneとは、判断基準・メッセージ・施策の方向がひとつになることを指します。

「根っこ・幹・枝葉・果実(成果)」が一気通貫でつながったとき、初めてその自治体の魅力は外部へ、そして住民へと深く浸透していきます。

「何をすればいいか」と手法に迷ったときこそ、一度立ち止まって「自分たちの根っこは何だろう?」と思い出してみてください。その土壌改良こそが、長く愛されるまちをつくるための、最短ルートなのです。

寄稿者 荻野孝史(おぎの・たかし)㈱Grass Family. 代表取締役兼CEO

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